第十五話 ボス戦1
生活地域を出た二人は、合宿が行われる軽井沢行きのバスターミナルへ向けて心地よい風を受けながら歩いて行く。
「あー! 気持ちいいな! こうやって、歩いて行くと、何だか上手くゆきそうな感じがするな!」
「本当ですね!」
「軽井沢で、アーサーラウンズからの直々の指導だからな、相当な経験になるに違いない」
「そうですね! 絶対にものにしましょう!」
2人は、気合いを入れてそう言っていると……
「! よけろ!」
「え!?」
シュテルが展望台から紫色のオーラを放った銃弾が飛んでくるを察知し、マイケルを抱え避けた。
「おい、誰だ!? 出てこい!」
シュテルが飛んできた方向に向けて大声で叫ぶ。すると、展望台から飛び二人の目の前に着地した。
銃弾を放った人物の正体は、紫色のツインテールと瞳をした紫のスーツを着た女だった。
「あーら! ステルスで仕留めようしたけど気付かれたのねぇ!」
「貴方! 誰です!?」
「申し遅れたわ!」
女は、ジュルリと音を立てそうに指で唇をなぞり自己紹介をする。
「わたくし、貴方達を殺しに来たアメジストと言うのですの! よ、ろ、し、く、ね?」
アメジストは、二人にウィンクした。
「僕達を殺しに来ただと!? 何故、君に殺されなければならんのだ?」
「それは、革命の為よ!」
「革命ですか?」
「そう、貴方達のようなのんびり暮らす輩に制裁を加えるため、皆と平等にするために活動するの。その為には、影響力を弱めるために貴方達を殺さなければね?」
「影響力を弱めるだと? 何故、殺す必要がある?」
「それは、発言力などを弱める為ですよ」
「え!? 弱める為?」
「はい! そもそも差別する人間達が強気でいられるのはどうしてなのか分かります? 金と後継者、親族がいるからです。」
「金と後継者?」
「はい! そもそも金というのは、生活をするための社会の土台ともいえる存在。それが、沢山あるということは、それがガチガチに安定していることなんですよ! それに、自分の保身に使える身代わりや道具になれるのですからね」
「そうか! ああやって下の人達を金で買収したりしてるのは、自分の思い通りに操ることや権力を見せつける為なのか!」
「はい!」
アメジストは、金についての説明に小声で「ご名答」と狂気に満ちた表情で呟く。
「例えば、ドラマでもたまに見かけると思いますが、会社の社長の息子が偉そうに会社員達に脅しとも言える発言をしたり、威圧的な態度を取るのも、親が社長であるからこそです! もし、そうで無かったらあんな事をしませんよ」
確かにそうだ、こういう権力者やその親族が我が物顔していられるのは、何か大きなバックがある、親族が権力者や大物である、そして絶大な功績を武器にしているからだ。
そして、何も持たぬ人間はこういう権力者達に消される、金の稼ぎを奪われるなどを防ぐため、媚びたり、機嫌を損ねないように接待、権力者の好みなどを知るといったことをしなければならない。これも社会で生きていくには、必要なことなのだ。
シュテルが自分達を狙う理由と谷村が言ったことが本当だと確信した後、アメジストが口を開く。
「さて! 解説が終わったところでいくわよ! ウフフ!」
アメジストが銃を懐にしまいアメジスト石で出来たトンファーを取り出し構えた!
それを見てシュテルは二丁拳銃で構え、マイケルは槍で構える!
「さて、お二人さん! 私を楽しませてねぇぇぇ!」
アメジストが狂気に満ちた表情で2人に襲いかかる!
二人は、アメジストの突進を回避し、間合いを取りシュテルがすぐさま発砲しマイケルが飛んで上から攻撃を仕掛ける!
だが、あっさりとかわされてしまい、アメジストがマイケルに攻撃を仕掛けた!
「ほら! ほら! そんな程度じゃぁ! 一流には、なれなくてよぉぉ!? ヒャッハハハハ!」
「ぐっ! なかなかの腕前ですね!」
マイケルは槍でガードするも、アメジストが新たな角度から攻撃。またそこをガードしても、また新たなところから攻撃してくるから、防御する状態が続く!
