第52話 ファッションショー

「・・・まあ、せっかく買ってきてくれたし、やろうか。エイプリルを呼ぼう」


「姉御ですね。分かりました」


スッ


ストラスの姿が消える。

呼びに行ったのだろうか。


スッ


ややあって、出現する。


「旦那、リパー殿とジリアン殿に、姉御が旦那の家でいちゃつくと教えてきました!」


何でそんな意味のない事したの?!


「あいつらには、テレビとか見られるとまずいんだが・・・来たら隠さないと」


「大丈夫です!二人とも臨時PTに参加してダンジョンに潜っています。来たくても来れません!」


だから何で教えた。


「で、エイプリルは?」


「旦那が大事な話が有るって伝えておきました!」


いや、ゲームするから参加して、と普通に誘えよ。


ややあって、エイプリルが到着。

何時もとは違う、綺麗な衣装だ。

こうやって見ると、女の子なんだなあって思う。


「やあエイプリル。今日は何時もにも増して綺麗だね。凄く可愛いよ」


「ん。有難う。自室で一人ファッションショーしてる時に呼ばれたから、そのまま来たの。大きいテレビね、良いわね」


エイプリルはそう言うと、ゲームの箱を手に取り、見る。


「うん、これ発売楽しみにしてたのよね。まさかこの世界で見るとは思わなかったわ。私が呼ばれたのは人数合わせ?」


「ああ。アテナ様にゲーム体験してもらおうと思ってな。それに、エイプリルと一緒にゲームやりたいしな」


「ふふ。サポートは期待してくれて良いわ」


エイプリルが微笑む。

よほど自信が有るのだろう。

誘って良かった。


「このコントローラーというのを使って操作するのですね」


アテナがコントローラーを持つ。

初プレイではまともにプレイするのは難しいが、雰囲気は掴めるだろう。


「ガンランス派なんですよね。ちゃんと有りますかね」


・・・本当にやった事無いんだろうな?


プレイは順調に進む。

エイプリルが上手いのは当然として、アテナもストラスも上手かった。


「なるほど。これが採取の楽しみ、ですか。良く分かりました」


アテナが頷く。

分かってもらえて何より。


「素晴らしいですね。いやあ・・・旦那もこれから大変ですね」


ん?

俺が大変?


「そうですね・・・挨拶回り等で時間使うでしょうし、明日の昼ですかね」


「何の話でしょうか?」


状況は分からないが、嫌な予感がする。


「時々ここに遊びに来て、これ使わせて頂いても良いかしら?」


エイプリルがマイペースに言う。


「姉御も一緒に行くんですよ?」


「・・・用事を思い出したわ」


エイプリルが立ち上がる。

何となく状況が見えてきた。

何かに巻き込まれつつある。

そして、俺は拉致られるのだろう。

何故。


エイプリルが、さっきまで扉があった場所、現ただの壁をぺたぺた触る。

物質改変なんて、言葉を発する必要も無いですか。


「出掛ける前に、みんなに挨拶しておきたいわ?」


「はははっ、引き篭もりのゲーオタコミュ障に挨拶する相手なんて居る訳ないじゃないですかっ」


ストラスがほーほー笑う。


「リパーとか、ジリアンとか」


「その辺りは、先程ここに来たけど、またすぐに出ましたね。位相がずれた無人の建物に入り、書置きを確認して呆然とした後、何やら慌てて出て行きましたよ?」


お前等のせいじゃないか。

一体何を書いていたのか。

と言うか、さっき挨拶回りを許す的な事言ってたじゃないか。


エイプリルは溜息をつくと、ゲームに戻った。

諦めたようだ。


「結局、どういう事なのでしょうか?」


俺が尋ねると、アテナが答える。


「天界には、複雑な仕組みを作れる人が居ません。作業を助ける必要が有ります。故に、私達は天界に、仕方なく一時帰還します」


なるほど・・・

まさか、天界戻る言い訳にする為に嵌められたのでは?


「私は自分の作業をしますので、オーディンとエイプリルさんはシステム構築の支援をお願いします」


「・・・分かりました。出発は明日の昼でしたっけ?」


「位相をずらした影響で、時間経過が早くなり、既に出発時間になりました。行きますよ」


詐欺だ。


まあ・・・行きますか。

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