第七十話 接触の準備
『女神の剣』での戦いを終え、『円海ホテル』に戻ったカリーヌとエリーは、平然を装い、ロビーの近くにあるソファーに座っている寛二達と合流した。
「よぉ。大阪の観光はどうだ?」
「大阪の性格と考え方がしっかりと現れていたわ。特に、店員や食文化がね」
「カリーヌ、エリー。羽目を外してないだろうな?」
「お兄様、大丈夫よ。心配しないで」
「そうか」
その時、エリーのスマホから着信が入る。画面を見てみると、『橋本中華』と表示されていた。
「もしもし」
「橋本中華本社です。柴﨑キャサリン様の携帯でしょうか?」
「はい」
「先日の件ですが、六日後の午前十時は大丈夫でしょうか?」
「はい。大丈夫です」
「ありがとうございます。それでは、お待ちしております」
エリーは、電話を切ると寛二達にオッケーのサインを出した。
「よし! やったな! これで、橋本の死に関する情報が聞けるかもしれないね!」
「でも、ほぼ一週間後というのも気になるわね。その間に奴らが悪事を止めないというのも限らないし」
「まぁまぁ。とにかく、取材できるようになったんだ。その間の事は、後にしようぜ? サリー」
「そうね。食事を取ってゆっくりしてから考えましょう」
寛二達は、昼食を取りにホテルのレストランへと向かった。
レストランに到着したカリーヌ達は、好きな席へついて店員に注文をする。このレストランは、椅子、内装などは汚れが目立つところがあるが、このホテルの歴史とおもてなしの心を感じ取れる。カリーヌ達は、その間に雑学を披露したり、面白話をして食事が運ばれている間楽しんだ。
その時、近くにいた女性店員が、カリーヌ達を見てから厨房近くにいた店員にアイコンタクトをとり、その店員が、カリーヌとエリーの水が入ったコップにそれぞれ、赤と黄色の粉薬を入れてかき混ぜる。
かき混ぜた後、お盆の上に乗せて、カリーヌ達のところまで運び、粉薬を入れた水が入ったコップを間違えないように、カリーヌとエリーに渡す。
どうやら、カリーヌ達は気づいていないようだ。
「ふぅー。喉乾いた」
カリーヌとエリーは、その粉薬が入ったコップを飲み干した。他の寛二達も飲むが、そのことに気付いてないようだ。数分後には、料理が運ばれ、堪能しながら会話した。
「よし。これで大丈夫ね」
「東京にいるシュテルとマイケルに粉薬を飲ませたら、向こうが報告するわ」
「そうね。とりあえず、あの方に連絡するわ」
水が入ったコップを運んだ店員が、誰かに連絡した。
レストランを出た後、寛二達は少し休憩して気晴らしに遊びに行くが、カリーヌとエリーは、疲れたから客室で休憩すると言った。寛二達は、大丈夫かと声を掛けるが、二人はしっかりと休みたいからと言って自分達の客室に戻った。
夜になった円海街、昼からずっと客室で昼寝したりしている二人は、テレビを見ていたが、二人に異変を感じていた。
「ねぇ……エリー。なんか……体が熱くない?」
「そうね。体が午後から体が熱い」
「風邪かな?」
「とりあえず、シャワーを浴びましょう。そして、早く寝た方がいいわ」
カリーヌとエリーは、服を脱いで全裸になって浴室に入った。その時、部屋の外に、粉薬を入れた女性二人とその仲間と思われる男達が、シャワーが入った瞬間に中の音を聞こえないように、完全なサイレント魔術を使った。
「これで、谷村寛二らに気付かれずに済むわ」
「はい。アーサーの血を継ぐのは、この四人だけで良い」
その女性の手には、シュテル、カリーヌ、マイケル、エリーの写真を持っていた。
カリーヌとエリーは、シャワーを浴びていると、心臓が突然大きく鳴った。人生で絶対に感じない途轍もない大きな鼓動だ。
「「うぅ!」」
二人は、大きく声を上げて胸を押さえて、苦しみ出すとシャワーを止めて浴室から出る。二人は、寛二達に助けを呼び出そうとするが、声が出ない。
(そんなぁ。……私とエリー……死んじゃうの?)
(声が……出ない)
二人は、ベットに仰向けになって横になると、二人に心臓が更に激しくなり続け、全身にマグマを浴びているかのような熱さが襲う。
「「うぁぁぁーーー!」」
二人の悲鳴と共に、心臓の鼓動に合わせて全身がまるで陸に上げられた新鮮な魚みたいに激しく痙攣し、カリーヌとエリーの瞳がそれぞれ赤、黄色に染まり白い部分が消えていた。
さらに、二人の遺伝子が進化を引き起こす。なんと、遺伝子が増え始め、二重螺旋遺伝子のはずが、四重螺旋遺伝子になったことで連動するかのように全身の筋肉などが、急激な進化を遂げた後、全身の熱さが消え、心臓の鼓動が普通に戻った。どうやら、苦痛から解放されたようだ。
すると、二人は起き上がると気持ち良さそうに背伸びすると、自分の全裸を見た後笑みを浮かべてこう言った。
「私達の兄になんてどうでも良くない? エリー」
「同感。この力と進化した力さえあれば、世界を統べるかも」
「そうね。アーサーの血を継ぐのは、私とシュテル」
「私とマイケルの四人だけで良い」
「「フフフ!」」
二人の表情は、アーサーの頂点に相応しい余裕の笑みだった。
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