第三話 契約
中山は、地図の指示に従って、待ち合わせ場所へ到着した。
そこは、全ての
「来てくれたね……中山君」
「で、最高の
「それは、現在の二〇二二年から君が入学した二〇一八年に戻すのだよ」
中山の表情が明るくなるのを見た男は、こんなことを言った。
「だが、巻き戻しても君のその全ての要素では、同じことの繰り返しになる」
「じゃ、どうするのさ?」
「中山隆としての存在を抹消し、新たな存在に生まれ変わらせてやる」
「つまり、俺を別人にするということか?」
「ご名答」
「じゃ、契約を!」
中山は、その方法を受け入れた。
「だが、分かっているのかね? 別人になるとは展開が変わるという意味だ。起きない出来事のはずが起きたり、起きる出来事のはずが起きなかったりということが起きる可能性がある。それでも良いかね?」
「良いから、さっさとしろ!」
「そうか……では、パンツ一丁になりたまえ」
中山は、何の疑いもなくパンツ一丁になると、脂肪が付きまくった体が現れた。
男は、左手を上に向け、なにやら唱え始めた。
すると、中山は苦しみ始める。
「あぁぁあぁ!」
すると、彼の体から青いオーラが立ちのぼって変化を始める。まず、豚のような腕と脚は、みるみる筋肉質になり、手足の醜い指先は細くなっていく。胴体に付きまくった脂肪は、みるみる減少して筋肉がしっかりと浮かび上がる。
ぼさぼさの髪は、清潔感溢れる美しい銀髪に染まっていく。どんよりとした黒い瞳は、ぱっちりとしたサファイアのような青く美しい瞳に。声も、美しいテノールボイスに。そして、顔は小さくなり、まるで王子様と見紛うようなイケメンに変わった。
「はぁ……はぁ」
変化が終わると青いオーラは、消えた。
「中山君、これで契約成立だ。君は別人に生まれ変わった」
男は、鏡を彼に渡した。すると、美しくなった自分に喜び、引き締まった白い体を触っていた。
「さて、中山君。今の時間は二〇一八年三月三十一日深夜十一時半だ。これから、君は入学し、幸せな学園生活を送るが、設定を知らせておこう」
「あぁ、教えてくれ」
男は、別人としての設定を教えた。
まず1つめは、シュテル・アルフォードという、名前しか残っていないはずの創設者の曾孫ということ。つまり、財閥階級のアルフォード家の御曹司である。
2つ目は、周りの記憶が書き換えられているということ。但し、ちょっと完全じゃない人が居るかもしれないので気を付けるように。
3つ目は、イジメたカリーヌの家系と友好関係ということ。
そして最後は、知能と身体能力を格段と上げて、性格と精神をクールかつ落ち着きのある優しいものに変えたということだ。
「分かった……そういえば、なんか今までの自分が馬鹿らしくなってきたな」
「ふふふ、それも契約のよる力だ。シュテル」
「はい」
「とはいえ、この先、いろんな試練などが待ち構えている。しかし、だからといって諦めずに乗り越えて行くんだ。そうじゃないと、意味が無いからな」
「もちろんです」
「さて、悪いが眠って貰うよ。素敵な学園生活を送れよ!」
男は、眠りの魔術のようなものを発動し、シュテルを眠らせた。
「これで良い……あとは、彼の成長次第だ。一体どうなるか楽しみだな。期待しているよ。
男は、彼を持ち上げ何処かへとテレポートしていった。
第一章 中山として別れる日 完。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます