第三十三話 谷村の推測

 シュテルたちが志村との待ち合わせ場所へ向かう頃、谷村は自室のリビングにて同ランクの生徒二人、平民ペーパーの生徒二人と座っていた。数日前、彼らについて伝えていた。


「すまないな、お前ら。付き合わせて」

「何言ってんだよ。この川田はお前の頼みを断るわけが無いだろう。そのシュテルたちとやらについてだろ」


 谷村の左隣にいるのは財閥プラチナの川田亮で宝石業界のナンバー2の財閥の御曹司。右にはハーブ業界で知らぬ者はいない有名財閥のご令嬢、サリー・トルバー。

 彼の対面には平民ペーパーであるが、親友でもある肥満体型の豊川剛と増田圭司である。


「で? 大聖堂に何かあるの?」

「そうだ、サリー。生徒は入学式前日の日付が変わる頃に『青い光を見た』らしい」

「なるほどね。シュテルらと関係しとるかもしれへんということやな?」

「あぁ、豊川。もし、それがシュテルとカリーヌの不審点が解明されば、化けの皮が剥がれる筈だ」

「化けの皮を剥がした後、世間にさらすのか?」


 増田の質問にこう答えた。


「いや、世間にさらさない。そんなことしたら、奴らからを送り込まされそうになるからな。化けの皮を剥がしてから考える。と思ったが」

 谷村はポケットからスマホを取り出し、テーブルの上に置いた。実は、合宿の時、ホテルマンに変装した監視者は掃除として入り込み、彼らの隙を突いてソファーの下盗聴器を忍び込ませたのだ。合宿の最終日には、同じ手口で回収した。

「へ? スマホ?」

「監視者から届いた音声データを聞いてくれ」

 不敵な笑みを浮かべ、再生する。すると、流れてきたのはなにかしらの魔術の音だった。次にシュテルと男の会話する声が聞こえ、内容は自分たちの正体や生い立ちに関するものだった

 


「なんだこれは!?」

「面白いだろう? 俺達がと認識している四大家系は、本当は滅んだということだ」

「どういうことや?」

 豊川たちは彼の発言に首を傾げた。


「タイムリープさ」 

「タイムリープ?  都市伝説で聞いたことがあるな」

「会話を要約すると、では何かのトラブルによって滅んでしまい、奴らは平民ペーパーの家系に流れ着いてしまった。なにしかしらの方法で存在しているに変わったということだ。謎の男と関係しているのは確かだ」

「ということは、ちゅうことか?」

「あかん、さっぱり分からへん」

「川田、俺にも分からん」

 増田がひらめき、谷村に提案する。

「谷村、そういえばさ」


 川田が、お茶を一口飲んで口に出した。


「俺見たんだけど、合宿の二日前に学園近くの喫茶店でグラマラスな青髪美女と会っていたが、何者だ?」

「あぁ、彼女は千楽町の探偵だ。千楽クイーン通りに構える探偵事務所の所長でな。当初、シュテルとカリーヌの尾行を依頼をしたんだよ」

「へぇー、報告は来たの?」

「一回だけ彼女からの報告があった。『現状、変わったところはありません』とな」

「というか、何故、監視者を使わない?」

「意表を突くためだ。信頼できる監視者を持っているという思い込みを利用してな。よし、行くか」

 すると、立ち上がってある場所へ向かうため玄関へ移動する。

「ちょっと、どこに行くの!?」

 サリーの問いに後ろを振り向いた。

「『どこに行くの』って、あそこしかないだろ?」

 

 谷村は、まだ理解できない彼女たちを連れてへ向かっている。(そこを調べれば、全てが見えてくる!)

「おい、谷村。あれ」

 途中、豊川がある光景に気づく。


「ちっ! 同じ人間として株が下がるな」

 彼らの視線の先には財閥プラチナの生徒三人が平民ペーパーをいじめていた。


「下民! 五百万の時計をどうしてくれるんだぁ?」

「すみません! 分割して月に1万ずつ弁償しますから勘弁してください!」

「そんなに、待てるかよ!」

 青い帽子の財閥プラチナの生徒が土下座している平民ペーパーの彼を蹴り飛ばす。

(めんどくせぇな。このまま、放っていたら学園の評判は地に落ちる。助けるか)

 財閥プラチナの生徒のもとへ向かった。


「力の弱い者に暴力はいけねぇな。彼が壊したとしても、追い詰めるのはどうかと思うぜ」

「あぁ? 平民ペーパーはな、俺たちの奴隷だ。お金は絶対正義。権力を持った者こそ勝ち組なんだよ」

「何を言っているのか分からない。日本語で喋ってくれよ」

「てめぇ!」

 

 挑発に激怒した緑髪の財閥プラチナの生徒は風の魔術で攻撃する。


「ストーンインパクト!」

「あぁ!」

 だが、いち早く地の衝撃波で攻撃を阻止した。吹き飛ばされると、立ち上がって彼を睨みつけた。


「て、てめぇ!」

 その時、谷村はカバンから五百万円を取り出し、彼の足元へ投げた。


「これで文句無いだろう? 消えろ」

「く! おい、下民。こいつに感謝するんだな。お前ら、行くぞ」

 緑髪の生徒は、他の財閥プラチナの二人と、どこかへ立ち去っていた。

「ありがとうございます!」

「どうってことねぇよ。ああいう奴らに絡まれると厄介だ。距離をとりながら歩けよ」

「肝に銘じます」 

「悪いが、大事な用があるんでな。じゃあな」


「着いたな」 

川田たちを連れてきたところは、青い光から出ていたという大聖堂だ。

「ここって、青い光から出たという」

「増田、つべこべ言わず入るぞ」


(ここに、なにかしらの痕跡があるはずだ)

 彼らに探すよう指示をした。


「谷村! こっち来てくれ」

「どうした?」


 豊川はあるものを発見した。ものだ。


「これって!」

サリーが動揺しているなか、谷村のスマホから着信音が流れる。電話の相手は千楽町の探偵だった。

「よぉ、何か分かったのか? ……そうか、分かった。ありがとうよ」

「どうしたのよ?」

 彼女の言葉を無視して、勝ち誇った笑みで自分の監視者に電話を掛ける。

「シュテルに伝えてくれ。『倉庫港に来い』とな」 

 




 


 





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る