第四十八話 潜入準備

 六月、『アルティメットアーサーハウス』の最上階にて、男性陣はソファーに座ってリラックスしていた。

 一方、女性陣は入浴が終わると、パジャマに着替えて脱衣所から出てると、彼らのところへ向かった。


「シュテル、残念だったね。口を割らないうえに隙をついて逃げ出すなんて」

「奴らが、あんなに固いとは思わなかったよ。まぁ、僕の予想通りにいかないこともある」

「確かにね、全てが上手くいく訳ではないし」

「それにしても、残りの執事は何処にいるのか?」


 その時、寛二のスマホから着信音が鳴った。


「どうした? ……奴が? ……分かった」

「どうしたの? 寛二」

「ミヤ。柴崎が『水谷製薬』の社長たちとの会食をアーサーで行うという情報が入ったぞ」

「何!?」


 こんな良い情報が手に入った事にシュテルの目が鋭くなった。


「表向きは、柴崎組の連中は『パープル製薬』という『水谷製薬』の傘下にあたり下請けにあたるフロント企業になってる」

「二年前までは下請けをしていて、その時にフロント企業を設立していたな。で? 日時は、いつだ?」

「今週の金曜日の夜七時。場所は、共通エリアの西にある十階建てのホテル『トリニティホテル』の最上階にある宴会場だ。それも幹部クラス数人限定のな。それに、貸し切りになってるらしい。忍び込むのは、難しいぞ」


 シュテルは、寛二に何をするか聞いてみた。


「忍び込むのは、難しいけど。もし、目的があるのなら、何をするのだ?」

「奴らは、薬の資料や実物などを柴崎の連中に渡すらしい。で、それらの破壊をしたいと思う。そうすれば『聖女の騎士団』は不信感を抱き、資金源を一つ消すことができる。それに、残りのターゲットの執事も来るらしい」

「それは、本当なの!?」

「間違いないさ、セレン。彼ら、九階の客室に宿泊するようだ。現在はフロント企業の下っ端要員にされている」

「シュテル」

「もちろんさ、カリーヌ。やるに決まってるよ」

 シュテルは、カリーヌに自信に満ち溢れた笑みで答えた。

「でも、どうやって侵入するのですか? ホテルは、貸し切りなのですね? 柴崎組の連中も警備してるので」

「そうですね。見取り図と方法が」

「その心配はないよ。マイケル君」

「ち、父上!」


 そこに、シュテルとセレンの父にして学園長、ダイル・アルフォードが現れた。

 

「どういうこと?」

「事前にシュテルの監視者に見取り図を手にするよう指示したんだ」

「そうなのですか? 父上」

「あぁ、その見取り図を使って、作戦を練るといい」


 ダイルはリビングから出るとシュテルたちは、作戦を立てることにした。

 侵入場所、敵の数、隠蔽工作などを話し合いを終わった後、武器や潜入道具などのメンテナンスなどを行い、最後に潜入するためのライダースーツを用意した。


 まず、バックヤードから電気技能者以外立ち入り禁止のエリアへ侵入。そこからダクトを通り、二階の倉庫へと入る。

 その後、シュテル、カリーヌ、マイケル、カリーヌ、エレン、ミヤのチーム。寛二、サリー、セレン、エレノアのチームに別れて、別々のルートに進む。

 

 シュテルのチームは、九階の特別客専用物置にある資料と薬の実物の破壊と『水谷製薬』のデータのコピーと破壊。

 寛二のチームは、ターゲットの執事の拉致。

 そして、シュテルたちの監視者は、柴崎達の録音と見張り、逃走、隠蔽のサポートを行う。

 作業が終われば、火事と停電を起こしてその隙に脱出。二台の黒のワゴンに乗って逃走する。

 シュテルたちは潜入作戦を明後日に決行する。果たして上手くいくのだろうか?

 








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る