第74話 不安
「つまり・・・私達が付き合う上で障害はない筈、です。改めて御願いします。私達と付き合って下さい」
リパーがキッとして、言う。
「すまない、それは出来ない」
俺も、はっきりと言う。
「俺はエイプリルが好きだ。だから、お前達とは付き合えない」
「うっ」
リパーとジリアンが呻いて、下がる。
「偽装だったんじゃないんですか?」
リパーが尋ねるが、
「偽装だったけど、本当の想いに気付いて、さっき告白した」
「・・・正直、エイプリルとディーンのやりとり見てて思うけど・・・流している感じで、軽い感じだよね。恋人って感じではないと思う。エイプリルはそういうのに興味ない、違う?」
ジリアンが尋ねる。
それは・・・自信がない。
「・・・いつか振り向かせるよ。頑張るさ」
今は友情が勝っていても、何時か。
「お待たせ、遅れてごめんなさい」
エイプリルの声がする。
白を基調とした清楚な格好。
何時もの余裕は感じられず、ちょっとおどおどした様子。
・・・が、それがまた可愛い。
「エイプリル、その格好も可愛いね」
「わわ・・・はう・・・有り難う・・・」
真っ赤になって俯く、エイプリル。
ちょこ、ちょこ、と俺の横に歩み寄ると、
「えいっ」
声を出して、俺の腕を掴む。
ちょこ、とリパーとジリアンを上目遣いに見て、
「えと・・・色々とごめんなさいね。ディーンと付き合う事になりました」
「・・・え・・・あ・・・はい」
「あ・・・うん・・・」
何時もと様子が違うせいだろう。
戸惑った様子のリパーとジリアン。
クエストは、樹海の調査。
植物系の魔物がメインのマップだ。
戦闘時は何時もと同じ、むしろ何時もより頼もしい。
俺の攻撃をサポートしたかと思えば、ジリアンの攻撃に魔法を乗せ、リパーに忍び寄っていた蔦を炎上させる。
逃げる敵を炎の壁で阻止し。
推理を働かせ、謎を解いてクエストポイントも稼ぐ。
「えいっ」
隙を見て俺の背中に抱きついてきたり、
「こーら」
目を釣り上げ、俺に抱きつこうとしたリパーを持ち上げたり、
そんな可愛い面も見せつつ。
クエストは無事大成功。
そして・・・
「・・・負けました・・・ディーンさんは諦めます・・・」
「・・・でも・・・何時の日か、ディーンさんがハーレムに目覚めた時には是非・・・」
クエストは大成功したのに、リパーとジリアンがしょんぼりしていた。
エイプリルが手を合わせ謝る。
「ごめんなさいね、私はやっぱり怖いから・・・自分に自信がないから、ディーンが2人とも付き合ったら・・・私からすぐに心が離れてしまうと思うの・・・私には、可愛さも、若さも無いから」
「・・・むしろエイプリルに勝てる要素が何も思いつかないんだけど・・・」
ジリアンが呻く。
「ううう・・・ずるいです・・・私はずっとアプローチしていたのに・・・エイプリルさん、最後の最後まで何もせず、全てを持って行きました・・・」
「・・・何で気付かれていないのか分からないのだけど・・・私は最初からずっとアプローチし続けていたけど、全てスルーされていただけよ?」
これはエイプリルの
エイプリルが俺に恋愛的アプローチをした事は告白までは1度も無い。
俺は結構敏感な方なので、もしエイプリルがそういった態度を見せていれば、見逃していない。
しかし、こう言えば、相手は黙らざるを得ない。
やった事、の証明は出来ても、やっていない事、の証明は出来ないのだ。
ともあれ、リパーとジリアンも認めてくれたようだ。
「それでは、解散しよう。お疲れ様」
俺が締めの言葉を口にする。
「うう・・・お疲れ様です・・・」
リパーがぐったりとして言う。
「気が変わったら言って欲しい」
ジリアンが言う。
「変わらないよう努力するわ」
エイプリルが言う。
3手に別れ、帰還。
2人が見えなくなった頃、そっとエイプリルを抱き寄せた。
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