第71話 悪魔の王
「ご主人様、悩んでおいでですか?」
メイド・・・ストラスの部下が心配そうに話しかけてくる。
最初はストラスが家事をしていたのだが、俺と一緒に外出する事が多く、またアジトが異常に広くなったため(絶賛拡大中!)、ストラスの部下が家事を担当している。
主に見るのは、男性2人、女性2人。
それぞれ、執事姿とメイド姿で、またそれが似合っている。
名前を尋ねてもはぐらかされるし、強さは分からない。
「いや、特に悩んでないよ」
嘘だ。
最近、エイプリルの顔がまともに見れない。
頑張って平静を装うのだが、目が合うと今度はエイプリルが視線を外す。
嫌われてはいないと思いたい。
「そうですか?こう見えて、私は恋愛相談が得意で、良く同僚の相談に乗るんですよ」
「恋愛相談なんて別に・・・」
「そう、例えば、リパー様やジリアン様の告白に対する時間稼ぎの為にエイプリル様との間に偽装の恋人関係を結んでいるのに、エイプリル様への恋心に気付いたとか、そういった悩みとか無いでしょうか」
「的確ですね!」
・・・心を読んでいるのだろうか。
「証拠も無しに、心を読んでいるとか決めつけるものではないですよ。失礼ながら、ディーン様はすぐ顔に出ておられますし、態度も分かり安いので・・・」
・・・そうだな、決めつけは良くないよな。
「はい。その態度を拝見したところ、私の推測は当たっているようですね。どうでしょうか?相談に乗りますよ」
話は変わるけど、今日の天気はどうかな?
「今は晴れていますが、午後からは天気が崩れますね。宜しければ快晴に致しますが」
ところで昨日エイプリルと挑戦した昇格クエストの攻略法なんだけど。
「あのキノコは、マップ右下の林に隠れるように群生しております。分かりにくいですよね」
「いや、心読んでるだろ?」
そこまで詳しく態度に出てたまるか。
「・・・嵌めましたね・・・!流石です、ディーン様」
メイドは、すっと真面目な顔になると、
「まあ、冗談はさておき。心配なのは事実なのです。後悔なさらない選択をされると良いですよ。私は常に全力全開で恋に生きております。だからこそ、色々な方から恋愛相談されるのです」
経験豊富、と言う訳か。
「なるほど・・・分かった、頑張ってみる」
ふと気になって、
「そう言えば、恋に生きている・・・貴方にも好きな方が?」
「はい、私はかれこれ3億年、ルシファー様一筋で生きております!」
・・・大物来たあああああ!
「・・・そんな大物だと、確かに恋が実るのは難しいだろうけど・・・」
「そうなのですよ・・・なので、かれこれ3億年、思いを告げられずにいるのです」
「全力全開じゃないじゃ無いか!」
「失敬な!ちゃんとルシファー様に近づく害虫共をすべからく亡き者にしています!ああ・・・憎い憎い・・・」
「本人にちゃんと思いを告げろよ!」
「私とルシファー様にどれだけ身分差が有ると思っているのですか!しかも、ルシファー様がどれだけモテると思っているのです!私の様な木っ端が近づいていい存在では無い!」
「・・・そのルシファーとやらには会ったことがないが・・・例えば、主人であるストラスを介して連絡を取って貰うとか・・・」
ストラスとルシファー、どっちも大悪魔だろうし・・・まあ、地位の差はかなりあるのかも知れないけど。
「・・・ルシファー様とディーン様は良く話しておられますよね?流石に同僚ですし、ストラス様を間に挟まなくても?」
きょとん、とするメイド。
ん?
「俺が話した事がある悪魔なんて限られているんだが・・・良く話すとなると、それこそストラスの部下の4人・・・同僚・・・」
まさか。
「・・・おい、執事の一人、まさか・・・ルシファー・・・?」
「今更何をおっしゃっているのです?あそこまで完成された美を誇る存在が他にいてたまりますか」
「いや、なんでストラスなんかの部下をルシファーがやってるんですかね!」
ルシファーって、思ったより階級低いのだろうか。
魔界の順位付けってどうなっているのか。
「ほーほー、悪魔間の順位って結構適当に決まるんですよ。例えばジャンケンで決まった事も有ります」
ストラスが羽をバタバタさせて鳴く。
確率が絡む戦いとか得意そうですね!
「つまり、ルシファーも、悪魔の最上位って程ではないという事か?」
「最上位、ではないですね。序列0位のストラス様、序列1位の我々四天王、序列2位以下の悪魔達・・・」
待って欲しい。
ストラスの羽をみょーんと伸ばし、
「序列0位ってどういう事だ?」
「あれですね、人間に仕えるような悪魔が悪魔間の序列に列せられるなど恥。序列を決める際は例外枠とする、その為の序列0位、とかそういう説明で納得して頂けますでしょうか?」
「それは確かに説得力が有るが・・・事実か?」
「いえ、悪魔間で順位付けの3本勝負を行い、1番勝った者が序列0位となります」
何故嘘をついた。
みょーん、みょーん。
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