第三十八話 対談という取り調べ

「対談だと?」

「警戒するなよ。あんたにはがあってな」

「なんだ? 言ってみろ」

「そう焦るなって。とりあえず座れよ」


 指示に従いパイプ椅子に座った。谷村はドラム缶の中央に小さな電気ランプを置き、明かりを点けた。シュテルは緊張によるものなのか、お菓子とお茶には手を付けなかった。


「すまんな。奴らにお前らを襲わせて」

「悪いと思っているならするな。君の監視者から『』と言われたぞ。どういうことか、説明してくれ」


 すると、谷村は足元に置いたバックから一つの封筒を取り出した。その中から数枚の写真と調査結果の紙をシュテルに見せた。


(やはりな。悪い予感は当たったようだ)

「こんなことをしてたとはなぁ。裏カジノでCSMOシスモの幹部と『聖女の騎士団』ついての会話。賭博していると表に知られたら大変だぜ。スマホの音声データもあるからよ」


 他の写真では四人と専属執事が会話しているものやバー『マルクス』の不法侵入の様子が撮られていた。音声データにはシュテルの執事からの話が録音されていた。

 

「谷村君、僕らのを知っているのか?」

「本名を言っている声が聞こえたから、ある程度見当はついている」

「何が望みだ?」

「俺はお前にがある。それに答えたら口外はしない。但し、嘘を言ったら、ネットやマスコミに流させてもらう。嘘は通じないからな」

「く!」


 シュテルは右手で頭を抱え苦悶の表情を浮かべた。


「こんなのどうやって」

「入学式の翌日から探偵を雇ったのだ。では、質問するぜ。まず、お前がシュテル・アルフォードになった経緯を話してもらうか? カリーヌ、マイケル、エリーもな」

「……始まりは、査定書が渡される日からだ」

 谷村にこれまでのいきさつを話した。大聖堂から現れた青い光は変身する際の魔術によるものだと答えた。


「次の質問だ。失われた四大騎士家について話してくれ」

「アーサーの騎士の力を受け継いでいる集団だ。三百年前に『生命の泉』を巡って、仕えるメイド集団が反乱を起こしたんだ。生き残った両親たちは奴らに僕たちを子孫だと悟られないように、偽名にしたらしい。いつか復活するために」

「そうか。そのメイド集団は今どうなっている?」

「『聖女の騎士団』という犯罪組織になっている。……どうした?」

「なんか騒がしくないか?」

「谷村様!」


 谷村の監視者が息切れを起こしながら入ってきた。


「何事だ?」

「そ、それがぁぁ」

「落ち着いて話せ!」

「それが突然、大勢の警察がなだれ込んで谷村様たちを逮捕するらしいです!」

「「何だと!?」」

 訳の分からない事態に驚く二人。


「何の罪だ!?」

「警察から『外患誘致罪で逮捕する』らしいです。」 

「ふざけるんじゃねぇ! テロを」

「落ち着いて谷村君。とりあえず、カリーヌたちと合流して『アルティメットアーサーハウス』に向かおう。話はそれからだ」

「あぁ、分かったよ」

(まずいな。彼はひどく混乱している。安全なところに避難しなくては)

 谷村とシュテルは倉庫から出ると、上空のヘリがサーチライトを点けながら捜索していた。『倉庫港』の入口方面からメガホンで警告する男性の声が聞こえた。


「谷村寛二、シュテル・アルフォード、カリーヌ・マルース、マイケル・ルイン、 エリー・キャロル、サリー・トルバー、豊川剛、増田圭司。お前ら外患誘致罪で逮捕する! 抵抗するなら相応の対応をとらせてもらう!」

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