第七話 『あいつ』の登場

「シュテル、とても楽しかったよ! ありがとう!」

「それは、こっちのセリフだよ。ありがとう」

「ふふふ」

 カリーヌとの楽しいデートを満喫したシュテルは、入学当日の教室での会話について尋ねる。

「あ! そういや、カリーヌ。あの時に出たって誰?」

「それね……森本太郎だよ」

「森本太郎?」

「うん。そいつは中流階級シルバーランクの奴でね。森本家はマルース家とアルフォード家の事業の下請け。まぁ、とにかく私と君のグループの傘下だね。知っているでしょ?」

「傘下ね……確かにいたな」

 自分のグループ会社に森本という家系があったのを思い出した。

 彼の家系では、財閥階級プラチナランクにとっては、単なる傘下の一部。別に無くてもどうでも良い存在だった。仮にそうなっても、中流階級シルバーランクなんて沢山いる。つまり、悪い言い方で言えば

 しかし、財閥階級プラチナランクになったシュテルは奴隷のような扱いはししない。なぜなら、彼自身も元は平民階級ペーパーランクの中山隆という男だから。

(元の僕がとして見られていると知ったら、子供のように嘆きながら、暴れていただろな)

「ねぇ、ちょっと!」

「これはこれは、お二人さん。デートですかぁ?」

 シュテルは、自分の服の袖を引っ張るカリーヌが指差す方向を見ると、向こうから茶色のベストにジーパンを履いた丸眼鏡の少年と五人の仲間がこちらに近づいてくる。

「シュテル、あいつよ。森本太郎」

「森本、会うのは初めてだね」

「そうですね。確か、シュテル・アルフォード様とカリーヌ・マルース様ですね」

「あぁ、そうだ」

 森本と五人の生徒は、二人の前に立つ。

(なんだ、彼は? 他の連中はともかく、彼だけは敵意に満ちただな。ここは、冷静に対応しよう)

 シュテルは、森本とのトラブルを起こさないよう、に話しかける。

「まさか、この時間帯で会えるなんて、奇遇だね」

「はい。中流階級シルバーランクたるこの森本は、でありますシュテル様、カリーヌ様とお目にかかる機会は無いと思っておりましたが、まさか、このようなところでお会いできるとは光栄です」

「てか、ささっと消えてくれる? あんたの容姿ツラを見ると吐き気がするわ」

「カリーヌ、失礼じゃないかい? 森本に謝ってくれ」

「なんでよ!?」

「カリーヌ」

「うぅ……森本、ごめんね」

 叱られたカリーヌは森本に頭を下げて謝った。

「大丈夫ですよ、カリーヌ様。私たちは偶然お会いできたお二人に挨拶をしたかっただけですから」

「そうか。ところで、森本。これから、彼らと何をするんだい?」

「はい。レストランに行こうと思いまして。男子会を開こうかと」

「男子会か。君は、幸せ者だな」

「ありがとうございます。すみません、私たちは、これにて失礼します」

 シュテルに褒められた森本と五人の生徒は、二人に一礼してからレストランへ向かった。

(彼は、危険なオーラを感じる。必要であれば、専属の監視者に頼むか)

「シュテル」

「カリーヌ、僕たちには監視者がいる。危険な状況になれば、彼らが君と僕の両親に伝えて対処してくれるから、心配するな。それと、失礼な態度をとるな。いくら財閥階級プラチナランクとはいえ、嫌われるぞ。いいね?」

「うん」

 監視者とは、上流階級ゴールドランク財閥階級プラチナランク専属の情報屋である。自分が欲しい情報は、早ければ、二日で手に入れることが出来る。

「さぁ、君の部屋まで送ってやるから行こうか」

 シュテルは、左手で長距離移動魔術を発動し、部屋に到着するまでエスコートした。


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