第四十九話 潜入開始

 金曜日の夕方。『アルティメットアーサーハウス』の最上階にて、準備を整える。ライダースーツの着用、武器の最終整備、作戦の見直しを行った。


「よし、みんな。準備はできたな」

「ああ」

「しくじれば、命がありません。慎重に行かないと」

「お? 会長さんの手下がお見えだぜ」


 シュテルたちの目の前に龍神会の構成員が現れた。


「準備が整えましたね?」

「ああ」

「それでは、参りましょう」


 でこのタワーを抜け出し、黒ワゴンの車2台で目的地『トリニティホテル』に向かう。





 車を走らせて三十分。『トリニティホテル』のバックヤード付近に到着する。


「到着しました。皆様」

「随分、警備が厳しいわね」

「我々も警戒してるのもそうですが、敵対組織の阿修羅会の連中もそうですからね。柴﨑の奴も用心深い」

「荷受けのところには、柴﨑の部下かしら?」

「ええ。ここから、侵入する可能性がありますからね。そこまで甘くない」

「シュテル」

「君、サポート頼むよ」

「分かりました」


 |監視者にサポートを任せて、潜入を開始する!


 バックヤードに止めてあるトラックを上手く利用し、柴﨑組組員達の目を盗む。


「おーい! 何台止められるねん? 誰か確認しろや!」

「お前の仲間は、まだかいな? 「渋滞で遅れる」? しゃあないな! 仲間に、19時半までに到着せいと伝えろ! いいな?」

 

 見つかることなく、電気技能者以外立ち入り禁止のエリアに到着する。部屋に入ると、Aの10と書かれた機械の近くにあるダクトを探す。


「みんな、あれだ。あのダクトに入るぞ」


 ダクトを見つけると、シュテル、カリーヌ、マイケル、エリーと男女ごとに入り匍匐前進で二階の倉庫へ目指す。

 到着すると、鍛えられた脚で静かに降り、気付かれることなく、内部へ潜入に成功した。


 そして、2つのグループに別れ、別々のルートで9階の目的地に向かう。


「廊下に3人が来るぞ」

「分かった」


 シュテル達のチームと寛二達のチームは、敵の動きのパターンを読んで、移動する。


「! 危ない!」

「ん?」

「どうした?」

「なんか、後ろに人の気配をしていたような」

「おいおい! ここは、俺らが警備しているんだぞ? こんな頑丈な守りを突破する訳ないだろ」

「それもそうだな」


 時には、組員に感づかれそうになるが、持ち前のステルス能力で何とか回避する。


「セーフですね。シュテルさん」

「あぁ、そうだな」

「ゲームオーバーだと思ったぜ」


 それから、上手く進み、敵の動きを観察しつつ6階へ到達。だが、7階へ登ろうとすると、シュテルの監視者チェックニストから連絡が入る。


「シュテル様」

「どうした?」

「7,8階のフロアが敵が沢山います。隙が無く突破出来ません」

「そうか、何処か別のルートは、無いのか? 外では、壁を伝って登らさせないように、隣のビルから柴崎組の連中が監視しているぞ」

「このフロアに、また倉庫があります。この2つ角を曲がったところにあります。シュテル様のチームは、東へ。寛二様のチームは、西のほうへ行って下さい。そこに、9階に繋がるダクトがあります」


 2つのチームそれぞれ、指示通りに倉庫へ向かい、中に入るが!組員に見つかる!


「なんや!? お前ら!?」

「くそ! 騒ぎを起こす前にけりをつけるぞ!」

「何している!」

「ちっ! ついてないな!」


 シュテル達は、騒ぎが大きくならないうちに組員達を倒す。組員達は、ナイフなどで攻撃するが、相手はスキルメディカルなどで強化、進化した神ともいえる存在になっているシュテル達。当然叶うはずもなく、彼らの驚異的な身体能力と体術などに翻弄され、倒されてしまう。

 

「マイケル、お願いね」

「はい、ミヤさん」

「頼んだぞ、エレノア」

「もちろんです。寛二さん」


 すると、マイケルとエレノアの瞳が、緑色に光る。これは、二人だけが持つ専用の『アーサーの眼』で、記憶操作メモリーコントロール。対象の人物の記憶を消したり、書き換えたりできる能力。

 倒れてる彼らの記憶を完全に消し、二人は立ち上がる。


「これで大丈夫です」

「ありがとう、助かるよ」

「もう目覚めた頃には、我々の記憶はありません。安心して進めますよ」

「さて、行くか」

 

 2つのチームそれぞれ、倉庫のダクトに登って入り、見つかることなく、9階のアッ客室、特別客専用物置に向かう。

 

