第三十四話 新たな強力な協力者

 谷村が大聖堂で笑み浮かべていた頃、シュテルたちは共通エリアの中心にある待ち合わせ場所に到着した。 

 ここは、学園都市のシンボルとなっている地上五十階建ての『アーサータワー』。一階から十階は、ショッピングモール、ゲームセンターなどのエンターテイメントエリア。十一階から三十階の間は、オフィス。三十一階から四十五階は、この建物を管理するエリアとなっている。



 一階のエントランスに入るとカリーヌから尋ねられる。


「シュテル。志村と何処に待ち合わせしているの?」

「四十六階のAルームとに行くよ」

「え? Aルームなんてありました?」

「そうだよ。何かと間違ってない?」

 周りを確認したと三人を自分のとこへ近寄らせ小声で話す。


「実はね、四十六階から最上階は『アルティメットアーサーハウス』になっているらしい」

「どういったところなの?」

「僕にも分からない。前日、志村から『そこに来い』と言われて」

「ふーん。とりあえず案内してくれる?」

「あぁ、ついてきて」


 シュテルはカリーヌたちをその入り口へ連れてこようとすると、スマホに着信音がなる。

(こんな時に誰だ?)

画面を確認すると非通知着信だった。警戒しながら電話に出た。


「もしもし」

「シュテル・アルフォード様ですね?」

「誰だ? 君は?」

「私は谷村寛二様の監視者です」

(谷村君の監視者だと?)

「つかぬことをお伺いしますが、貴方様はいらしゃいますか?」

 

 彼からの問いに、念のため嘘をつく。

「『アーサー図書館』だよ。カリーヌ、マイケル、エリーと勉強会をしているよ」

「……そうですか。谷村様からの伝言です。『『倉庫港』の七百番倉庫に来い』と」

「『倉庫港』? 分かった。彼に『勉強会の後に大事な用事があるから、夜ぐらいになる』って」

「承知しました」


 警戒した表情で電話を切ると、残りの三人に電話の内容を伝える。


「『倉庫港』ですか」

「そこで待ち合わせとは、あまりにも不自然過ぎる」

「無視するの?」

「いや、逆だ。行かないと、何を仕掛けてくるかもしれない」

「志村との話が終わったら、念のために準備しようか?」

「そうですね。エリー」

「今は『アルティメットアーサーハウス』の入り口へ行こう」

 谷村の件は後回しにして入り口となる場所へ向かう。


 着いた場所はなんの変哲もない灰色の壁で、行き止まりだった。

「ちょっと、ふざけているつもり?」

「いいから、見てて」

 イラついているカリーヌを抑えながら、そこに人差し指でアルファベットのAを書くと、扉のように開いた。

「こ、こんなものが隠されていたなんて!」

 中に入ると、ローマ数字で一から五で書かれたボタンが目に入る。シュテルは一のボタンを押すと、下から白い魔法陣が出現。『アルティメットアーサーハウス』へとワープする。


「うわー! 私達が住んでいるマンションより凄い綺麗!」

「こんな、極上なものが隠れていたとは!」

「神の家に来た気分ですね」

「オマケに最高に良い匂いだし、カーペットがフワフワ!」


 到着すると、世界中の最高級のホテルでも敵わないほどの内装だった。それぞれサファイア、ルビー、エメラルド、シトリン製の扉に相当の価値があるであろう何十枚の絵画。廊下の壁にはアルフォード家、マルース家、ルイン家、キャロル家の紋章の旗。四大騎士家の歴史を物語る装飾品が飾っていた。


(父さん、母さん。頑張って復活させるよ) 

「お待ちしてました。シュテル様、カリーヌ様、マイケル様、エリー様」

 彼らの目の前に茶のボブヘアーの女性が現れた。

「君は?」

「私、この『アルティメットアーサーハウス』のメイド長をしていますキャサリンと申します」

「キャサリンか……いろいろ聞きたいが後にしよう。志村は?」

「はい、ご案内します」


 メイド長キャサリンは、彼らをAルームへと案内する。


「それでは、失礼します」

 彼女は頭を下げると、扉を閉めた

 向かい側の窓には東京の都会の光景も見えた。


「やぁ、待ってたぜ」

 そこにテーブルの席に志村とスキンヘッドの老人の姿が座っていた。シュテルたちは、向かい合う形で座った。

(この爺さん、誰だ?)

「驚いたわ。こんな場所があるなんて」

「アハハ、まぁな。ところで、例のやつは?」

「その前にさ、この爺さんは?」

 カリーヌは、老人に指を指した。

「あぁ、すまないな。……五代目」

「うむ」

 咳払いすると、口を開いた。


「儂は、龍神会五代目会長の瀬山正雄や。よろしくな」



 


 

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