第三十六話 アルティメットアーサーハウス
志村と瀬山からの話が終わると、シュテルたちはメイド長のキャサリンについていく。
「ねぇ? キャサリン」
「はい、何でしょう? シュテル様」
「メイド長と言っていたが、君はどういう人なんだ? そして、この『アルティメットアーサーハウス』とは?」
「私は、『四大騎士家守護騎士団』の五代目団長なのです」
「団長ですって!?」
彼女の言うには、三百年前にメイドたちは謀反を起こしたが、一部の人は四大騎士家の両親に忠誠を誓った。残りの人数で新たな団長を決めて活動したが、『聖女の騎士団』による襲撃で過去に三人の団長が命を落としたらしい。それを聞いて、シュテルは疑問を抱く。
合宿の時のホテルでの専属執事の彼の話で少し違っていたからだ。
(とりあえず、彼女の話を聞こう)
「団長として就いたのは何年前ですか?」
「学園都市が完成する五十年前です」
彼女の見た目からは二十才ぐらいだろうが、老化していないということは延命の術を施しているだろう。
「そうなの!? ……信じられない」
「『アルティメットアーサーハウス』について話してくれる?」
「はい、エリー様」
キャサリンは詳しく説明した。
この施設は五階建てで、四十六階はメイドと使用人が常駐するエリア。
四十七階にはビリヤードとダーツを楽しめる娯楽施設。
四十八階は、訓練や体力強化を行うトレーニングルーム。
四人それぞれの専属執事の部屋兼金庫部屋は四十九階。
シュテルらの許可なき立ち入り厳禁の完全秘密プライベート部屋は最上階となっている。リビングには最高級の家具家電が設置されており、前方の窓から東京とアーサーをより広く一望ができる。
さらに、最先端のサウナと風呂もあり、リビングに隣接しているベランダには夜空を独占できる。
「ですから、皆様はどんな格好でいようが、安心して過ごせるのです」
「凄いじゃん! こんなの世界中探しても絶対見つかるはずが無いね!」
「しかし、何故このような施設を?」
「再び裏から支配する体制を復活させるためです。皆様のお父様とお母様は『更なる神の領域へと進化させるため』にと」
「僕たちを……更なる神の領域へと進化させるか」
「そうですね。鍛えていけば、『聖女の騎士団』を倒せるだけではなく」
「弱き者を存在になれるということね」
(両親を裏切らないよう、頑張っていかなくては)
命を犠牲までにして造り上げた両親らの意思を無駄にしないよう、決意した。
「そういえば、瀬山会長から『鍛えてもらって』と」
「それでしたら、専用の移動式魔術で四十八階へご移動をお願いします」
「分かった」
四人は着くと、超最先端のシューティング台ルームや拳銃や武器を使ったシミュレーションルームなどが目に映った。さらに、専属のトレーナーと思われる四人の男女が待っていた。
「す、凄いな! 軽井沢での訓練よりも充実してる! 銃もしっかりしているし、……相当必死だったんだね」
「使命と責任を感じるわね。ねぇ? あんたたち、もしかしてトレーナー?」
「はい。我々は使用人兼トレーナーでございます。真の姿に戻られたと知り、待機しておりました」
「君たちも延命の術を使っているのか?」
「はい。メイドと使用人と執事全員です。トレーニングを行いますか?」
「あぁ、よろしく頼む」
トレーニングエリアにて一時間ぐらいの訓練をすることにした。
様々なパターンやシミュレーションの対処。トレーナーによる魔術や拳銃の扱い方などアーサーラウンズよりも的確かつ正確に指導を受けた。一回でかなり経験だが、積み重ねればどれだけの経験を得るのか。
訓練を終了すると、シュテルは棚に置かれた液体の入っているフラスコへ目を向けた。
「すまない。あれはなんだ?」
「魔法薬でございます。ご覧の通り二つしかありませんが」
「私とカリーヌ専用の薬みたいけど、『女神の防御』と書かれているわ」
「でも、信用できるの? 正直怖いけど」
エリーの質問に彼女を指導したトレーナーが答える。
「ご安心ください。ジェイ様たちは、家を継ぐ御曹司とご令嬢であらせられる皆様を思って作製されました。証拠として作成者のお名前が」
薬のラベルの下には、カリーヌとエリーの両親の名前が書かれていた。育てられた記憶は無いのに、なぜか本物だと確信したようだ。絆だろうか。
「聞くけど、魔法薬のレシピは残っているのかい?」
「いえ、焼却処分しました。『生命の泉』の知識を利用していたらしいですが。外に流れるのは非常に危険なので、あれを作った以来は何一つも」
(まぁな。それが妥当な判断だろな)
安全な薬だと確信した判断したのか、カリーヌとエリーは手に取った。
「では、私とエリーの新能力、『女神の防御』をいただいて」
「「乾杯!」」
カリーヌとエリーは一気に飲み干した。
「何これ!? 胸が凄く気持ちいい!」
「やみつきになりそう!」
二人の胸がムクムクと大きくなっていく。圧力に耐えれず、上の服は大きく破けた。ブラジャーの前のつなぎ部分が破け、美しく括れを持つ腹とたわわな胸の谷間が丸出しになる。
最初のサイズはFだったが、今ではHになっていた。
嬉しいそうな目で胸を揉んでる様子を見て、シュテルとマイケルの顔が赤くなっていく。
(これは、見れないな!)
「く……はぁー!」
上を向いているのに気付いたカリーヌとエリーは、豊満の胸でそれぞれシュテルとマイケルの顔に近づける。
「ちょ、ちょっと! カリーヌ!?」
「わわわわ!」
「シュテルは冷静を保っても、大きな胸の女の子がタイプなのね?」
「マイケル、正直になっていいよ? 私の胸を揉んでね」
「「はぁーー! がは!」」
シュテルとマイケルは限界に到達してしまい失神してしまった。カリーヌとエリーは、トレーナーと一緒に二人を最上階のリビングへ運んだ。
しばらくすると、シュテルとマイケルは現実世界に帰ってきた。壁掛け時計は
「ようやく、目を覚ました?」
使用人かメイドに渡されたであろう新しい上着のカリーヌとエリーがソファーでくつろいでいた。
「まったく、勘弁してくれ。羞恥心を持ってくれ」
「同感です。恥ずかしい所を隠してください」
「え? 『もっと見たい』って?」
「エリー、言ってませんよ」
エリーは妖艶な笑みで誘惑するが即答で断られた。
(しかし、こんな特別待遇でいいのだろうか? 僕たちのためとはいえ、甘いような気がする)
特別待遇を受ける自分はこのままでいいのだろうか? どこか不安な気持ちを抱いた。
四人は休憩が終わると、武器の手入れやコンディションの確認を済ませ、立ち上がった。
「行くんだね? シュテル」
「危ない橋を渡るが、谷村の真意を確かめるには必要だからね。では行くぞ」
谷村の待つ『倉庫港』へ!
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