第六十七話 研究体

 カリーヌとエリーは、密談が終わり部屋を出ていくと、ルビーが「後で、リモートで話したい事がある。リモートするパソコンは、そちらのホテルの客室に部下が運んでくる」と言った。

 そして、平然を装い寛二達と合流して、ホテルへと帰った。


 夜、寛二達の部屋で報告会を行った。まず、最初は寛二達の報告だ。


「ねぇ? 何か分かった?」

「それがな、単にシノギの一部らしくてな。それと言ったものは無かった」

「全く、無駄足だったよ。単に汚い大人たちが汚い声を上げながら楽しんだだけ」

「そっちは、どうよ?」

「何もなかったわ。舐められたもんだわ」

「そうか。それじゃ、調査は振り出しということね。明日からはどうする?」

「そうだな、これといったものは無いし。あの裏カジノが何か重要な手がかりになると思ったのだが、とりあえず俺達男子チームでもう一度向かう。もしかしたら、大きなチャンスが来るかもしれない」

「分かったわ」

 サリーは、その後、女子チームはどうするか寛二に尋ねると、「明日はゆっくり観光でもしてこい」を言われた。報告会が終わると、カリーヌとエリーは自分達の部屋に戻る。


 そして、夜九時ごろ、パジャマ姿でくつろいでいる二人にホテルスタッフに変装したルビーの部下が、カモフラ―ジュしてパソコンを持ってきた。部下がパソコンを起動し、ルビーとアクアマリンとの通信が繋がった。


「聞こえるかしら? カリーヌとエリー?」

「もちろん、聞こえるわ。ルビー。それで、話したいこととは?」

「それは、『研究体』についてよ」

「けんきゅうたい? 何よ? それ?」

「『研究体』とは、進化したあの薬に投与された人の事よ」

「まずは、これを見てくれ」


 アクアマリンが、あるデータを2人に表示した。そこには、寛二の親友である川田や、他の二人の情報などがあった。


「これって! シュテルと寛二が戦った! 川田じゃない!?」

「そうだ。ターゲットは、羽川が指示した。まず、最初の川田は、あたしが確保して安全のところに避難させてから、偽造しようと思ったけど、川田の奴が、どうやったかは知らないが接触して、自ら薬を投与したのよ」

「本当に残念だ」

「そうなのね。それと、他の二人は?」

「他の二人は、千楽町のホストとこの町のホストだ。もちろん、我々で確保して安全なところまで避難させて偽の報告書を送ろうと考えている」

「それに、このナンバーは、あれかしら? 数字は一号、二号でアルファベットのR,B,Gは、レッド、ブルー、グリーンのことを表しているのでしょ? それに、属性の色の」

「そうだ。数字はナンバリングしており、アルファベットは、属性の色を現す色だ」

 

 なんと、羽川は研究体としてデータを作り、提出しさらなる完璧な薬を作ろうとする野心に二人は、悪寒が走った。

「なんか、ゾッとするわ」

「羽川の奴は、何を考えているの?」

「あの女は、そういう奴よ。人の命なんて何とも思っていない悪魔だから」


 すると、エリーは志村と瀬山について質問する。


「それとさ、志村と瀬山についてだけど? あいつらに何か動きがあった?」

「瀬山は、何も動かないが、志村は近いうちに森本と『水谷製薬』の社長、水谷浩一を逮捕するらしい」

「逮捕?」

「あぁ。大物との密談があるという情報があったらしく、逮捕するらしい」

「森本。確か、シュテルのお父様が退学処分を出したと聞いたけど」

「そうなのか? やけに姿が無いと思っていたが」


 カリーヌは、アクアマリンの発言が気になり質問をした。


「姿が無い? あんた達と接触してたでしょ?」

「そうだ。奴は組織の目的を達成する為に、協力したからな」

「でもさ、どうして接触してきたの?」

「……あいつは、接触してきたのではない。

「どういう事よ?」

「あいつは」


 森本の正体を話したアクアマリンの言葉に二人は騒然としていた。


「そ、そんな!」

「……」

「言葉を失うのも無理が無い。でも、それでも自分を見失うなよ? そこで見失ったら終わりだぞ」

「……分かったわ」

「それで? あんた達はどうするの?」

「寛二達男性陣は、もう一度裏カジノを調査するみたい。サリーも含めて私達女性陣は、何も予定はないけどね。フリーの記者として『橋本中華』の社長とのインタビューがいつになるか分からないけど」


 それを聞いたルビーは、二人にこんな提案をした。


「なら、『女神の剣』と呼ばれる地下闘技場に行かない?」

「地下闘技場?」

「あんた達が泊っているホテルにあるメイン地区の女性専門店だけしかない五階建てビル『円海女性ビル』というのがあるけど、そのエレベーターに乗り、ボタンでパスワードを打ち込めば、地下闘技場に辿り着くわ」

「もちろん、男性は一人もいないし、女性だけだから安心して」

「へぇー? もちろん、強敵でしょうね?」

「もちろんよ。あたしが、保証する」


 カリーヌとエリーは、強者と戦えることに喜んだ。


「よし! 決まり! 案内は頼むわね!」

「もちろんよ」

「体を動かしてないから、戦闘できるなんて最高!」

「それでは、明日。サリー達に感づかれないように、午前九時にあんた達が食事していた串カツ屋で合流しましょう」

「そんな事を知っているなんで、驚いたわ! 分かったわ! 明日会いましょう」

「それでは、明日会おう」


 カリーヌとエリーは通信を切り、部下がパソコンを回収して礼をして立ち去った。


「あー! 楽しみね! エリー!」

「そうだね! 思いっきり暴れるわよ!」

「じゃ! おやすみ!」

「おやすみ!」


 カリーとエリーは、地下闘技場で戦えることを楽しみしながら、眠りについた。


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