第8話 月の女神
アテナからは、さっさと番いを作らないのか聞かれているけど。
ゼウスを見てるから、手が早いのが普通という考えがありそうだ。
複数に手を出すのは苦手らしいけど。
アジトに戻る。
細々と暮らすには資金に余裕が出来たので、色々買い揃えた。
家電等はこの世界にはないらしい。
勝手に作って流通させないように、とも釘を刺された。
アジト管理用の端末だけオーパーツ的な感じだ。
本来は神以外は触るの厳禁らしいけど。
アテナは、何とか趣味を見つけようと頑張っているみたいだが、上手く行かず・・・
結局、俺が端末をいじって、神界にアクセス出来るようにして、ちょくちょく仕事を消化しているらしい。
何でも、あまりにも部下が有給を取らないから、上の人が率先して取る所を見せる必要が生じて・・・で、一番働いていたアテナに白羽の矢が立ったそうだ。
有給数千年分消化するまで帰れないらしい。
「アテナ様、また趣味を見つけるのを失敗したのですか?だらだらしないといけないのでしょう?」
「・・・好きに生きるのって大切だと思うんです・・・というかキミのせいで、元の仕事すら少なくなってしまって困っているのですが・・・」
本来はアテナの仕事量は、たまる一方だったのだが・・・
作業内容を聞いて、表計算ソフトで自動で出来るようにしてあげたら、今まで数週間かかっていた作業が数分で終わるようになり、本来たまるはずの仕事すらなくなる状況。
いよいよ追い込まれ、自分のタスクフォルダやメールを何度もリロードするという不毛な作業をしていた。
それで自動で作業するのは魂が籠もっていない、とか言って、手作業に戻る救いのない人もいるけど・・・アテナはそこまでではないらしい。
「ほら、手芸の本とか、編み物の本とか、ペーパークラフトの本とか・・・幾つか買ってきたので。アクアリウムの本も有りますよ?」
アテナの前に買ってきた本を積むと、
アテナはじっと抗議するような涙目でこっちを見た後、手をかざして遠くの風景を見せてきた。
風光明媚な地だ。
植物の配置、水の流れ・・・そこに動く動物も・・・一体となって調和している。
「綺麗な場所ですね。どうされました?」
綺麗だが、意図が分からない。
「・・・試しに作ってみましたが、すぐ出来てしまったのです」
・・・世界規模でアクアリウムを作ったらしい。
流石最高神。
「アテナはいますか!」
不意に、凄い剣幕で女性が・・・女神・・・?が入ってくる。
「・・・あれ、アルテミス、貴女も此処に来たのですか?」
「休暇中に何故仕事してるんですか・・・しかも、効率よく作業進めて、勝手に他の人の作業までして・・・お陰で私まで休暇を取るように言われてしまったじゃないですか!」
「あら・・・それは気付きませんでした。ご迷惑をおかけしました」
アテナがぺこり、と頭を下げる。
「気付かない訳ないでしょう!貴女わざと私の仕事を優先的に潰しましたね?」
すっと顔を背けるアテナ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます