第四十一話 仲間

 シュテルと谷村が戦闘態勢に入る頃、『アルティメットアーサーハウス』の最上階のリビングに、カリーヌ、マイケル、エリー、サリー、豊川、増田がいた。

 増田と豊川はベットで横になり、メイドたちによる治療を受けていた。


「よろしいのですか? ここは、貴方様方の専用の部屋ですよ」

「関係無いわ、そんなの! 安全な場所は、ここしかないの! それに、私は意地悪で見下す部分があるけど、仲間を売ったりしないわ!」

「もしかして、僕らに『この人たちを見殺しにしろ』と言いたいのですか?」

「滅相もありません!」

「しかし、どうするの? 冤罪だと分かった後、財閥プラチナである私らは大丈夫だわ。でも、二人はどうなるの?」 

「! 確かにそうね」


 学園では、根強いカースト制が残っている。貧しき者は、豊かな者の奴隷になる。理不尽なことを言われても常識と認識しなければならない。

 嫌な思いを受けたく無ければ従え。金が欲しければ豊かな者の為に働け。その思想によりイジメが頻発している。


 カリーヌは、責任重く感じている。本当に申し訳ないと思っている。

 どの道、増田と豊川は財閥プラチナ上流ゴールドからイジメの大本命になってしまう。 


 悩んでいると、豊川は少し体を起こした。


「もういいんや、カリーヌ」

「え?」

「そうだな。俺らは治療した後に自首するんだ。嘘の供述して、罰を受ければ丸く収まる」

「そんなことを言わないで、増田! 何で悪くないのに、罰を受けるの!? 事情を説明すれば、きっと理解してくれるわ」

「そんなの無理に決まっているんだエリー。人間は、お前らにんだ。お前らの言葉が嘘だとしても、一切疑わずに信じる。俺らが本当のことを言っても、一切信じてもらえずに疑う」

「それは、違う! 彼らは心を見ているのよ。信じてもらえずに疑うのは、悪意を感じ取って、正義のために裁きを下しているのよ!」

「そうか? 入学式、お前に愛想良く挨拶してきた警部らを見たけどよ。人気の無いところでお前のことを言ってたぞ。『世間知らずの小娘だな』、『どの面下げて言ってるんだ? 力を失う瞬間が楽しみだな』とな」

 そんなのは分かっていた。彼らの笑みは尊敬の意味ではなかった。どこか見下している侮辱の笑みだと。

「だったら、私は自分で道を切り開き、ただのご令嬢ではないと証明するだけよ。大きな壁にぶつかってもね」


 増田は、彼女の言葉を聞くと笑い出した。

「あんた、最高の人間だよ! お前の赤い瞳は偽りが無い。カリーヌ・マルースとして信念が伝わるよ」

「そうやな。ネガティブな発言をしてすまんな」

「いいのよ」

「とはいえ、二人をどうするのですか?」

「……方法は、あるわ。マイケル」

 すると、カリーヌは豊川と増田に近寄り、顔を見た。


「あんたたち、『変身』したい?」

「『変身』!?」

「もしかして、僕らのようにするということですね。良い提案ですね」

「つまり、別人として生まれ変わり、財閥プラチナの御曹司として生きるのね?」

「そうよ。サリー」

「でも、どうやってやるの?」

 カリーヌはポケットから火属性と地属性の聖石と一枚の紙を取り出した。


「これは?」

財閥プラチナ専用の聖石と私たちを『変身』させた魔術と聖石の埋めこみ方法について書かれた紙よ。私の執事のポケットから、これらが落ちてきてね。どうして、持っていたのかは知らないけど」

「つまり、執事たちの魔術を再現するのですね。でも、大丈夫なのですか?」

「安心して、密かにマンションで何度もイメージトレーニングしてきたわ」

「だ、大丈夫なのか?」

「で、でも『変身』できるなら、頼む。他に選択肢はないからな」

「では、始めるね。だから、信じてね」

 彼女はそれぞれ豊川と増田の心臓に地属性と火属性の聖石を埋め込む。それが成功すると、赤いオーラを立ち上って、呪文を唱える!


王子への転生トランスプリンス!」


 すると、増田の体から赤、豊川の体から黄色のオーラが発生する!


「がぁーーー!」

「あぁーーー!」


 彼らの醜い腕と脚は、細くなりながら筋肉質になり、手と足の指先も細くなる。

 胴体の脂肪もみるみる消え、胸筋と腹筋がしっかりと現れる。

 豊川の髪と瞳はルビーと見粉うような眼と美しい赤髪に変化。増田は、シトリンのような瞳になりと美しい黄の髪になる。

 顔と声もシュテルとマイケルと互角のイケメンになった。

 (よし、やったー! 上手くいって良かった!)

 二人は、生まれ変わった。火の貴公子ルビーオブプリンス地の貴公子シトリンオブプリンスとして

 

 

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