第二十四話 CSMO(シスモ)との接触

 志村と名乗る人物と合流するため、四人は悟られないように、何も知らないふりをして訓練服を着て部屋を出た。財閥階級プラチナランクの生徒だけ許されたバイキングレストランで朝食を摂る。朝食の内容は、昨日の夕食とほぼ変わらない。

(豪華な料理を食べ続けたら病気になりそうだな。野菜とか納豆がほぼ無い)

 シュテルが食べていると、羽川がステージに上がる。


「実は貴方達に大事なお知らせがあります。今日の森林実戦訓練場は中止となります」

 生徒たちがざわめきだすのを見たシュテルは、を理解した。


「先生! 何故出来ないのですか?」

「それがね、荒らされているのよ。朝に騎士が準備しようと倉庫に入ったら、銃は湿気で使えなくなったり、テーブル、ガラスなどが割れていたりしてたのよ」

「誰がそんなことを!?」

「きっと中流シルバー以下の連中だろ? あんなのしたって損害賠償するはめになるのによ」

 羽川の話を聞いた生徒は、彼らが恨んで妨害したと考えたのか、怒りの声を上げていた


「で、予定としては、復旧や新しい道具の入荷を考え明日からとなります」

「は!? 明日!?」

「何でだよ! せっかくの訓練が一日無駄になるじゃねぇか! どうしてくれるんだよ!?」

「そう言われてもね、起きたのは事実ですし」

 説明にシュテルたちの二つ隣にいた谷村が口を出した。

「ところで? 正確な犯人は掴んでないのだろう? この後、彼らに聴取するのか?」

「はい、もちろんです。彼らに事情聴取します。決定的な証拠に掴んだら該当する生徒は退学。器物損壊で逮捕です。訓練出来なくなった今日は、お休みです」

「じゃ、学生服でいるのですね?」

「いえ、私服で構いません。皆さんは、各自好きなことをして下さい。ちなみに、この階の東側にある簡易訓練室で騎士が指導してくれるので、やりたい方はご自由に行って下さい」

「「「はーい!」」」

「それでは、ホテル敷地内と高級住宅地の外には出ないように。それでは朝食を摂ったら解散!」


 朝食が終わり、それぞれが筋トレ、簡易訓練室での指導を受けるなど、自分のやりたいだけの一日になる。生徒は不満を出しながら、レストランから出る。

 シュテルたちは、ロビーへ入った

「彼らの仕業だと騎士が知ったら大問題だぞ」

「先生は中流シルバー以下がやったと思っているのだけど、計算のうちかしら?」

「さぁ、分かりませんが、人を陥れるのも平然とやるのも彼らなのでしょう」

「でも、よく気づかれずにいけたものだね。大したもんだね」

 シュテル達は待ち合わせになっている場所に向かうが、ホテルの入口で谷村と鉢合う。

「今日は仲良く、友達とお出かけか? シュテル」 

 彼の問いに一瞬、目を細める。

「まぁね! 散歩でも行こうかなと思ってね」

「散歩って……老人じゃねぇんだからよ? ……ところで? こいつは? カリーヌ」

 谷村がエリーを見る。

「エリーよ。エリー・キャロル。キャロル家のご令嬢」

「あー、キャロルエンターテイメントというアミューズメント業界で名うての大企業のご令嬢か」

「そうよ。あんた知らないの?」

「すまんな。アミューズメントには興味なくてな。……しかし」

 顔を凝視されたエリーは、顔をしかめた。


「どうしても、を覚えるんだよ」

「何が言いたいのですか?」

「お前らを見ると、と」

(こいつ! そこまで疑っているのか!?)

「昨日の訓練もそうだ。あんたらが。どう思う? 創業者の曾孫さんよ」

「さぁね? もしかしたら、とても射撃の上手い人の生まれ変わりで、前世の記憶が?」

 動揺を極限まで押さえ、笑顔で冗談を言った。


「そうか、フッ! かもしれないな。悪いな、呼び止めて」

「大丈夫だよ。気にしないで」

「それじゃ、俺は部屋で二度寝するわ」

 エレベーターへ向かったのを確認した四人は、外へ出て待ち合わせへ向かう。


 シュテルたちは高級住宅街にある『小森骨董店』に到着した。

 この店は小さく看板が古くなっている。中の様子を見てみると、店主らしき男性以外、誰もおらず閑古鳥が鳴いていた。


「いらっしゃい、若者さん達や。買わないだろが、鑑賞してくださいや」

「凄いね。この掛け軸は、綺麗だわ」

「この壺、美しいですね」

「おじさん、こんな素晴らしい物を集めるなんて見る目があるじゃない」


 店内に入ると、数多くの壺や掛け軸が売られており、横山大観といった芸術界に名を残している有名な著名人が製作した作品があり、値段は数百万以上する。

「みんな、彼に会わないと。忘れるところだった」

「そうでしたね、本題に戻しましょう」

 危うく目的を忘れるところだった彼らは店主のもとへ向かう。シュテルが代表して合言葉を伝える。

「店主さん、『壺は、売れているか?』」

 シュテルの言葉を聞いた彼は眉を少し動かした。

「『微妙な感じに売れたな』」

「そうか。『明日は晴れるように売れるといいね』」

 微笑んで最後の合言葉を出すと、店主は机を二回叩くと聖母マリアの肖像画が開き、地下へ続く階段が現れる。


「へぇー。凄いね。こんな階段が隠されていたのね」

「まぁ、裏カジノの入口にしちゃ最適な場所だけど」

「さて、お客様。奥へどうぞ」 


 降りると、豪華なカーペットと外装が目に入る。金のドアノブに手をかけて裏カジノに入る。


「なんだ!? ここは!?」

「地下にこんな豪華絢爛なカジノがあるなんて!」

「人が見るだけで五十人以上いますね」

「よくバレずに営業出来るわね」

 

 そこは、ヨーロピアンをイメージした裏カジノの風景だった。

 数多くのジュースやお酒、魅力溢れるバニーガールやディーラー。最高級の素材で出来た円形のカウンターテーブルやソファー。

 商品を客に販売している店員や高額なチップが飛び交って賭け事に興じる客。

 アーサーのギャンブルより格上だった。


 黒のスーツにグレーの線の帽子を被った男を捜すと、円形のカウンター席に座っているのを発見する。見た目から年齢は三十代ごろだろうか?


「貴方が、志村さんですね?」

「あぁ、CSMOシスモの志村正だ」








 

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