第七章 龍神が住む都 (シュテル、セレン、マイケル、エレノア編)

第五十一話 千楽町へ

 夏休みが入った7月。学園内では、終業式が終わり、ホームルームで、連絡事項が言い渡される。

 宿題に関しては、最大が100として、平民ペーパーは、100。下流ブロンズは、80。中流シルバーは、60。そして、残りの上流ゴールド財閥プラチナは、宿題なしの0という差別待遇だ。


「くそ! なんで、あいつらは、無しなんだ!」

「お偉い様のためしか考えてないんだよ。あの、くそ学園長は!」

「あーあー。この学園にいることが馬鹿らしくなってきた。いっそうのこと、専門学校に転校して、手に職をつけようかな」


 不満をもらしながら、帰る彼らと同じ時間帯、『アルティメットアーサーハウス』にすでに帰宅していたシュテル達は、翌日の朝、2チームに分かれて、千楽町と円海街に向けて出発の準備を整える。

 千楽町は、シュテル、セレン、マイケル、エレノアが。円海街は、カリーヌ達が行くことになった。

 シュテル達は、別れを告げ、それぞれの待ち合わせ時点に向かう。


 なお、この章では、千楽町に行くこの4人にスポットを当てる。

 シュテル達は、待ち合わせ時点の『アーサー図書館』前に、着く。すると、その前をサラリーマンの男がスマホで、何か見る演技をしている。

 サラリーマンは、シュテル達に静かに話しかける。


「シュテル様達ですね?」

「貴方が案内人?」

「私、龍神会の若頭をしています。松岡組組長、松岡正和と申します。これから、千楽町へ案内しますが、距離をおいてついてください。ここのあたり、生徒らがいるので、もし、繋がりがあると知れば、大変な事が起きるので、注意してください。それでは、車まで案内します」


 シュテル達は、松岡に距離を取りながら、ついていく。その道道中に、生徒達に見られてしまうが、演技してるおかげで、バレては無いようだ。


「妬み言われてるわ。兄上」

「気にするな、セレン。バレないよりはマシだ」

「兄上、バレないですかね?」

「心配しないでください。エレノア」


 すると、松岡がメールで、シュテル達のスマホに時間差で、届く。その内容は、「後ろに6人、芸能記者が尾行している。注意」と。


 シュテル達は、警戒されているというのをバレないように、振り向くと素人では分からない変装で尾行している奴らの姿を捉えた。


「尾行されてますね」

「スキャンダルを取りたいんでしょう。全く、困りましたね」

「どうするの? 兄上」


 すると、シュテルが、小さをい声で魔術を唱えた。

 

 「視覚停止クローズアイ


 すると、彼らの視界が一時的に、真っ暗になって、見えなくなり、パニックに陥る。

 その隙に、ステルスランで、車へ向かう。


 振り切った彼らは、運転手のいる車のところまで到着し、ササっと乗り込み、窓を黒いカーテンで閉め、この学園都市を抜ける。


 東京本土へ渡り切り、国道を走行している車内では、会話をしていた。


「いやー。お見事ですな。シュテル様」

「まあね。彼らは、もう視界が晴れているだろう」

「松岡さん。千楽町とは、どういう町かしら?」

「千楽町は、我が龍神会のお膝元で、ホストクラブ、ナイトクラブ、キャバクラ、ゲーセンなどがあり、「東イチの歓楽街」です」

「歓楽街ですか」

「表向きは、今言ってのがある施設ですが、それは、。本当の顔、違法カジノ、闇ショップ、秘密のマッサージ施設などがある「裏社会の楽園」と呼ばれています」


すると、シュテルは、こんな疑問を投げかける。


「お上は、何とか出来ないのか?」

「千楽署と賄賂の関係になってね、線を越えない限り手は出さないということです」

「要するに、は、やりたい放題ということか。やることがダメだが」

「そういうことです」

「おまけに、素性の怪しい連中や海外組織の連中などがたむろしています。我々、龍神会が、特に海外組織を監視しています。ですが、とある事情で、千楽町で住む人達もいますし。その人達を安全に居られるようにしています」

「なるほど、そのような事もしているだな」

「あ、そうそう」


 松岡が、シュテル達にこう伝える。


「とりあえず、着いたら心眼通りにある私の組事務所『松岡ビル』の最上階に住んでもらいます。その部屋に荷物を置いたりして、明日、シュテル様とマイケル様には、ホストクラブ『パラダイス』に働いてもらい、情報を収集してもらいます。セレン様とエレノア様は、専属の執事と共に、柴﨑の事務所とシノギの裏カジノを調べてください。場所は、明日伝えます。私の組も、柴﨑と彼女達を監視と調査を行いますので」

「分かりました。松岡さん」

「先程も言いましたが、素性の分からない連中などが、たむろしています。また、ナイトクラブなどで勤務したりしている人達は、半裸や下着や過激な衣装などで歩いたり、路地で座ったり、公園で段ボールの家で住んでるホームレスや危険な奴がいるので、攻撃的な態度を取らないように」

「よかったですね、カリーヌさんと寛二さんで無くて。もし、そうなれば」

「喧嘩どころの騒ぎでは、収まりませんよ。マイケル様」

「ま、あの生意気カリーヌとチンピラ寛二が居たら話にならないわ」

「セレン、それ聞かれたら、殴られますよ」


 シュテル達は、カリーヌと寛二が居なくてよかったと、安心した。

 

「で? まだ、着かないのか?」

「もうすぐだと思いますが。おい、どれくらい掛かるんだ?」

「あと、10分で千楽町に着きます。親父」

「そうか、だとそうです。シュテル様」

「分かった」


 シュテル達は、この後、千楽町へと入る。ちなみに、その頃、円海街へ新幹線で向かう車内での、カリーヌと寛二は。


「何か、セレンが私と寛二に向けて、カチンとくること言われた気がするけど」

「なんだろ、無性にセレンを殴りたい気分が」

「きき、気のせいじゃない? カリーヌ」

「そうかしら? お兄様」


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