第53話 その目が黒い内は
天界。
巨大な神殿だ。
移動は一瞬だった。
「さあ、私は帰って来ましたよ!」
アテナが嬉しそうに言う。
「ほーほー。ここが天界。神の最高執行機関で、設立以来、一度も悪魔の侵入を許した事が無いのです。ほーほー」
ストラスは流石に何時もの姿ではなく、白いフクロウ姿になり、俺の肩に乗っている。
とりあえず、その歴史は今崩れたからな。
アテナがぶつぶつ呟きながら歩いている男神に声をかける。
「おや、クロノスじゃないですか。お久しぶりです」
「・・・?キミは・・・アテナ?どうして天界に?休暇中の筈では・・・」
「休暇の延長ですね。ちょっと遊戯関連で必要な事が生じて、その関連です」
「成る程。仕事ではないのなら構わない。休暇中の神が仕事していては、周りに示しがつかんのでな」
「それより、どうかしたのですか?仕事中でしたか?」
「うむ・・・その・・・何というか・・・」
「時間遡行者は見つかりましたか?」
「・・・?!何故キミがそれを・・・?」
「小耳に挟んだだけです」
「うむ・・・恥ずかしい事だが、取り逃がしてしまってね・・・一応、対象は絞れているのだが・・・恐らく、かなり高位の神か・・・悪魔・・・アスモデウスだろうか・・・」
アスモデウスは今忙しいぞ。
「だが、心配は要らない。我はこの目でしかと、奴の気配を記憶した。もし奴が近くに来れば・・・いや、かなり遠くても、絶対に分かると確信している」
うん、超間近にいるけど分かってないから、多分その範囲は結構狭いと思うぞ。
「ほーほー」
「おや、可愛いフクロウだね。フクロウはいいね。癒されるよ」
クロノスがストラスを撫でる。
ストラスがほーほーと羽をばたばたさせる。
「賢いフクロウだね」
狭すぎるだろう。
接触してても駄目なのかよ。
「さて、執務中なので失礼するよ」
クロノスが立ち去る。
しばらく行くと、別の男神に出会う。
「キミは・・・アテナ。何故此処に?」
「ウラノス、久し振りですね」
「まさか休暇も明けていないのに戻ってきたのでは無いだろうな?」
「いえ、趣味の延長線上で、ちょっとやる事が出来まして」
「ふむ・・・なら良い」
鷹揚に頷くウラノス。
「彼はウラノス、この天界を護る神です。今日までは一度も悪魔の侵入を許さなかったのは、彼の守護がそれだけ完璧だったからです」
「私の目の黒い内は、悪魔の侵入どころか、近づけもさせぬ」
あんたの目は蒼いよな。
「・・・ん、アテナ、今過去形にしなかったかね?」
ウラノスが訝しんで問う。
「気のせいですよ」
「うむ・・・気のせいか。まあ、悪魔が天界に近づいただけで確実に分かるし、我が防衛兵器群の餌食となるだけであるしな」
「ほーほー」
「おお、可愛いフクロウであるな」
「ほーほー」
「うむ・・・賢い、良いフクロウだ」
それは定番の持ちネタか何かなのか?
あれだろう。
絶対に俺がツッコムのを待ってるだけだろう。
ツッコンでやるもんか。
ウラノスと別れ更に進むと・・・そこは修羅場だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます