第五十五話 面会
シュテルとマイケルが、謎の集団に絡まれている頃、東京国際病院の15階の病室にて、ある老人が寝ていた。近くには、心電図と点滴があり、どうやら人工呼吸器が装着している。
すると、2人の男がこの病室が入ってきた。老人は、目を開ける。
「お前らか、浩一、森本」
「体調は、どうですか? 水谷会長」
老人の正体は、『水谷製薬』の会長だった。彼は、老化の件もあって、重い病気に罹っている。
「今のところ、何ともないわ」
「それは、良かったです。会長」
「それにしても、森本。お前、退学になったらしいな」
「はい、終業式を機に、ダイルという学園長から、退学処分を受けましてね。他の高校にも入学試験を受けようとしましたが、犯罪行為で原因でね。1つたりとも、入れさしてくれないのですよ。全く、前科があっただけで、そのような待遇をするとは、舐めてやがる」
「ふん」
会長は、鼻で笑った後、こんな事を言った。
「そういえば、森本。お前、彼女らに黙って例の薬を作っているらしいな」
「はい、とある文献から社長と私で完成した薬です。これを使えば、
「ちょっと、不公平じゃないか?」
「不公平? 公平の間違いですよ。あいつらは、薬や装置とかで、筋肉を成長させたりしているのですよ!? それを使って何が悪いのですか?」
「確かにな」
「俺はね、会長。もう、中途半端な力は嫌なんですよ! 常に頂点に立ってリスペクトされたいんだ! 努力しても、無意味に人生が終わる! それだったら、どんな手でも、使っても頂点に上がるんだ!」
「森本」
「すみません、社長」
会長は、森本の社会への憎しみが伝わってきた。成り上がりたいという欲の塊だと理解した。
「で、その薬は?」
「今のご時世、監視の目が厳しくてね、車のトランクに。これから、総理に会う予定になってます」
「そうか、残念だ」
「それでは、失礼します」
2人が、この病室を出ようとすると、会長が呼び止める。
「待て、もし仮に成功したとしよう。今後は、どうするんだ?」
「もちろん、時代の先端を引っ張っていくのですよ」
森本は、そう言うと水谷と共に部屋を出て、総理の元へ向かった。
それから、3時間後、総理官邸に到着。執務室で、総理に例の薬を見せた。その薬の形状は、錠剤で、赤、緑、黄の色した3つだった。
「あれ? 残りの5つは? それに、青が無いぞ?」
「あれは、女性じゃないと効かない薬でしてね。買い手を探しているのですが、なかなか見つからないのです。現時点は、同性である貴方しか効かない薬を貴方に売っているのです。で、同性のやつの青は、私が飲みます」
「……いくらだ?」
「1つ、5000万」
「5000万!?」
「はい、悪くないでしょ?」
「しかし、この薬を飲むと何が起きるのだ?」
「それは、購入をして貰わないと困ります。しいて言うなら、進化するということです」
総理は、森本の言葉に疑念を持ち、悩んでいた。すると、水谷がこんな事を言い出す。
「総理、時代は、もう新たなステージが始まっているのです。これからは、進化する者達だけ未来が待っている時代なのです。その為には、若返り、美男、美女になる、知能と身体能力の向上などしなければ、そんなテレビなどで、言ってる凡人の考えを持つ奴らに任せれば、終わります。このまま、人間がこの姿で生きていくと思いますか?」
「確かにな、そう言える保証は無い」
「ですからね、総理」
森本は、トドメの一発の言葉を浴びせる。
「時代の流れと新たな価値観を受け入れて進化する者が、時代の流れなどを理解せず、無知のまま、否定したりする愚かな者達を支配し、しつけする時代なのです。そして、愚かな者達は、一生泣き叫びながら、奴隷として働くでしょうね? 恐怖ばかりの人生が」
「……分かった。この緑を買おう」
「ありがとうございます。素晴らしい選択ですよ」
森本は、総理から5000万を笑顔で受け取り、購入証明書にサインさせた。
「それでは、確かに受け取りました。革命の時までそれを飲まないでください。その時が来れば、暗号の合図で飲むタイミングを出しますので」
「分かった」
「それでは、失礼します」
森本と水谷は、総理に礼をして執務室を後にし、総理官邸を抜け車に乗り、本社へと向かった。
走行中、車内では水谷と森本がくつろいでこんな会話をした。
「しかし、大きな戦力を得たな」
「奴は、あの薬と適合するだけ、飲んだら素晴らしい戦力になるだろう」
「サファイア達には伝えないのか?」
「ダメだ。これは、最後の切り札なんだ。もし、知られたら、戦意喪失に繋がるからな」
「そうか」
「女性用はともかく、残りの2つは?」
「それは」
すると、車が進行方向と違う方向へ走り出し、数分すると小さな路地に停まった。2人は、何事かと動揺する。
「おい! 何やってる? 早く、元のルートへ戻せ!」
「聞こえないのか?」
運転手は、2人に振り向くが、そこには
「さて、詳しい話を聞かせてもらうか?」
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