第六十五話 今後の活動
食事を取った後、予約してくれた『円海ホテル』という小さなホテルを用意した。カリーヌは、不満そうだが我慢して寛二と共にホテルの中へ入る。このホテルを予約した理由は、高級なホテルだと敵に予測されてしまう恐れがあるからだ。
しかし、この一般レベルのホテルを使えば、比較的に安全なうえに、敵の予想から大きく外れることになるからだ。
中に入ったカリーヌ達は、フロントのスタッフに話しかける。
「ねぇ? 本日、予約している者なんだけど?」
「もしかして、島村様ご一行ですね?」
「あぁ、そうよ」
「失礼ですが、島村様は?」
「俺だ」
寛二が前に出て名乗り出た。スタッフが聞き間違いなのか、念のために確認する。
「電話のお声は、少し高いような気がするのですが?」
「あぁ、その時は喉の調子が少し悪くてな。誤解を生んですまないな」
「そうですか! では、鍵をお渡しいたします」
スタッフは、寛二に二つの鍵を渡した。グループとしては、カリーヌとエリー、サリーと寛二とミヤとエレンで分けられた。
兄であるミヤとエレンはカリーヌとエリーを心配したが、彼女二人は「戦闘と体は鍛えているから大丈夫」と返事して断った。
寛二達は部屋に入り、荷物を置いた後、寛二達の部屋で今後の活動について話し合った。
「で? 今後の活動だけど、どうするの?」
「まず、『橋本中華本社』の社長に接触するしかないな」
「でもさ? どうするの? 会社に忍び込んで尋問するの?」
「それは、まずいじゃないかな? 俺達が犯罪に手を染めたら、後々不利だし」
「それで? その会社の場所は、円海街のどこにあるの?」
「円楽西地区にある。門に殺された橋本の顔が書かれたマークがある。よく、目立つはずだ」
寛二は、パソコンからホームページをカリーヌ達に見せた。
「うわ! 気持ち悪い笑顔だね。吐き気がするね」
「エリー。ここで吐くなよ」
「で? 代表者挨拶を見せて」
「おう」
寛二は、代表者挨拶のページを表示して読んでみた。そこには、「従業員が安心して働き、日本の中華業界を支えて日本一になる、なり続ける為に働く仲間」とか見かけの優しい言葉ばかり並んでいた。
「何が、仲間だよ。奴隷のように働かせて自分の利益しか考えてないくせに」
「全くだよ。求人では20万と書いているけどいい加減にしろな」
「で? どうするの? どうやって、接触するの?」
「サリー、焦るな。考えてある。接触はカリーヌとエリーにやってもらう」
「え? どういうことなの?」
エリーは、寛二に理由を尋ねた。
「フリー記者に変装するのだよ。そうすれば、接触して聞きたい事が聞けるかもしれないからだ。もし、新聞社に所属している記者だと、後でバレて大変な事になる。しかし、フリーの記者なら本物かどうか、見分ける方法は無い」
「でも、フリーの記者は社会的信用が低いし、電話でアポを取れるかどうか」
「それは、賭けに出るしかない。もし、無理ならプランBを考えてある」
「そう。でも、残りのアンタ達は、どうするの? まさか、私達二人で働かせるつもりは無いでしょうね?」
カリーヌとエリーは、寛二を睨んだ。
「安心しろ。残りの俺達は、この町の裏カジノなどを調べる」
「裏カジノね」
「あの女共は、西にも活動を広げている。そこで、情報を手に入れたら、人体実験などを阻止することが出来る。取材に出るまでは、お前ら二人もやってもらう」
「そう」
すると、寛二はカリーヌとエリーにスマホを渡した。
「ちょっと、二台はいらないわよ」
「トバシの携帯だ。もし、警察に追われた時の身代わりだ。こんなところで、マルース家とキャロル家のブランドを落とす訳にもいかないだろ?」
「それも、そうね。頂くわ」
「じゃ、私が掛けるわ」
寛二から、スマホを受け取ったエリーは、橋本中華に電話を掛ける。
「お電話ありがとうございます。橋本中華です」
「すみません。私、フリーで記者をしております。柴﨑キャサリンと言いますけど、実は、御社の社長さんに柴﨑マリアと共にインタビューをさせて頂けないかと思い、電話をしたのですが」
「取材ですか。どう言ったものでしょうか?」
「はい。西日本に展開する御社が、どうやってここまで成長したのかなどを知りたくて、それらを聞きまして記事にしたいと思いまして」
「少し、お待ちください。社長に確認を取ります」
社員は保留音にして社長の元へ向かった。
「今、確認を取っているみたいね。でも、寛二? どうして、私達を選んだの?」
「この親子は、ギャル系で若い女が好きでな。こいつら、大阪の料亭でそいつらをお触りなどをしたらしい」
「最悪だな。社長の肩書を利用してやるなんて」
その頃、『橋本中華』の本社にある社長室では、橋本卓志の息子が偉そうに座りながら仕事をしていた。すると、扉からノック音が聞こえる。
「入れや」
「失礼します。社長に取材をして欲しいと電話があったのですが」
「あぁん? 電話? おどれ、男やったら容赦しないぞ? それに、俺は優先取引先との会談があるから、忙しいんや。で? 男か? 女か?」
(反社を取引で忙しいって、クズ社長が。もうやめようかな?)
社員は、橋本の息子に睨まれながら、言った。
「フリーの女性二人組です。若いハーフだと思われます」
「ほんまか!? よっしゃー! もちろん承諾や! 名前を聞いて来い!」
橋本の息子は、醜く興奮しながら社員に名前を尋ねた。
カリーヌ達に戻り、社員から返事が出された。
「お待たせいたしました。社長は、大丈夫だと言っています」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「ですが、明日以降は、取引先へとの商談などがありますが、インタビューになるのは、来週か今週の終わりごろになります。大丈夫ですか?」
「もちろん、大丈夫です」
「ありがとうございます。それでは、後日追って連絡致しますので、よろしくお願いします」
「分かりました」
「それでは、失礼します」
エリーは、電話を切りカリーヌ達に大丈夫だと伝えた。
「ほらな? 予想通りだろ?」
「確かに、一発でOKを貰えるとは」
「後日追って連絡するみたいだから、連絡が来たら、準備するわ」
「分かった」
「で? 裏カジノはどこにあるの?」
「そう焦るな。イエローとレッドが場所を掴んである。行くぞ」
カリーヌ達は、その裏カジノで調査することにした。
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