第72話 決心

「や、さっきも言ったように、3本勝負の内容が適当なんです。ジャンケンとかババ抜きとかクジとかSSR幾つ出るかとか」


「・・・なるほど、必ずしも強さを表さないという事か」


「ちなみに」


メイドが口を挟む。


「最後の順位付けの内容は、魔力放出量、魔法構築速度、魔法構成精緻さ、の3本となります」


みょーん、みょーん。


「ガチっぽいじゃねーか」


「いたた・・・偶然ですよ偶然」


まあ、偶然なら・・・


「尚、ストラス様は順位付け開始以来、全ての勝負で無敗となっています。最近では挑戦すら行われません」


みょーん、みょーん。


「何故そんな存在が人間に誓約誓ってるんだ」


「いたた・・・フクロウ虐待反対ですって」


「えっと、それで・・・」


メイドに向き直り、


「貴方も、高名な悪魔か?」


「いえ、私だけは知名度が低いですね。他の四天王は、ルシファー様、ベルゼブブ、ベヒモス・・・名を聞いた事はあるかと」


「確かにその3つの名は聞いた事が有るな」


「ええ、ですから、この私の名、レヴィアタンを明かすとがっかりされると思うので、私の名を明かすのはご容赦下さい」


「明かしてるし、十分有名だけどな」


むしろストラスの名前知らない人が殆どかと。


「そんな事有りませんよ。もし仮にこの世界を見る第三者が居れば、ストラス可愛いというコメントで溢れる筈です」


「良く分からん例えをするな」


取り敢えず、ストラスの部下4人が異常に強い事は分かった。

そして、ストラス自身は更に強いようで。

過去遡行する3人のうち1人なのも頷け・・・待てよ。


「おい、ストラス。序列0位の悪魔ってお前だよな?」


「はい、残念ながら」


「過去遡行するって言ってた3人のうち、2人がお前じゃないか?」


「おお!言われるまで気づきませんでした、流石旦那!」


・・・疲れた。


「疲れたなら肩をお揉みしましょうか?」


ふか、ふか、ふか・・・

フクロウの姿のまま、羽で肩を揉む真似をするストラス。

当然揉めてない。


レヴィアタン・・・七つの大罪の一人、嫉妬を表す悪魔。

恋愛相談をする相手でもないとは思う。


「しかしですね・・・3億年後悔し続けるよりは、告白して幸せになった方が良いですよ?今のままの中途半端な状態だと、みんな幸福にはなりません。・・・と言うと、大抵の人は行動に出られますね。そして皆さん成功して幸せになっておられます。実に恨めしい」


さらっと嫉妬を吐露しておられる。


「それに・・・中途半端な状態でいるのは、相手も幸福にはなれません。相手の幸福の為にも、行動される事をお勧めします」


・・・確かに・・・その結果がどちらに転んでも・・・

このままだとどうせ、友人のふりを続けるのも難しいと思う。

その結果引かれても・・・覚悟を決めよう。


「有り難う」


「いえ、私はストラス様の部下、貴方のメイドで御座います」


ぺこり、とレヴィアタンが頭を下げた。


--


「エイプリル、話がある」


俺は心に決め、エイプリルに話しかけた。

リパーやジリアンと約束した時間より2時間は早い。

朝食を終え、寛いでいるところだ。


いつもは同席しているアテナやトールも、今は居ない。

どころか、どこにでもついてくるストラスも、その部下も居ない。


・・・いや、絶対わざと二人きりにしたんだろうな。


「何?」


エイプリルがきょとん、としてこちらを向く。

落ち着かないように見えるのは、ストラス等、何時も一緒にいるメンバーが今日に限っていないせいだろう。


「偽りの恋人の関係を解消して欲しい」


「ん、分かったわ」


微笑み、承諾するエイプリル。

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