サファイアオブプリンス
サファイア
第一章 中山として別れる日
第一話 だらしない男
ここは太平洋の島国に存在する学園都市アーサー。人工島で海に囲まれ、動物以外の外敵から守る強固な結界が張っている。入るには建築魔術によって造られた大橋、マリンブリッジを通らなければならない。
希望に満ち溢れた若者が一人前の騎士になるため世界中から集まり、私立騎士育成学園、『アルフォード』で鍛え上げる。
しかし、ここにはカースト制が存在している。ランクエリアとランクシステムの二つだ。
ランクエリアはその人の社会的階級に見合った住居、設備が与えられ上の階級ほど快適な生活を送ることができる。
つぎに、ランクシステムとは、いわば待遇の良さ……いや、接待という上の階級にしか許されない特権、手に入るこの学園都市の通貨アーサーの額に差が現れる。
差別とも言えるこの地で騎士に憧れ、門を叩いた一番下の社会的階級出身の青年がいた。
「俺は、最強の騎士中山様だ……グヘヘ」
階級の一番下を表す汚い部屋で寝ている肥満体型の彼、中山隆。二十歳。
金がたくさん貰えるという理由で騎士に憧れ、入学試験ギリギリで合格する。
しかし、自分の能力、容姿などが悪いのもあって上の階級から馬鹿にされたり、汚い水を掛けられたりとイジメを受け続ける毎日だった。
成績や態度も悪く教師から謹慎、補習などのペナルティを受けても危機感を覚えていない、とんでもない青年でもある。
すると、食べ物のゴミが散らかっているテーブルに置いてあるスマホから、着信音が鳴る。
「うーん! 何だよ! せっかく眠っているのによ!」
中山は、スマホを手に取り、電話に出た。
「はい、なか」
〈こらぁー! 中山! 一体何時まで寝ているのだ!?〉
「えぇ? 今日は休みでしょう? 先生?」
〈馬鹿者ぉ! 今日は、登校日だ! 平日イコール登校日だぁ! 舐めているのかぁ!〉
先生と呼ばれた男の怒号に舌打ちをした。
「はいはい。で、何時ですか?」
〈時計を見ろ!〉
彼は、部屋の壁に掛けられた時計を見る。
「八時三十分ですか……単に三十分寝坊しただけですが?」
先生は、八時に朝のホームルームと伝えるのが面倒くさくなったのか、このようなことを言った。
〈とにかく! 早くクラスルームに来い! 分かったかぁぁ! この〉
中山は、先生が喋っている最中に電話を切った。
「疲れているが、行くか」
中山は、お腹の脂肪を揺らしながら、シャツに短パンから冬用のアルフォード学園の学生服をだらしなく着替える。その後、顔を洗わず歯も磨かずに外へと出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます