第三章 格差社会

第十話 差別

 入学してから一ヶ月。授業も学園生活を慣れてきた彼は、いつも通りに綺麗な制服を着て身なりを整えると学園へと向かった。

 この一ヶ月の間、銃撃戦術などを学びながら体と頭にたたみ込み、アーサーラウンズに入るため、努力する。

 しかし、その間にから絡まれることがあったが全て返り討ちにしてカリーヌから、より羨望と好意の眼差しを受けた。


 シュテルは、自分のクラスである財閥階級プラチナランクの教室で授業を受けていた。このランクでは、ノートと内容が厚い最高級品質の教材だけを使っているうえに宿題は無い。だが一学年につき二つしかない。

 二時間目の終わりのチャイムが鳴ると、羽川は「三時間目は、格闘戦術だから体育館へ向かうように」と言い残し立ち去った。


 一流アスリートが着てそうな財閥階級プラチナランク専用のスポーツ服を着替えたシュテルは体育館の前に到着すると、先に来ていたクラスメイト達は皆、そこで待っていた。

「君? どうしたんだい? こんなところに待って?」

「シュテル君、分からないの? をしているんじゃない」

「そうじ?」

 シュテルは、人ごみの間から体育館を見ていたが、別に何も汚くところもないが、何故か教職員たちは掃除魔術を使っている。

(なんで、掃除しているだ? ……ん?)

 シュテルは、不思議に思っていると草陰に隠れていた平民階級ペーパーランクの二人の存在に気づいた。二人の会話に耳を傾けてみる。

「見ろ。あいつら、舐めた真似しやがる」

「全くです……我々は、ばい菌の塊ではないのに」

「ずらかるぞ、奴らに気付かれたらリンチに合う」

「はい、そうですね。三時間目は、現代文ですよ」

「教えるのがへたくそな教師の元で質の悪いノートでとらなくてはならないのか」

 二人は、愚痴をこぼしながら、次の授業に向かうべく立ち去った。

(かなり、睨んでいたな。反乱が起きなければいいが)

「シュテル君」

 声が聞こえた左の方向を見ると、オールバックにジャージを着た男がいた。

「あなたは?」

「あぁ、すまんな……わしは、今からこの授業を行う半田という者や。よろしゅうな」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 シュテルは、半田と握手をした。

「ところで、どうして、あそこの草陰を見ていたんや?」

「すみません。ぼーっと、見ていただけですよ」

 半田の指摘にシュテルは、嘘をついた。

「そうか、で? まだが終わらんのか? よほどしたんやな! これだからがぁ! のぅ?」

 興奮している半田は、近くにいた女子生徒に話しかけた。

「そうですね、どんだけ迷惑かけてるのか分からないかしら? あいつらは。 だよね?」

「……」

「シュテル君?」

「ん? あぁ、そうだな」

「だよねぇー!」

(醜い心を持った連中だ)

 シュテルは、半田達に軽蔑の視線を向けた。


 が終わった後、半田による格闘戦術の授業が始まる。今回は、対武器の奪い方や、カウンター、投げ技などを教わったのち一対一の実践試合だ。

「では、最後……シュテル君と谷村君ここに来い」

 半田に呼ばれたシュテルは、体育館の中央で谷村と向かい合うように立った。

「シュテル、アンタの身体能力試させて貰うぜ!」

「……」

「では、始め!」

 半田の合図で実践試合が始まった。まず、シュテルが様子見のパンチを放ち、谷村はそれをかわしてカウンターを仕掛けようとするが冷静に回避し、そのまま放った蹴りが顔面を捉えた。

「なかなかやるもんだな! シュテルよ!」

「君もね!」

 二人は、さらに激しいキックとパンチ、カウンターを連発。周りが固唾を飲むほどの試合に発展する。それを見た半田は、このままでは危険と判断し、試合を強制終了させる。

 生徒たちはブーイングをするが、彼の極道ともいえる目つきで睨まれると、シーンと静かになった。

 試合が終わるとシュテルは谷村と握手した。彼に小声で「なかなかよかったぜ? シュテル」と囁かれる。谷村にも小声で「ありがとう。良い経験になったよ」と囁く。

 すると、体育館のスピーカーからチャイムが鳴り、格闘戦術の授業は終わった。

 

  

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