第三十七話 ロングバトル1 倉庫港
『アーサータワー』から出たシュテルたちは『倉庫港』に到着した。
外観は刑務所のような高い壁で覆われており、入口は重厚かつ暗い色の扉だ。
中に入ると、いつも活気溢れているアーサーとは正反対だった。倉庫の外に付けられた点滅している古い電球と十五段積みのパレット。フォークリフトやプラッターが駐車しており、通り風と薄暗さによって不気味さを増していく。
「シュテル、大丈夫なの? 犯罪組織同士が取引しているという噂のある場所だよ」
「ところで、谷村との待ち合わせ場所は?」
「この奥にある七百番倉庫だよ。エリー」
「とにかく、進みましょう」
カリーヌとエリーはそれぞれシュテルとマイケルの腕に強く抱きついた。
「隠れてないで出てきたらどうだい」
気配を察知したシュテルが口に出すと、取り囲むように大勢の男たちが現れた。
「シュ、シュ、シュテル!」
「君たちは、何者だ?」
「俺たちは、谷村様の監視者です」
「どいてよ! 奴と話があるのよ!」
「それは、無理な話です。貴方たちに本物の財閥の素質としてのテストを行います。準備は、できていますか?」
「『本物』って、なにを言っているのよ!?」
監視者は鉄パイプやナイフなどを構え始めた。
「僕たちを倒す気だね」
「どうやら、やるしかないようですね!」
「もうー! 最悪!」
「こいつの言葉が気になるけど、ささっと蹴散らすわよ!」
(なるほど。谷村君、気づいたようだね)
四人は武器を取り出し、戦闘態勢に移った!
「では、テストを開始します」
そう言った真ん中の監視者は鉄パイプで襲いかかるが、シュテルの回し蹴りで吹き飛ばされた。
銃を装備している監視者がカリーヌに向けて発砲。彼女は銃弾を素早くかわして、トンファーを使った炎の魔術で近くにいた敵をまとめて無力化した。
マイケル、エリーも武器や魔術などを駆使して敵を圧倒していく。
「甘いですよ!」
「ぎゃー!」
マイケルによるカウンターのキックを受けた監視者は、五枚重ねの木製パレットに激突し気絶。この一帯の敵を撃破して先へ進むも壁で塞がれていた。向こう側へ行くには、右手にある巨大な丸太の倉庫を通る必要があるようだ。
中に入り、固定ロープで括り付けた十本単位の丸太の入ったかごを尻目に別の出入り口へと急ぐ!
「危ない!」
四人は崩れ落ちる丸太を素早いバク転で回避した。前を見ると監視者を連れた肥満体型の
「君たちは、
「この増田と豊川にその呼び方をするな!」
「すまない。気をつけるよ」
「『気をつける』やと!? 舐めやがって」
「まったくだ! 殺してやる!」
二人はそれぞれナイフと鉄パイプで戦うようだ。
「カリーヌ、シュテル。ここは、私とマイケルに任せて」
「だけど!」
「後で追いつきます! 早く行って下さい!」
「分かったわ。死なないでね」
シュテルとカリーヌは、ここを二人に任せて先へと進んだ
壁の向こう側へ移動した二人。道中、スナイパーや危険な武器で襲われるが、冷静な判断と抜群の戦闘能力で返り討ちにしていく。
「もうすぐだな」
「えぇ、そうね。この道をまっすぐ行くと、七百番倉庫だね」
「それは、どうかしら?」
倉庫の屋根から茶髪の女性が二人の前に降りてきた。
「君も彼の仲間のようだね。谷村の目的はなんだ?」
「谷村に聞いたほうが早いわ。それにしても川田は何処へ行ったのかしら? 後で説教ね」
「谷村と話したいことがあるの! 邪魔よ」
「良いわ、どいてあげる。ただし、シュテルだけね」
「どういうことだ? 普通なら僕とカリーヌを倒すだろ」
「私はね、カリーヌと対決したいのよ。副学園長の娘の実力はどれ程なのか」
彼女はヌンチャクで戦うようだ。
「シュテル、谷村のもとへ行って」
「カリーヌ」
「彼女は本当に私と戦いたいようだし、舐められている。ここは権力や家系に胡坐を掻いていないと証明しないと」
「分かった。負けるなよ」
シュテルは彼女との戦闘をカリーヌに任せて七百番倉庫へ向かった。負けないことを祈りながら。
目的地にたどり着き、重たい扉を開ける。中へ入ると横になっているドラム缶が点々と放置されていた。
「谷村君」
視線の先には谷村がパイプ椅子に座っていた。逆さまのドラム缶の上にペットボトルのお茶と駄菓子があり、もう片方のパイプ椅子は対面する形で置かれていた。
「よぉ。対談しようぜシュテル」
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