第41話 魔剣

今日はジリアンと二人で。

場所は、何時もとは違うダンジョン。

2時間程歩いた場所にあるダンジョンで、不死系の魔物が多いらしい。

やはり僧侶系のレベル上げの鉄板なのだろうか。


ジリアンは物理攻撃も行うので敵を選ばないが、純粋な僧侶系だとやはり不死系の魔物が楽なようだ。



時々ジリアンがさり気なく距離を詰めるが、さり気なく距離を離す。

別にある程度は構わないのだが、流石に密着するような距離は近い。

リパーのような可愛い女の子なら歓迎だが。

不満気に頬膨らませても駄目だからな?


「結構歩くなあ」


もう1時間程歩いただろうか。


「そうだね。日帰りじゃなく、近くの旅館に泊まって数週間滞在したりするみたい。乗り合い馬車とかも高いしね」


「お金はあるし、そっちの方が良かったかなあ・・・まあでも、いい天気だし、のんびり歩くのも悪くないな」


「うんうん、天気の良い日に運動って楽しいよね!よく男子に混じって助っ人とかしてたよ!」


混じっても何も、お前も男子だからな?


「何か特定の部活には所属していなかったのか?」


「うん。体を動かすのは好きだったけど、特定の何かに打ち込んでる訳じゃ無かったから・・・男子の野球部やサッカー部、女子のソフトボールやバレー部、水泳部・・・色々やったよ」


しれっと女子の部活に混じっとる。


「演劇は助っ人した事あるけど、裁縫部や料理部は駄目だったよ」


最近は裁縫や料理出来る男性がモテるそうですよ。

いや、ジリアンはめっちゃモテてたみたいだけど。


「モテてたのは女子だけになのか?男子からはどうだったんだ?」


「男子からも告白はあったけど・・・興味は持てなくて・・・僕にはあの人だけだったよ」


例の電車で横に座ってたリーマンだな。


「着いたな・・・あれか」


適当に雑談しながら進み、ダンジョンに着く。

ジリアンとの会話は楽しい。

恋愛観はまあ、各人の自由だと思ってる。


「そうだね・・・暗いね、手を繋ごうか」


「ダンジョンの中は明るいし、敵が出た時に反応しにくいから駄目」


各人の自由だと思ってる。


--


「チャージ!」


ゴウッ


魔力を纏わせて突く事で、魔力波を飛ばす。

数体のアンデッドが、巻き込まれて散る。


「憐れみ給え!」


ゴウッ


ジリアンの祈りが、広範囲のアンデッドを浄化する。

やっぱり強いなあ。

ちなみに、浄化しても経験値は入るらしい。


向こうから人が来る。

女性のプリーストのようだ。


「こんにちは〜」


「こんにちは〜」


挨拶を交わす。


ちょくちょく、神聖職とすれ違う。

適正レベルとしては格上だが、特に苦労はしない。


「もう少し下に行くか?」


ジリアンに尋ねると、


「正規ルートから外れちゃ駄目かな?」


「駄目」


マップとサーチがある、リパーかエイプリルが必須だ。

ジリアンと二人の時は、正規ルートのみと決めている。


「むー・・・」


ぷくーとふくれるジリアン。


「行きたいなら、今度リパーかエイプリルを連れてこよう。俺達二人だと、迷ったときに元の道に戻れない」


「そこは・・・勘で」


「無理だな」


出来ない物は出来ない。


「うー・・・オーディンって昔からそうだよね・・・夏の暑い日でもしっかりネクタイ絞めて、スーツ着てさ」


いや、確かに俺は夏も職場の影響でクールビズなんて無かったけど、キミその頃の俺知らないでしょ。

当てずっぽう怖い。


「でも、赤いネクタイが似合ってて格好良かったよ」


・・・確かに赤いネクタイちょくちょくしてたけど。

実は何か別のスキルでも持っているのだろうか。

正体看破的な。


「あ、オーディン、あれ何かな?」


「ん?」


正規ルートの外ではあるが、地面に剣が落ちている。


〈あれは魔剣ですね。危ないから回収して破壊するか持ってきて下さい〉


アテナから念話が入る。

・・・悪魔絡みかあ。


「あれは・・・魔剣だな。危険な感じがするから、回収するよ」


そうジリアンに言うと、近づき、バックパックに入れる。


「危険なんだね・・・ちょっと使ってみたかった」


「駄目」


ジリアンがぷくーっとふくれる。

・・・何か聞いてあげたい気もするけど、無茶ばっかり言うんだよなあ。


「すまない、ジリアン。この魔剣危ないから、早く持ち帰りたい。ここで探索切り上げても良いかな?」


「良いよ。確かにその剣からは嫌な空気は漂っているし」


分かってて使おうとしたのか。


ジリアンと一緒に戻る・・・途中で、商人の馬車が盗賊に襲われているのが目に入る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る