第九話 処刑
午後九時、バー『マルクス』は、そろそろ閉店時間になり、片付けと明日の準備をする従業員たち。
「斉藤君、君は帰って良いよ。親御さんの面倒見てやりなさい。もし、何か体調が悪くなったら困るだろう? だから、しばらくの間片付けせずに帰っていいから」
斉藤は、店長の言葉を甘えて店を出ようするとルビーからこんなことを言われる。
「斉藤」
「はい!」
「仕事、頼むわよ。あんたには、期待しているから」
「ありがとうございます」
「それと‥‥‥あたしから与えた車を大事に使うのよ」
「はぁ……分かりました」
斉藤は、店を後にすると、森本が大爆笑する。
「何がおかしんだい?」
「いーや! これが人生最期になると知らずに帰る様が……あははは!」
「そうですね。アクアマリンの部下からの報告を待ちましょう」
十分後、アクアマリンは、交信で部下からの報告を受ける。
「そうか、分かった。サファイア、死んだそうだ」
「そうですか」
「やったー! 死んだぁぁ!」
森本は、斎藤が死んだことに喜んでいるとサファイアにビンタされる。
「うるさいですよ」
(なんだよ。喜んでいいだろうが)
「しかし、サファイア。あんた、良く分かったな」
「奴が、不自然なくらい電話をしてましてね…それに、電話する際に何やら隠れてするのを見たので、もしかしてと思い貴方に調べさせたのです。今、私が貴方達に渡した資料に書いていますので」
すると、資料を見ているシトリンが言った。
「治安組織、
その内容は、現実の公安にあたる犯罪組織監視機構、略して
「斉藤卓実、四十才。二千年に捜査一課からこの組織への異動命令により所属。私達の組織に関する潜入捜査するため、その名簿から削除して三か月前から開始」
「本当、上手くやるもんだね。奴らは」
「でも、奴が死んだすれば上層部は、どう思うかしら?」
「さぁ、どうでしょうか?」
(おっと! この件を忘れるところだった)
資料を渡したついでに、サファイアに、自分にとって大事な事を尋ねる。
「サファイア。それと俺の」
「分かってます。
「そうか……フン、あれが無ければ今頃、あんたらと話したり計画を立てたりしねぇよ」
「森本、五十年前の出来事なんて口を出しても表の人間には分からないだろう」
「そうだな、それより……」
森本は、鼻を伸ばしながらサファイアの胸を触りだした。
「こんな、胸の大きい美人達からサポートされるなんて百パーセント成功する気がするぜ」
森本のセクハラ行為にサファイアは、彼の足を踏んだ。彼女に踏まれると、痛みに耐えながら謝罪した。
「すまん、冗談だって!」
「冗談で済むことですか?」
「そうだね……正論正論」
「それと、森本。あんたに副業みたいな仕事を頼みたいけど」
「ん? なんだい? ルビー」
ルビーからアタッシュケースを渡される。
森本が中を開けると綺麗に並べたピンク色の液体が入った注射器と銃に似たものが収まっていた。
(ん? なんだこれは?)
「私達の研究チームが作り上げた薬でしてね。名は、『マリアヴィーナス』」
「マリアヴィーナス?」
「えぇ、その薬を投与した者達の効果を報告して下さい」
「分かった」
「では、帰っていいですよ」
「あぁ。じゃあな」
森本は、アタッシュケースを持って、バーから立ち去る。
第二章 青の貴公子 終
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