第三十話  潜む『本当の目的』

 時間を遡り、シュテルたちと上流ゴールドが会話していた頃、アクアマリンにサファイアと幸樹がいた。


 スーツではなく青を基調とした私服を着て、手をつないで幸樹と歩いていた。


「今日は、ありがとう! サ……じゃなくて、キャサリン姉さん」

「いえいえ、おかげで楽しめました。君みたいな子と遊んで楽しかったです」


 ゲームセンター、映画館、ボーリングで遊んだ後、大通りから外れた小さな公園のベンチで休憩している。

 ちなみに、キャサリンとは、サファイアの偽名。

 

「ところで、二人は大丈夫かな?」

「どうでしょうね? 上手く行けたら良いのですが」

「……」

「心配しないで、彼女らは強いですから信じましょう」

 幸樹と会話をしていると……

 

「サファイアはん。この子との遊びでっか?」


 声のした方向を見ると、目の前に灰色のスーツを着た男と部下と思われる四人がいた。


「誰ですか? ナンパならお断りです」

「ナンパちゃいます。やないですか、冗談はほどほどにしてください。まぁ、おたくの部下を介して連絡を取ってたから、仕方がないですね。では、自己紹介させてもらいます」

「えぇ、どうぞ」

「初めまして、サファイア様。俺は、五代目龍神会直系柴崎組組長、柴崎譲二と申します。お見知りおきを」


 彼の名前を聞くと、すぐに思い出した。

「柴崎……あぁー、三次団体から三千人の構成員を持つ組織になった成金でしたね」

「『成金』とは酷いですな。サファイア様。まぁ、そう言われても仕方ないですね。さて、ここでは、あれなんで……別の場所に」

「幸樹、このおじさんたちと仕事の話をするから、私の部下と帰ってください」

「うん」

 部下を交信で呼び出し、幸樹を連れて帰らせると、柴﨑の後をついていった。


 たどり着いたのは、高い外壁に囲まれた文房具屋のバックヤードがある私有地だ。

「大丈夫ですか?」

「心配いりません。俺の組員が店長をしているフロント店舗です。一時間前のトラックが最後の納品なんで、明日の朝七時半までは、誰も来ません」

「そうですか」

「さて、サファイア様、これを」

 柴崎から茶色の封筒を渡される。


……『マリアヴィーナス』の実験結果報告です」 

「三十人分のデータがありますね」

「えぇ、一年掛かりましたけどね。警察、CSMOシスモ、騎士庁の目をかいくぐって、ホームレス、俺の組から借りている借金滞納者などを実験体にしました」

「それは、ご苦労。結果は?」

「正直、いまいちですな。最後の五人を除いて、死亡ですわ」

「そうですか」


 データを見ていると柴崎がこんなことを口に出す。


「それと、聖女マリア様から『をサファイアに会わせろ』と」

「私にですか?」

 何者かの視線を感じ振り向く。そこにいたを見る。

「え!? ど、どどど、どいうこと!?」




 アジトのリビングに帰ると、怒りと焦りにより交信を使うのを忘れ、固定電話で聖女マリアに連絡を取る。

「サファイアです! 一体どういうことですか!? ……え? 『パソコンにファイルを送ったから見ろ』ですか? 分かりました」

 電話を切ると困惑していた。


「サファイア姉さん?」

「幸樹。私の部屋にノートパソコンがありますから、リビングに持ってきてください」

「うん、分かった」


 幸樹は、サファイアの部屋にあるノートパソコンをリビングに運び、テーブルの上に載せた。

 起動してパスワードを入れると受信されたデータファイルを発見。タイトルは英語で『復活の計画』と表示されていた。クリックして開くと、計画の内容を見て、息を呑んだ。


「幸樹、私が言うまでルビーたちには伝えてはいけませんよ」

「う、うん」

 



 第四章 聖女の騎士団 終











 

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