第七十一話 インタビュー
六日後の早朝、眼を覚ましたカリーヌとエリーは、頭がぼんやりしながらも、顔を洗い身支度をしていた。
「うーん。どうしてだろう? 昼からの行動が思い出せない」
「エリーもそうなの?」
「「そうなの?」って、カリーヌも?」
「うん。調子が悪くて、部屋に戻ったのは覚えているけど、それ以降の事が思い出せない」
「とにかく、顔を洗って身だしなみを整えて、寛二達を合流しよう」
二人は、顔を洗い、身だしなみを整えるため、洗面台に向かった。
二人は、交代しながら、顔を洗って、髪を整えたりしていると、カリーヌのスマホから、着信が鳴る。
「カリーヌ。電話が鳴っているよ」
「え? 誰だろう?」
カリーヌは、テレビ台に置いていたスマホを手に取る。相手は、シュテルだ。
「シュテルから?」
「誰なの?」
「シュテルから電話みたい。出るわ」
カリーヌは、窓側に移動して電話に出る。
「シュテル? どうしたの?」
「朝早く電話を掛けて悪いね。伝えたいことがあって、どこにいるんだい?」
「ホテルでエリーといるよ。これから、『橋本中華本社』に取材するところ。変装してね。で? 伝えたいことって?」
「実は、橋本に関する情報だけどね」
シュテルは、マイケルと調査した内容を伝えると、カリーヌは、真実を知りながら、遊んでいる龍神会に怒りを覚えた。シュテルは、自分の
カリーヌは、電話を切るとエリーにシュテルが言った内容を伝え、秘密にすることも伝えると、エリーは龍神会に怒りを覚えた。
「あいつら!」
「エリー。気持ちは分かるけど、とりあえずシュテルの
「分かったわ」
それから、身だしなみを整え、変装用の服を着て、眼鏡を掛けた後、先に起きていた寛二達を合流。寛二達は、怪しまれないように、本社の周りに潜伏して何か危険な事が起きれば、耳に装着した隠しイヤホンで連絡することにした。
本社の周りの東西南北には、寛二達を始め、レッドとイエロー。そして、二人の
カリーヌ達は、『橋本中華本社』に向かった。
「ここが、本社なのね」
カリーヌとエリーが、本社前に到着した。十階階建てのビルで、外観は、普通にきれいだ。ただ、一つ違うとすれば、門に気持ち悪い前社長の橋本卓志の笑顔がシンボルマークになっている事だけだ。
カリーヌは、寛二にイヤホンで連絡を取る。
「これから、エリーと橋本の息子と接触するわ」
「分かった。俺とサリーは、お前らの後ろにいる小さなワゴンに乗って潜伏しながら監視してるからな。何があれば、連絡する」
「分かったわ。頼むわよ」
二人は、ひと呼吸して本社に入る。
本社に入った二人は、受付に向かった。
「すみません。本日午前十時頃に社長との面会を約束していますフリー記者の柴﨑マリアとキャサリンですが」
「分かりました。少々お待ちください」
受付嬢は、電話を取り社長に連絡する。
「もしもし。お疲れ様です。受付の田中ですが、今日の午前十時に取材を約束……分かりました。そう伝えます」
受付嬢は電話を置いた後、二人に言おうとした瞬間、猛スピードである中年男性がやって来た。
「社長!」
どうやら、社長自らやって来たらしい。見た目は、豚のようにブクブク太っており、シュテル達の以前の姿よりひどい容姿だ。それに、体臭は、ホームレスよりも臭い。
「あんたらが、マリアちゃんとキャサリンちゃんかいな!?」
「え? あ、はい」
「そうかそうか! ほな、案内するわ! ついてきな!」
社長は、満面の笑みで二人を社長室へと案内する。カリーヌは、あまりの臭さに思わず吐きそうになるが、エリーが「我慢して」と言った。
「さぁさぁ! ここに座って!」
社長は、二人にソファーに座らせてた。社長室は、どこにでもありそうな内装で、高そうな絵画などが置かれていたが、シュテル達とのレベルと比べると、雲泥の差で、明らかにシュテル達のほうが上だ。
社長は、向かいの席に大きな音を立てて座った。
「社長。ありがとうございます。こんなお忙しいところ取材を受けて」
「かまへん! かまへん! 丁度、どストライクの閑散期だから、一日中でもしてもええで」
