第五話 財閥としての朝

 財閥階級プラチナランク生活地域に朝日が差し込む午前五時。寝室にて上半身裸で寝ていたシュテルが目を覚ます。この生活地域は、完全プライベートかつ快適な環境、機能、サービスなどが備わっている三十階建てマンションであり、シュテルは最上階の三〇〇四号室に住んでいる。

「さて、まずはシャワーを浴びるか」

 この青を基調にした部屋で向かったのは、シャワーだった。 


 脱衣所で服を脱ぐと洗濯機に入れ、寝汗でギトギトの引き締まった美しい体を洗っていた。

「あー! 最高だな! の時は、隙間風ありありの風呂場で風邪ひきそうになったけど、ここは、そんなのは無いし暖かいな!」

 シュテルは、昨日の入学式までは入居できなかったため、天国のようなシャワーを浴びた後、青を基調した私服を着て、朝食でトーストを作り、お茶を沸かし入れた後、リビングのテーブルに置いた。

 ソファに座ったシュテルは、テレビでニュースを観ることにした。

「ニュースです。三ヶ月前に判明した山村議員の収賄疑惑の問題で、山村議員は辞職することになりました」

「最近の議員さんは何を考えているのやら」

 シュテルは、朝食を済ませると部屋を出て、待ち合わせへ向かうことに。


(さて、アクアマリンへ向かうか)

「おい、シュテル」

 シュテルは、マンションの玄関ホールから外を出ようとすると、後ろから声を掛けられる。彼は、後ろを振り向くと谷村がいた。どうやら、このマンションに住んでいるらしい。

「今日は、朝早くからお出かけですか? シュテル様」

「アハハ、シュテルで良いよ。これから、カリーヌとデートをするからね」

「へ! そうかよ。ところで、シュテル」

「ん? どうしたんだい?」

「お前、本当に御曹司ホンモノなのか?」

 シュテルは、彼の言葉を聞いて動揺するが、悟られないように平然を装う。

「何を言ってるんだい? 僕は、アルフォード家の次期当主だよ」

「でも、なんかを覚えていてな。入学式のお前の父を見ていると、どうしても、腑に落ちなくてな」

「君が緊張していたから、そう感じたんじゃないか?」

「緊張……ね。俺は、そうとは感じてないけどな?」

 シュテルは、彼の威圧するような視線に負けないよう、爽やかな笑顔で対応する。

「まぁ、良いわ。呼び止めて悪かったな」

「いえいえ、どうってことないよ」

「そうか。それじゃ、デート楽しんでくださいな」

 その時、シュテルが谷村に背を向け五歩歩くと、彼がシュテルに警告をする。

「そうそう、シュテル。最後に一つ言わせてくれ」

「なんだい?」

「くれぐれも、気をつけな。中流階級シルバーランク以下の三下連中が財閥階級プラチナランクを討とうという噂だ。特にはな……」

谷村君」

 そう言ったシュテルの両瞳は、青く輝いて光っていた。

 谷村も、シュテルと目を合わせ黄色く輝いて光っている両瞳で見ていた。

 五秒間、目を合わせた後、光が収まり、シュテルはカリーヌが指定した待ち合わせ場所へ向かう。




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