第73話 黄身か白身か
「その上で、正式に俺と付き合って欲しい」
「良いけど、何処に?リパーかジリアンか決めたの?」
小首を傾げ、尋ねるエイプリル。
「そうじゃなくて、俺の彼女になって欲しい」
「彼女のふり、を辞めて、また彼女のふりをするの?」
意図が分からない様子で、可愛らしく思案するエイプリル。
「ふりじゃなくて、正式に付き合って欲しい」
「・・・それはさっき承諾したわ・・・?」
珍しく怪訝な顔をするエイプリル。
く・・・
「エイプリル、君が好きだ!」
「そう、私はどちらかと言えば白身が好きよ」
「分かるよ、ゆで卵でも、目玉焼きでも、白身が美味しいよね」
気が合うなあ。
「かと言って、黄身を取り除いて白身だけ渡されても何か違うのよね」
そうそう。
「うどんとかに入っているときは、黄身が美味しいんだけどね」
「そうよね、最初は割らずに、埋めておいて、最後の方でパクっといくのが」
「うんうん。後は、牛丼も黄身が美味しいかな」
「牛丼?食べてみたいけど、食べた事は無かったのよね・・・」
「・・・お嬢は、社長令嬢だったものなあ・・・」
「その気になれば食べる機会はあったのだけど。結局食べないままになってしまったわ」
「アテナ様達に頼めば食べられそうだけど」
「そうねえ」
エイプリルとの雑談は楽しい。
何時までも話していられる。
結局、出かける時間間際まで、楽しく雑談を続けたのだった。
--
〈本題逸れてますよね?〉
突然、アテナの声。
何の話だろう。
・・・
ああ?!
「エイプリル!」
「ん・・・ああ、もう出ないといけない時間ね」
「違うんだ!」
「違わないわ?!」
エイプリルがびっくりした顔をする。
「エイプリル、俺の恋人になって欲しい。偽とかじゃなく、本物の恋人に。俺は、君の事が好きだ」
エイプリルはきょとん、とした顔をすると、
「・・・ごめんなさい、何を言っているか分からないわ?」
ぐふ・・・
脈ゼロっぽい。
でも・・・リパーやジリアンも頑張ったんだ。
俺も頑張って伝えないと。
エイプリルの肩を持ち、顔を近づけ、
「エイプリル、お前の事を愛している。嘘じゃない、心の底からエイプリルが好きなんだ」
エイプリルは訝しげな顔をした後、自分の頬をつねる。
「痛っ・・・」
かなり強くつねったらしく、声をあげるエイプリル。
そして、
「えっと・・・私・・・告白・・・されて・・・る?」
「ああ」
エイプリルは泣きそうな顔をすると。
「・・・夢・・・じゃない・・・?だって・・・私・・・だよ?」
涙目でこちらを見上げつつ、言うエイプリル。
「どっきり・・・よね?」
「違う、俺はエイプリルが好きだ」
エイプリルは顔を真っ赤にし、震える声で、
「何・・・で・・・?だって私・・・リパーみたいに可愛くないし・・・ジリアンみたいにコミュ力ないし・・・・二人よりおばさんだし・・・選ばれる訳ないのに・・・」
「俺はエイプリルが好きなんだ」
エイプリルをそっと抱き寄せる。
エイプリルは抵抗しない。
ややあって、エイプリルは呟いた。
「よろしく御願いします」
--
すっかり遅れてしまった。
エイプリルは少し落ち着き、着替えてから来るらしい。
リパーとジリアンは当然、既に着いている。
「遅いですよ、ディーンさん!」
「遅いよ!」
リパーとジリアンの抗議。
「悪い悪い」
リパーがきょとんとして、尋ねる。
「エイプリルさんもまだなのですが、ディーンさん何か聞いてますか?」
「ああ、エイプリルは少し遅れてくるらしい」
「・・・ふーん、エイプリルの事情も知ってる、流石だね」
ジリアンが半眼で言う。
いや、聞いたのあんたらだろう。
「それよりディーン、君に聞きたい事があったんだ」
ジリアンが切り出す。
「何だ?」
「リパーと話あったのだけど・・・エイプリルとディーンが付き合っている・・・あれは嘘だったんじゃないかな?偽装恋人、だったと思うけど、どう?」
「その通りだ、良く分かったな」
やれやれ、ばればれだったか。
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