 客室には、執事4人となる醜い男達が待機していた。


「あーしんだい」

「俺ら付き人はこうして待つだけですからね」

「寝るかな、会食が終わるまで、結構長いだろ」

「こら! そうとは限らないだろ! 寝てたら殴られるぞ!」


 すると、テレビ側の通気口から、物音が起きる。4人は、何事かと警戒してると、そこから寛二達が現れた。

 4人は、動揺してるが、寛二達は笑みを浮かべている。


「なな、なんだ! お前たちは!」

「何って、借金を取り立てに来たのよ? 我々から借りた500万」

「そんなの借りてない!」

「あら、しらを切るのね?」


 セレンの言葉を機に、寛二達4人達が、詰め寄る。その様は、恐怖を感じる様だった。


 その頃、シュテル達も、特別客専用物置に到着した。その部屋は、『水谷製薬』のマークが描かれたアタッシュケースが沢山積み込まれていた。


「こんだけ、積まれているのね」

「でも、ほんの一部なんだろ? 全部なら、どれだけあるのだろ?」

「とりあえず、破壊工作にあたるぞ。僕とカリーヌは、奥にある白のノートパソコン2台のデータを全て抜き出す。君たちは、資料と実物の破壊を頼むよ」

「了解!」


  その時、シュテルの監視者チェックニストから連絡が入る。


「シュテル様」

「どうした?」

「只今、奴らの会食の最中ですが、社長が部下を連れて、30分後にここに来るそうです」

「何!?」

「ですので、20分で完了してください」

「分かった。みんな、聞いたな? 20分で終わらせよう。想定外だが、進めるぞ!」

「「了解!」」

 

 シュテル達は、素早く取り掛かり、破壊とデータのコピーを行う。寛二達のチームは、執事達を監視者チェックニスト達に運んでもらい、シュテル達の応援に駆け付ける。


「よし、完了だ! みんな、逃走するぞ!」


 シュテル達は、魔術を使わず、ライターなどを使い、証拠隠滅を行う!火事を起こした後、停電を起こして、逃げ出す!もちろん、最上階の彼らも、感知する。


「何が起きてるんや!?」

「柴﨑の親父! 9階から、火が出てるみたいで、付き人が居ません」

「あの野郎ら! 見つけたら、海行きや! 社長、うちの若い衆が、誘導しますので、安心してついて来てください。俺らは、消火活動や、消防に通報しますので」

「そうか! そうするぞ!」

「『水谷製薬』の皆様、俺について来てください」

「こんなところで、死ぬのはごめんだ」

 

 柴﨑は、社長らを隠し避難通路を使い、安全な場所に避難させ、消火活動を行う。


 シュテル達は、4階に降り、組員達と出くわす。


青心斬せいしんざん!」

地の一閃ストーンシンプル!」

赤の鼓動レッドブラスト!」

緑の大波グリーンウェーブ!」


 様々な魔術を使い、組員達を倒しながら、ようやく、バックヤードから、ホテルの敷地を出て、近くの無人の公園からホテルを見上げる。9階のところを中心に激しく燃え盛り、消防車のサイレンが鳴り響く。


「何とか、終わったわね」

「ああ、なんとかね。ひさひさに、ドキドキしたわ」

「シュテル、データは?」

「もちろん、USBメモリーにしっかりと記録してる。心配するな」


 シュテルとカリーヌは、それぞれ腰ポケットと胸元から、USBメモリーを取り出し、寛二達に見せる。


「よし、目撃される前に黒ワゴンに乗ってずらかるぞ」

「ホテルが燃えてる。あの50を思い出す」

「「「!?」」」


 シュテル達の目の前に突然、燃えているホテルの光景を見てるアクアマリンが現れた。

 しかし、その表情は、表情をしていた。

 

「アクアマリン! どうしてここに!?」

「少し、散歩しようと思ってね。サイレンが聞こえて、ホテルが燃えてるのを見えたんだ」

「そうか」


 すると、カリーヌが、耳元でシュテルに囁く。


「もう行こう。この女、戦う気がないみたいから、無視しよう」

「そうだな」

「じゃ、俺たちは用があるから行くからな」


 エレンが、そう言いシュテル達が立ち去ろうとすると、アクアマリンが呼び止める。


「待て」

「なんだ?」

「お前たちは、戦っているのだ?」

「それは、あんた達の目的と柴﨑の企みの阻止をメインにしてるのよ」

「……ダメなんだ。それじゃ」


 すると、アクアマリンが仕込み杖を取り出す。


「なんだよ! やるのかよ!」

「お前たちは、殺そうとしてると考えてるが、違う。今から私がやるのは、だ」

「どういう意味よ!」

「私達6人は、私利私欲の為にやってると考えていては、。すべての始まりは、私たちの分かれ道となったあのホテルのような燃え盛る50から決めた復讐だ」

「復讐だと!? どういう意味だ?」

「だから、それを調べる価値がお前たちにあるのか、それを確かめるのだ。なければ、死あるのみだ。構えろ!」


 アクアマリンの気迫の構えにシュテル達も構える。


「君らの過去は、知らないけど。何か関係があるのは、確かだ。受けて立つぞ!」

「いい構えだ! いくぞ! アーサーの血を受け継ぐ者たちよ!」





 

 

 

 

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