第44話 戦勝パーティー

神々と人間の協力により、各地の石碑を破壊。

同時に、魔剣や魔環の話も周知され、徹底的な破壊が行われた。

日に日に混乱は収まり・・・苦し紛れに行われたフォリテドーテのクランへの襲撃も失敗。


人々の顔からは不安が消え、ギルド職員達の顔からも憂いが消えた。

街には治安が戻り、クエスト一覧からは悪魔関連のクエストが消える。


そう、この世界の神々、そして人々は、アスモデウスの野望を阻止したのだ。


〈あ、ほら、あれはアスモデウスの部下第二席、グレモリー。ああやって世界が救われたと触れて回る事で、人々の喜びを増すと共に、自分の信頼を上げているのです。連れ込んだ人を堕落させたりもしているようですね・・・わざわざあのクラスの悪魔を動員するとは、よほど暇なようですね〉


アテナ様の解説がなければ、俺ももう少し開放感に浸れるのだが。

隣にいるエイプリルも微妙な表情だ。

なかーま。


「ねえ、オーディンさん、聞いてますか?世界が救われたので、ちょっと遠出してみませんか?」


リパーが嬉しそうに言う。

救われてはいないが、俺達がどうこうできる話でも無い。


「そうだな。確かに、色々な場所を見て回りたい気はする」


とは言え、あまりフィールドって稼げないんだよなあ。

稼ぎたければダンジョンに行けって感じで。

もう少し改良してくれても良いと思うんだけど、結局は神々が楽しむのが目的だしな。

近場で遊んでて欲しいのかな。


〈ほら、あの遊技場。あれは闘技場になる予定みたいですね。籠絡した信者と、お金で雇った住民、冒険者を働かせて作っているようです。ぱぱっと作っちゃわないのは、過程を楽しんでいるのでしょうね〉


アテナからの解説は続く。

アスモデウスは何がしたいのか・・・恐らく、安心→絶望への転落を楽しむ為の布石と、堕落させて楽しむ為の計画を、平行して行っているのだろうなあ。


「はい、楽しそうですよね、クリスマスパーティー。ケーキとかチキンとかも売ってるし」


え、何でクリスマスパーティーが出てきてるの?

しまった、アテナの解説とその後思索にふけってて、生返事してた。

内心焦りつつ、エイプリルを見ると、エイプリルが数瞬考えた後、


「ギルドの祝勝パーティーはクリスマスパーティーではないわよ。だからケーキとかチキンが主役ではないわ?でも、きっとケーキもチキンも出ると思うわよ」


エイプリルがリパーに言う。

ああ、ギルドで祝勝パーティーをやるのか。

で、それが何故かクリスマスパーティーになりかけてたのか。

分からないけど分かった気はする。


「パーティーかあ・・・女子だけで集まってるパーティーにはよくお呼ばれしてたけど、日本のパーティーとは全然違うのだろうね。お洒落な立食パーティーとかなのかなあ?」


ジリアンが楽しみな様子で言う。

女子だけのパーティーにナチュラルに呼ばれるんだな。


〈あれがカジノになる予定のようですね。完成したら私達も楽しみましょうか〉


アテナが嬉しそうに言う。

カジノが好きなのだろうか。


〈見た事は有りますが、やったことはないですね。せっかくの休暇ですし、やってみたい気はします。勝利には自信が有ります〉


やー、ニケは反則だと思うけど。


「楽しみですね、霊峰!」


リパーが目をキラキラさせて言う。

え、何それ。

ちら・・・っと、エイプリルに目線を送る。

エイプリルが、


「ギルドに、霊峰に生息する氷王牛を提供し、パーティーを盛り上げる。いい案だと思うわ」


と告げる。

なるほど、そう繋がったのか。


「山に入るなら準備しないとな」


・・・いかんいかん、こっちの話に集中しないと。


〈あ、ヴェルローズの所属クランが壊滅したみたいですね〉


再びアテナの声。

とりあえず後で聞きます。


「え?!」


エイプリルが声を上げる。


「どうしたの、エイプリル?」


ジリアンが不思議そうに尋ねる。

エイプリルどうしたんだろう・・・待て、今アテナ何と言った?!


〈ヴェルローズの所属クランが、アスモデウスにより壊滅しました、と言いました〉


情報増えてないですか?!

もうはいって来ちゃったのかあ・・・


〈・・・実は、神々には教えていなかったのですが・・・アスモデウス達は、やられているふりをしていただけで、実際にはやられていないし、アスモデウス自身も何時でも入れる状態だったのですよ〉


知ってましたよ?!


街が突如騒ぎ出す。


「え、何、どうしたの??」


リパーが泣きそうな顔で抱きついてくる。


「大丈夫だよ、リパー」


頭を撫でてやる。

まあ、戦勝パーティーとやらは無くなっただろうな。

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