シュテルは援護したいのだが、アメジストの動きが素早く過ぎて狙いが定まらない!
マイケルに当たってしまえば、敗北が濃厚になる!
(くそ! 狙いが定まらん!)
シュテルが狙いが定まらずにいると、アメジストはマイケルの僅かの隙をつき足払いをして浮かせて、トンファーで腹にダイレクトに打ち込む!
「ぐはっ!」
アメジストに腹をトンファーで殴られたマイケルは、血を吐いてしまうも、瞬時に体勢を立て直して風の魔術を発動する!
「
槍の矛先から多くの槍の形をした風がアメジストに向けて攻撃する。しかし!
「無駄ぁぁ!
アメジストが紫色したオーラの壁を作って防ぎ、マイケルを吹き飛ばす。シュテルはチャンスと見て発砲し、またもや回避されはしたが顔にかすり傷を負わせた!
「
シュテルは、アメジストを休ませずに二丁拳銃を交差させて撃ちながら氷の銃弾を浴びせる!
だがアメジストは、また瞬時に
「そこだ!」
アメジストの足元に隙を生じたのを見逃さず、銃弾を打ち込んだ!
「あぁぁぁ! あんた! わたくしの綺麗な脚に傷をつけたねぇぇ!?」
「何だ!?」
脚に銃弾を受けたにもかからわず、アメジストがトンファーでシュテルの顔面を数発殴る!
「がぁぁ!」
数発殴られると、アメジストにキックを入れられ吹き飛ぶ!
「シュテルさん!」
吹き飛ばれたマイケルが立ち上がり、槍を肩にめかげて突き刺そうするが、左手で受け止められて、トンファーで腹にもう一発、顔面にパンチ一発、さらに顔面を数発殴りつける!
マイケルは忍耐で持ちこたえながら隙を捉え、アメジストの腹を槍で突き刺し、頭めがげてハイキックを繰り出す!
「ぎゃゃゃあぁぁ!」
腹と口から紫の血が出ている彼女の表情は、鬼のような表情をして二人を睨む。
「こ、コノォォォォォ!」
その時、彼女の全身からとてつもない紫のオーラが出て二人に襲いかかる!
「何だ!? 何かヤバいぞ!」
「逃げるしか無いですよ! それに、あんな傷を負って!」
アメジストが猛スピードで必殺の一撃を繰り出そうしてくる! 二人は、どう避けて良いのか分からず死ぬのを覚悟した! その時!
どこからかパトカーのサイレンが鳴っている。何か近くで事件があったようだ。
「今回は、こ、ここまでにするわ! ぐっ! 次回は、もっと激しくやりましょう? ウフフ!」
アメジストは、ボロボロになりながらも左手から紫の煙を出し自分の体を包み込んだ。
二人は咳き込み、煙が消えた後、そこに彼女は居なかった。
何とか、アメジストの攻撃を耐えた二人だが、大きな傷を負ってしまった。
「終わったのか?」
「そ、そのようですね」
「しかし、どうする? こんな、ぐ! 大怪我では、行けないぞ」
その通りだ。こんな状態じゃ合宿に行けるどころが完治には一週間かかるだろう。
二人が、痛みを感じながら考えていると、マイケルが何かに気付く。
「シュテルさん!」
「ん? え!? 何だこれは!?」
なんと、二人の傷やアザがどんどん消えていくではないか。そして破れた服の一部が修復していき、一分で元通りになって痛みが完全に消えていた。
二人は、一体何が起きていたのか理解出来なかった。
「凄い! もう何も痛くもないよ!」
「確かに、そうですね。痛みも無く傷が消えていますし、と、とにかくバスターミナルに行きますか?」
「あ、あぁ! そ、そうだな」
何故か、元通りになった状況を飲み込めないまま、通信魔術で今回の合宿の引率をする羽川に起きた状況を報告した。
彼女から『分かりました。とりあえず、バスターミナルに来てください』と言われ、そのまま向かう。
第三章 格差社会 終
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます