第五十八話 証言

 翌日の夜、セレンとエレノアを監視者チェックニストに任せ、ホストクラブ『パラダイス』で勤務して5日後、早い段階で仕事に慣れたシュテルとマイケルは、女性客を接客していた。

 2人のたくましい肉体と美しい声に、女性客はメロメロだ。


「シュテル君! 大好き!」

「ありがとう。君みたいな女神が来てくれてうれしいよ」

「今晩は、存分に楽しんでくださいね」

「ありがとう。マイケルの体を見ていると落ち着くわ」


 そうやって接客していると、スタッフルームに生前の橋本の状況を知る聖也が出勤してきた。


「聖也、おはよう」

「おはようございます。オーナー」

「聖也君、今回、契約キャストとして2人が加入したから」

「加入ですか? どんな人達ですか?」


 杉下は、聖也にスタッフルームのドアの隙間から見せる。


「あの上半身裸の銀髪と黒髪ですか?」

「名前は、シュテルとマイケルだ。それぞれ、銀行とワイン業の御曹司だ」

「すげぇ! 俺よりもカッコいいじゃないですか!」

「あと、2人から君に聞きたいことがあるから」

「? 分かりました」


 それから、日付も変わり店内で盛り上がりを見せる頃、2人はダンスを披露してたり、歌声を披露して女性客をさらにメロメロしていた。

 ひと段落を終え、タイミングを見計らって、杉下はアナウンスでこう言った。


「シュテル、マイケル、聖也。業務連絡を伝えますので、スタッフルームに来るように」

「ごめんね。僕達、席を外すよ」

「大丈夫だよ。気にしないで行って」


 シュテルとマイケル、別の客を接客した聖也は、スタッフルームに向かう。

 その時、シュテルとマイケルが行ったのを確認した女性客2人は、シュテルとマイケルが飲んでいるグラスそれぞれに、青と緑の粉薬を入れて溶かした。


「これで良し」

「あいつらも、カリーヌ様とエリー様にも粉薬を入れているわよね?」

「もちろんよ。この4人には、更なる進化をさせないとね? アーサーの血を受け継ぐものは、彼らだけで良い」


「お待たせしました。オーナー」

「おぉ」


 シュテルとマイケルと聖也は、パイプ椅子に座りひと呼吸した。


「オーナー、もしかして?」

「そうだ。目の前にいるシュテルとマイケルが君に聞きたいことがあってね。こ千楽町で死んだ橋本が、このホストクラブに来ただろ? その時について聞きたいことがある」

「なんで、シュテルとマイケルが?」

「すみません、それは事情があって答えられないのですよ。納得できないでしょうが、どうしてもそれが聞きたくて」

「もしかして、あんた等はCSMOシスモか?」


 聖也の言葉に、シュテルは少し笑いこう答えた。


「残念だけど違うよ。でも、それに近いことはやってるかな?」

「はぁ……」

「さて、聖也さん。中華チェーン社長の橋本が、このホストクラブに来た時の状況を教えてくれますか?」

「分かりました」


 聖也は、納得できないつつも、その時の状況を説明した。


 その時は、リニューアルの初日のため、午後2時に来て掃除したりして時間を潰そうとしたら突然、5人の美女がやって来た。

 他のホストが止めようとしたが、「オーナーの代わりの視察」と言い、視察をさせた。後々偽物だと分かるが、その後の午後3時頃に鬼のような顔をした橋本がやってきて、彼女らに「こんなところに居やがったか! 正直に言ってもらうぞ!」と怒鳴り散らして彼女らと口論し、自分達は仲裁に入ることが出来なったらしい。

 それから、30分後に橋本を突き飛ばして逃走して、橋本は「おどれ! こら! 待たんかい!」と言って追跡したらしい。


「なるほどね。それと、口論の中に『ロンギヌス』という言葉は出なかったか?」

「なんで、聞くの?」

「頼む、答えてくれ」

「……分かりました。確かに、そういう言葉があったな。橋本が「兵士を作る」とかどうか言ってたな。何を言ってるか分からなかったな」

「シュテルさん、どうやらこの薬のことを調べていたようですね」

「もしかしたら、本社にその資料があるかも知れない。、カリーヌに伝えるか」


 シュテルとマイケルは、カリーヌ達にこの事を調べて貰って、その資料を入手させることにした。


「それにしても、この千楽町でも堂々と入れるもんだな」

「まぁ、龍神会のお膝元だろうと関係ないと思ったのでしょうね」

「龍神会!?」


 突然、声を出す聖也に驚く3人。一体どうしたんだ?


「どうしたのですか?」

「そういや、龍神会について言ってたな」

「柴﨑についてか?」

「いや、違う。たしか、「これから、シュテルら4人を復活させてボスに復讐の手伝いさせるんだろう」とか「龍神会の瀬山らと共に、田中とかの件も済ませたら、用済みで殺して、学園都市を乗っ取るのだろうがぁ!」とか言ってな!」

「待て! 「4」とは、どういう事だ! 俺らは、8人だぞ?」

「はぁ? でも、「4人」と言ってたよ? あ! でも、「ほんで、4やろ! ほんま、クズやな」と」


 シュテルとマイケルは、混乱した。瀬山らと彼女らと繋がっているのか?知ってるなら何故?その時、シュテルとマイケルにある考えが過ぎる。

 

「オーナー、もう十分だ。これからは、我々だけでが」

「……聖也、すまんが今日限りで2人は辞める」

「えぇ!? なんで!?」

「僕達、昨日の昼頃に「明後日からこっちに戻ってほしい」と言われましてね。短い間ですが、お世話になりました」

「えぇ……。元気にな」


 そして、シュテルとマイケルは、の最後の勤務をしっかり仕事を終え、午前4時になっていた。

 『パラダイス』の裏路地にて、シュテルとマイケルが杉下に礼をしたあと、シュテルが、自分の監視者チェックニストに電話を掛けた。


「君、朝早くすまないね。瀬山らにバレずに調べて欲しいことがあるのだが」





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