第六十六話 ルビーとアクアマリンとの密談

 カリーヌ達は、彼女らが活動している裏カジノがある南地区へと向かった。ここは、ほとんど住宅やビル、スナックのような店が並ぶエリアで時代の流れで変わっているが、昭和の匂いが今でも漂う。

 

「こんなところに裏カジノがあるのかしら?」

「おい! この町に住んでいる住民達に失礼だぞ」

「悪かったわ」

「で? 何処にあるのだ? 寛二。その裏カジノは?」

「赤い星が目印の骨董屋が裏カジノの入り口だ。そこで? 合言葉に『皿は好調か?』と言えばいいそうすれば、入口を案内してくれる」

「そうか」

「しかし、この南地区は、どうしてこんなに昭和風情が漂うのだろう?」

「この地区は、バブルの頃は、かなり人気になってな。風俗やキャバクラ、ダーツまで様々なジャンルのお店が数多く繁盛していた。当時の阿修羅会にとっては、黄金の町と呼ばれていて、心臓部として最高のシノギになっていた。だが、バブル崩壊が起きた後は、急激に衰退して自殺者増加などの問題を抱える上に、時代の流れに対応できず今では、負け犬の町と呼ばれている。その上に治安が悪いけどな」


 その時! チンピラ数人がカリーヌ達に絡んできた。


「おいおい! お前ら! ここで何してんねん!?」

「あぁん? 何だ? 別に関係ねぇだろ?」

「ここは、あんたらの様な若者が来るところではないでぇ?」

「ここは、縄張りだと言いたいの?」

「私達のような若者に言われても困るけど?」


 エリーとエレンの言葉に腹を立てたチンピラのリーダーが激怒した。


「なんやと!?  こら! 馬鹿にしてんのか!?」

「厄介な展開になったな」

「どうするのかしら? 寛二?」

「サリー、ここで騒ぎを起こせば彼女らに気付かれるからな。どうすればいいもんか」

「おら! 死にたくなければととっと消えろや!」


 その時、そのリーダーが、カリーヌとエリーに指でを出した。それ見た二人は、少し首を縦に振り、カリーヌがこう言った。


「ごめんね。貴方達。実は、阿修羅会の四次団体、山村組とお話しに来たの」

「山村組……あぁー! そう言えば、親父がそんな話してたな。すまんな、誤解してましたわ。すんません!」


 チンピラ達は、態度を変えて道を開けてくれた。カリーヌとエリー以外の寛二達は疑問に思いつつも、道を通った。

 

「ねぇ? 寛二?」

「どうした?」

「さっき、こいつらから、聞いたけど。どうやら、裏カジノもう一つあるらしいよ」

「何だと!? 何処だ?」

「目的地から、ほんの数分にある裏カジノよ。そこで、合言葉を貰ったわ。どうやら、彼女らの活動しているところらしいけど、それに警察の眼を誤魔化すために今日は、二人しか入れないみたいから、私とエリーで行こうと思うけど」

「大丈夫か? 女性二人で?」

「大丈夫ですよ。この地区は、女性は手を出してはならないというルールがあるのです」

「そうなのか? 案外、しっかりしているのだな。そうか。それじゃ、カリーヌ、エリー。気を付けて行けよ」

「それじゃね!」


 寛二達は、カリーヌ、エリーと別れ目的の裏カジノへ向かった。二人は、その姿を消えたのを確認すると、表情が変わりチンピラのリーダーに話しかける。


「……ルビーとアクアマリンは何処にいるの? 終業式の日の晩、彼女らの部下を通じて私とエリーに密談をしたいなんて」

「はい。罠じゃないと理解してくれてありがとうございます。場所は案内します」

「勘違いしないでね? 私達は、まだ罠だと思っているから?」

「エリー様、そう言わずに。心配なら武器を持っても構いません。すぐに行きましょう。向こうの方は、ルビーとアクアマリン様の部下が時間稼ぎをしますので、その間に」

「分かったわ」

 

 カリーヌとエリーは、彼らの案内でルビーとアクアマリンが待つ場所へと向かった。


「ここね」

「そうです。我々はこれで」


 彼らは、二人に礼をして何処へ行った。二人がたどり着いたのは、とある八世帯のアパートだった。二人は、二階の203号室に入った。


「あら? ルビーとアクアマリンじゃない」

「待ったぞ。入れ」


 そこには、ちゃぶ台を囲んで座っているルビーとアクアマリンがいた。二人は、囲んで座り、カリーヌがルビーに話しかける。


「で? 密談したいことって何よ?」

「そう早まらないでよ。アクアマリン」

「あぁ」


  アクアマリンは、冷蔵庫からお茶を取り出し、二人のコップに注いだ。二人は警戒したが、殺気を感じないので安心して飲んだ。


「では、さっそく実はね、『聖女の騎士団』を壊滅させて欲しいの」

「「はぁ!?」」


 二人は、意外過ぎる発言に驚いた。まさしく、藪から棒である。


「あんた! 壊滅させるって、どういう事よ!?」

「説明するわ」


 ルビーは、サファイアがシュテルとマイケルの二人に話した内容をそのまま話した。


「あんたらのボスが、羽川先生とは。それに、あんたらは、このような姿を変えられた『六真家』の人間として復讐したいのね?」

「そうよ。あいつは、あたし達とどん底に追い詰めた挙句、利用してきたからね」

「しかし、この組織を潰してどうするの? カタギの仕事に就くのは難しいし」

「実はね、龍神会会長と志村が協力しているわ」

「え? あの二人が?」

「そうだ。実は、新たな組織を作る為に席を用意してくれているようだ。新たな紋章を用意してくれている。教会関係者も協力してくれている」

「教会関係者って?」

「詳しくは分からないが、何せ莫大な力を持つ教会らしい」

「けど、壊滅状態にさせなければ、この計画が実行されない。その為には、あんた達の力がいるわ」


 カリーヌとエリーは、協力することにした。組織を壊滅させられるなら、何でも協力すると。さらに、ルビーは自分達がある薬を飲んでいる事をそれが羽川を超える力を持つのを伝えた。彼女からの発言には相当な意思を伝わる。

 すると、カリーヌは田中と橋本の死の真相について尋ねた。


「ねぇ? 田中と橋本の死の真相は知っているでしょ? もし、よろしければ教えてくれる?」

「それが、知らないな」

「はぁ? どうしてよ? あんた達が関与しているのは分かっているのよ」

「それがな。その死の真相を知っているのは、志村と瀬山だ」


 それを聞いた二人は、疑問が浮かんだ。どうして、死の真相を探って欲しいと言ってきたのだ?


「でも、おかしいじゃない! だって、あの二人が「真相を解明してほしい」って言ってきたよ!」

「そうなのか? それに、サポートしながら調べさせるようよ? それに、『生命の泉』を知っているらしい。私達は分からないけどな」

「……エリー。これはどういう事か説明してもらわないといけないね」

「そうだね」

 

 カリーヌとエリーの様子を見て、ルビーは、ある予感を感じた。


「カリーヌ、エリー、アクアマリン。何か嫌な予感がするわ」

「どういう事だ?」

「もしかしたら、何か都合の悪い事をあの二人が隠している可能性が高いわ」

「何だと!?」

「とにかく、事件の調査をしてちょうだい。それと、寛二達には感づかれないようにね。もし、感づかれたら厄介なことを起きるから」

「厄介なことって!?」

「いいわね?」


 ルビーの睨みに三人は「はい」と答えるしかなかった。しかし、その予感が的中することになる。




 

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