第五十七話 兄と妹

 何とか振り切ったシュテルとマイケルは、一緒に乗っている松岡組員達と共に、千楽医学病院に向かっていた。


「ありがとう。助かったよ」

「いえいえ、私は、親父の命令に従ったまでです」

「親父の命令? どういうことです?」

「実は、柴﨑のシノギを調査したあとに連絡取る予定だったのです。しかし、いつまでも、連絡来ないものですから、そのカジノへ向かう途中に路地で倒れている彼女らを発見したのです」

「その当時の状況は?」

「4人とも、うつ伏せで頭から血を流していました。それで、救急車と親父に連絡して、貴方達を見つけようと電話を掛けようとしたら、すぐさま、親父から連絡来まて、「シノギの店員の通報で2人が集団に襲われているから救え」と命令が来て、救出しに来たのです」

「そうですか。ちなみに、病院は?」

「あと20分で着きます」


 20分後、千楽町郊外にある千楽医学病院に到着した。この病院は、かなりの最先端を誇り、医学雑誌において世界のトップ10に入る病院と評される。

 早速、病院の中へ入り受付にセレンとエレノアの病室へ向かう。


 10階にエレベーターで登り、病室に入るとそこには、点滴で受け包帯を巻かれて、心電図で心拍を計測されている2人。それに、松岡と会長の瀬山、松岡組組員達がいた。


「セレン! 大丈夫か!? しっかりしろ!」

「エレノア! しっかりするのです!」

「安心せい。2人は、意識あるし無事や。それに、別の病室にいる執事も無事やから安心しろ」

「そうですか。 エレノア、セレンさん。誰に襲われたのですか?」

「それが、分からないのです」

「どういうことですか?」

「なんか、記憶が飛んで……とにかく、分からないのです」

「恐らく、記憶を消す魔術でも使ったのやろう。それしか考えられない。何せ、千楽町だからな」


 シュテルは、瀬山に質問をした。


「会長。千楽町には、海外組織が沢山いるって、松岡から聞いた。そいつらの犯行という可能性は無いのか?」

「海外組織か。確かに魔術を持つ幹部達は、仰山おる。しかし、それは無いと思う」

「何故、そう言える?」

「確かに、そういう能力を持つ奴らはおる。しかし、そいつらは、例え本部の幹部だろうが、ボスだろうが、一時的な効果しか発揮しないものばかりだ。今回は、一時的な能力では無いうえに、一生付きまとうものじゃ」

「それに、千楽町にいる海外組織のは、ほとんど枝クラスの支部の一番下の支部や本部、数人程度しかの力程度の弱小組織ばかりです。もし、我々のシマで今のことをしてみたら、前者のほうは、絶縁。後者は、壊滅です。そんな間抜けな事をするはずが無い」

「では、千楽町にいる海外組織以外で、その魔術を持つ組織は知らないのか?」

「いや、知らないな。せやけども、それを恐れずにやれるということは、それより巨大な組織ことやな。検討もつかんわ」


 松岡は、シュテルとマイケルに謎の集団に襲撃されたことについて尋ねてみた。


「シュテル様、マイケル様。千楽北大通りにて集団に襲われたみたいですが、教えてくださいますか?」

「ああ、セレンとエレノアが病院に運ばれたのを聞いて、タクシー乗り場に向かおうとしたんだ。すると、緑と黄の燕尾服の若い男女の集団が無言のまま、詰め寄ったんだ。僕らは、警告したけど無視。そのまま戦闘にいったのだよ」

「5代目。もしかしたら、妹さんらを襲ってきた連中と関係ありと思われます。どうでしょう?」

「うむ、そうやな。松岡、お前の若頭にその燕尾服の連中について調べさせろ。お前は、シュテルとマイケルのサポートしろ。妹さんらは、監視者チェックニストに警護をしてもらう」

「分かりました」

「シュテル、マイケル。今晩、この病室にいてくれ。千楽町に戻るのは、明日でええ」

「分かった」


 それから、時が経ち夜の11時。静寂になった病院にて、月光が差し込む病室にて、シュテル達は、会話をしていた。


「兄上、ありがとう。お見舞いに来てくれて」

「うん。これは、兄として見捨てるわけがないよ」

「私達に構ってないで、仕事してくればいいですのに」

「僕は、貴方のことを心配で仕方ないのです。エレノア」

「セレン、エレノア。悪いけど裸になっていいか? 体がベトベトで、体を拭きたいんだ」

「いいですよ」

「構わないわ」


 シュテルとマイケルは、すへでの身につけたものを脱ぎ、美しい全身の体を出したあと、香り付きのペーパーやタオルなどを使い拭いた。


「兄上達の体は、バキバキだね」

「まぁ、筋トレを兼ねて鍛えているからね」

「オマケに、も成長してますが」

「エレノア、やめてくださいよ。恥ずかしいじゃないですか」

「しかし、ごめんね。こんな失態を出して」

「大丈夫だよ、セレン」


 シュテルとマイケルは、セレンとエレノアの頬を優しく撫でて、微笑んだ。


「人間は、誰だってミスがあるさ。僕らだって、潜入した時に見つかってしまった時があっただろ? ミスした時は、それを反省して次から気を付けたら良い」

「そうですね、シュテルさん」

「兄上、マイケル。ありがとうね」

「さぁ、寝て休みなさい。残りの作業は、僕とマイケルが、やるから」

「頼むわ、兄上」


 セレスとエレノアは、安心して眠りにつき、シュテルとマイケルは、体を拭いた後に着替え、眠りについた。希望の満ちた表情で


 

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