「ありがとうございます」
(何言ってるの? それに、途中で社員の様子から見て、まったく暇そうな感じじゃないけど)
カリーヌは、社長の発言と社員達が忙しすぎて、生気が消えた様子が矛盾している事に社長に向けて冷たい視線で見た。社長は、その事に気付いていない。
エリーは、笑顔で社長と話しながら、バレないようにカリーヌの足を少し蹴った。
「では、早速ですが、この会社を立ち上げたきっかけを教えてください」
「この会社を立ち上げたきっかけはな……」
社長は、父が会社を立ち上げた理由などの質問などに答えた。答えの内容としては、綺麗事を言っており、要するに楽して金が欲しく、支配したい事で社員を金儲けの道具して成り上がったという事をしか二人には聞こえなかった。
この時、二人は社長を権力と金しか見えてない人間として三流以下であることが感じ取り、心の中で哀れな視線を向けた。
そして、会話が弾んだところで、そろそろ本題に移しエリーが質問を投げかける。
「ところで、社長。貴方のお父様が今月の四月に亡くなられたようですね。ご冥福をお祈りします」
「あぁ。おおきにな。親父が死んでしまって腹立たしいわ。あいつらさえいなければ」
「あいつらとは?」
社長は、周りを見渡してから、顔を近づけて二人に言った。カリーヌは我慢して聞く。
「あんたら、『聖女の騎士団』って知ってるか?」
「何ですか?」
二人は、この組織を知ってるが、あえて知らないふりをして聞いた。
「裏社会で有名な女性だけの犯罪者集団や。あいつらは、なんか薬を使ってなんか悪い事を企んでいるらしいわ」
「そうですか。で? 他に何か聞いていないのですか?」
「全部は聞いてないけど、なんか騎士庁の本部のとある部屋でなんか実験部屋があるらしい」
「実験部屋? それは、本部の何処にあるのですか?」
「それはな」
その時、窓の向こうにあるビル屋上から何者かが、ライフル銃で社長の頭を狙撃した!狙撃された社長は、前に倒れ息絶えた。
「社長! 大丈夫ですか!?」
エリーは、社長に声をかける。カリーヌは、ビル屋上から狙撃した思われる人影を見つけるが、正確な特徴は分からなかった。そして、銃声を察知した社員達が駆け付ける!
「社長! どうしたのですか!?」
「窓の向こうのビルから誰かが狙撃されました!」
「何だって! 分かりました! おい! すぐに警察を連絡!」
「分かりました!」
社員の一人が、警察に連絡する!他の社員達は、慌ただしくする!すると、寛二から連絡が入る!カリーヌは、会話を聞かれないように返答することに。
「おい! 何があった!? なんか銃声が聞こえたぞ!」
「向こう側ビルから誰かが狙撃して社長を殺したわ」
「何だと!? それは、まずいな!」
カリーヌは、何がまずいのか寛二に尋ねる。
「何がまずいのよ?」
「お前ら。第一発見者だろ。事情聴取とはいえ、身分証の提示をされたらどうする!? そいつらは、顔を知らなくとも、世界に影響力を持つマルース家とキャロル家の次期当主だぞ? もし、テレビに出たら敵対者に余計な嫌疑を持たれて、影響力を失う口実になるぞ。それにシュテルとマイケルに迷惑がかかる」
「! それは、まずいね!」
「こうなったら、エリーの『アーサーの眼』を使うしかないな。エリー、聞こえているだろ?」
「もちろんよ。
すると、エリーの瞳が黄色く光出す。これは、エリーとミヤの専用の『アーサーの瞳』で、相手が自分に対する認識を変えることが出来る。例えば、相手がご令嬢だと認識してるとする。それをこの力を使えば、一般の人間という認識を変えることが出来て身分を偽ることが出来るのだ。今、カリーヌとエリーに対する周りの認識は、平民クラスのフリー記者だと認識された。
その後、警察による捜査とカリーヌとエリーの事情聴取が行われ、その様子を見ていたシュテル達を良く思っていない
そして、夕方になりホテルに戻ったカリーヌとエリーは、ホテルのロビーにいる寛二達と合流した。
「おう。どうだった?」
「とりあえず、起きたことを全て話したわ。もちろん、狙撃した怪しい人物の件についてもね」
