第二十話 告白

 昼休憩を挟み、午後からの銃撃戦術の訓練はハードなものだった。

 倉庫内部、廃墟ビル、飲食店内といったシチュエーションで、彼らは騎士と実戦で行い、銃撃戦での立ち回りを身に付けていく。


 さすがに実弾は危険なので、当たるするとインクが付く弾を使い騎士庁側と生徒側それぞれ一チーム五人編成で対決。体に三発か頭に一発被弾すると即退場のルールで、どちらか全滅するまで続く。 

 さらに、生徒側には、厳しいルールが三つ課されながら、訓練を行わなければならない。


 一つ目が、制限時間十分以内に五人全員倒すことで時間切れになった場合、人数が騎士庁側よりも多くても生徒側の負け。

 二つ目が、弾の数が一人当たり十五発。騎士庁側は、無制限。

 そして、三つ目が全員の弾が尽きたら即敗北である。

 このような、不利かつ理不尽な状況で勝たなくてはならない。

 任務で起こりうるこのような危機的状況に陥った時に慣れるためである。

 

 シュテルは、カリーヌ、マイケル、谷村他、財閥階級プラチナランクの生徒と組んで訓練を始める。

 

 しかし、騎士達は格上でチームワークが高く苦戦を強いられる。

 その結果、シュテル側が敗北。何度か作戦を組むも意図を見抜かれてしまい、十連敗という屈辱的な展開になってしまった。

 もちろん、彼らだけでは無く、他の生徒も同じだった。


 一日目の訓練が終了した。財閥階級プラチナランクの生徒は学生服に着替えると、己の未熟さを知ったのか少し落ち込んでいる。

 羽川が生徒を慰める。

「はいはい、そんなに落ち込まないで! こんな日もあります。こんなことで落ち込んでいたら、何も成長しませんよ? ですから、この経験を次に生かせば良いのです。分かりました?」

「「はい!」」

 羽川と他の先生が点呼を終えると生徒をバスに乗せ、運転手に出発の指示を出し、ホテルへ走り出した。




 バスは軽井沢ロイヤルホテルに辿り着いた。シュテルたちはバスを降りてロビーへと入った。

 ここは、軽井沢の中でも一流と賞賛されるホテル。一階ごとに客室の数が百で、演劇が楽しめるシアタールームがある。


 訓練服が入った袋をホテルの洗濯、清掃係に、道具の入った服を騎士達に回収させ、羽川と先生達は生徒をバイキングレストランへと案内する。その間にシュテルとマイケルは、騎士からアメジストについての事情聴取を受ける。


 二人が遅れてカリーヌと隣の席に座ると、豪華な食事が始まった。

 最高級の松阪牛、車海老、キャビア、一本五千万以上の価値があるマグロの切り身があり、さらに最高級のデザートとドリンクがある。まさにお金持ちにふさわしい夕食だ。


 午後七時、羽川がマイクを持って口を開く。

「はい、皆さん! 今から部屋番号を発表します。なお、三人か四人の男女混合のグループで泊まっていただきます!」

「シュテル君、君と一緒だったら良いな」

「そうだといいね、カリーヌ」

「僕は、誰と泊まることになるのでしょうね?」

「はい! それでは、部屋番号と泊まる生徒を発表します!」

 羽川が元気な声で、レストランの大きなモニターに表示される部屋番号と泊まる生徒の名を読み上げる。

 次々に発表される中、シュテルの名が表示された。

 シュテルが、名前を見つけて確認すると、開いた口が塞がらなかった。 

 (! これって!)

 何故なら、その部屋番号は七〇〇五号室だったからだ。

 朝に謎の男からを変身させるために使うよう指示された部屋だ。さらに謎の男からは『から説明を受ける』と聞かされていた。


 冷静を保ちつつ、部屋に泊まる二人の名前を確認した。そこには、「カリーヌ・マルース、マイケル・ルイン」の名前があった。

 絶句していると、マイケルがシュテルの肩に左手を置き、カリーヌが、シュテルの腕を組んだ。

 マイケルが小声で囁く。


「ウフフ、驚いたでしょ? 実は、貴方のを知っているのですよ? もちろん、貴方がアルフォード家の御曹司ではないこともね?」

「マイケル、僕の正体をバラすのか? 今、ここで」

「バラす?」

「そうだ! ここで僕を姿に戻して、カリーヌと僕をいじめるか!?」

 それを聞いたカリーヌは、少し微笑む。

「大丈夫よ。バラしても、

「は? どういうことだ?」

「だって、私とマイケルは……」

「「」」

 シュテルは、驚愕したと同時に、二人がということを理解した。

 あり得ない! 彼女らは、副学園長の娘、ワイン製造業のお金持ちの御曹司では無いことに、未だに信じられなかった。

「私とマイケルは、元々は平民ペーパー出身なの。貴方と同じく太っていて頭が悪くて身体能力も低かったの。『このままでは、人生が終わる』って、思ったの。しかし、卒業間近にある人物が近づいてきたの」

「ジャージーを着たオカマか?」

「あら、知ってたの? それも、そうよね。だって、君は見ていたよね? 私が、あのクソオカマに説教されているところを」

 シュテルは、あの時に見ていたことを気付いてきたことに、驚きを隠せなかった。

  

「気付いていたのか?」

「えぇ、そうよ。クソオカマに説教されている最中に気付いてたよ。でも、私のさが出てしまってね、演技したのよ。騙してごめんね」 

「じゃ、僕がこの姿になった日も覚えているのか?」

「はい、もちろんです。僕を美しい姿にさせた着物の若い女性と共に見てました。 貴方の背後にあった物陰からね? もちろん、カリーヌもオカマと共にね」

 二人の告白にぼう然としていると、マイケルが囁く

「さて、発表が終わったし行きましょうか?」

「行くって?」

「決まってるんじゃない。これから、生まれ変わる新たな仲間と泊まる部屋よ。でも、を変身させないとね? シュテル君、薬を持って来た?」

「あぁ、ホテルの人が部屋に運んでいった僕のバックにあるよ」

「そう、では行きましょうか? 時間は早いけど、待っているを変身させましょう?」  

「では、行きましょうか?」

 シュテルは、二人と一緒にが待っている部屋へと行った。


 

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