「狙撃した奴の事か」
「そう。警察は、そのビルの防犯カメラなどを分析して犯人を特定するみたい」
「とりあえず、そいつから分かった事は、騎士庁に新薬実験場みたいなところがあるらしいわ」
「新薬実験所だと!? 騎士庁の連中が関わっているのか?」
「おそらくね。橋本が正確な場所は分からないみたいけど」
その時、入口から大勢の警察達が入って来た。
「すみません。警視庁の者ですが、こいつらを見てませんか?」
リーダーと思われる刑事が写真をフロントに見せた。そこに写っていたのは、カリーヌ達だった。
「そのお客様方でしたら、あちらに」
警察達は、フロント係が指を指した方向に向かいカリーヌ達に話しかける。
「カリーヌ・マルースだな?」
「誰よ? あんた?」
「警視庁捜査一課、山田だ。おや? どうやら、エリー・キャロル、ミヤ・キャロル、谷村寛二、サリー・トルバー、そしてお前の兄のエレン・キャロルがいるな。カリーヌ。アルフォード兄妹とルイン兄妹は何処にいる?」
山田の態度にイラついた寛二が睨みながら言った。
「おいおい。てめぇら、まず要件言え。彼らの居場所を知りたいという事は、それなりの理由があるんだろう?」
「とぼけるなよ。谷村寛二。噂通りのタチの悪い男だな!」
「なんだと?」
「忘れたと言わさねぇぞ! ……お前らが、総理大臣を殺したことをなぁ!」
「「はぁ!?」」
山田の発言に驚愕するカリーヌ達。一体どういう事だ!?カリーヌ達は、国会議事堂に行ったこと無いし、シュテル達は、わざわざそこに行く必要が無い!何がどうなっている!?
さらに、山田はある紙を地面に投げつける。それをミヤが拾い読んでみると、そこには、こう書かれていた。
「兄さん。どうしたなの?」
「……「シュテル・アルフォード、セレン・アルフォード、計十名を戸籍から永久除籍をする決定する。決定代表ダイル・アルフォード」」
「何だと!? 見せろ!」
エレンがその紙を取り上げると、確かにエレンや寛二の名前などが一人残らず書かれており、カリーヌ達の親であるケビン達のサインも書かれていた。
「何度も書くにしても変わらんぞ」
「お前ら! 騙して書かせるようにしたのか!?」
「おいおい! エレン! 失礼だな! あんた! 俺らが書かせて何のメリットがあるのだ? 因縁つけるのも、もうちょっとマシな事を言ってくれよ!」
「……」
「? そういや! カリーヌ達の執事二人は?」
サリーが、そう言うと機動隊の隊員二人がそれぞれ男性を引きずりながら運んできた。それを見たカリーヌ、エリー、エレン、ミヤは!
「レッド! イエロー!」
そこには射殺された執事のレッドとイエローの死体だった!
「お前らぁ! よくも!」
「犯罪者の以下の犯罪者にはこれがお似合いだ。もちろん、東にいたブルーとグリーンも殺したが、シュテル達は逃げられたけどな。まぁ、安心しろ。大人しく条件を飲めば、無罪にしてやる」
「法律は、裁判官が決めることだ」
「おいおい! 俺が、無罪にしてやるって言ってるじゃないか! 最終警告だ。お前ら、残りの奴らの居場所を吐け。そうしたら、無罪にしてやる」
山田の馬鹿にした発言にカリーヌはこう言った。
「断るわ。あいにく、仲間を売るという言葉は、分からないのでね」
「そうか。……お前ら! 殺せ!」
山田の号令に刑事達が銃を構えたその時!
「おらぁぁー!」
入り口から女性の声が聞こえ、一台のミニバンがガラスを突き破った!その車から……なんと!ルビーが降りて来た!
「ルビー! てめぇ!」
「あんた達! いいから乗って!」
「いいから乗るんだ!」
ルビーとアクアマリンの声にカリーヌ達は、急いで乗り込んでんだ!山田は、すかさず射殺命令を出す!刑事達は発砲するが、カリーヌ達は逃走に成功した!
「絶対逃がすなぁー! 一人も残らず全員殺せぇぇー!」
山田の怒号が円海街の街中に響き渡った。
第八章 阿修羅が住む都 終
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