第28話 真の宝物

訓練ダンジョンに着く。


「・・・これ、アテナ様が即席で創ったダンジョン?結構自由に力振るっているのね」


「なんか、頼られると嬉しいみたいだね」


「まあ、行きましょう」


中に入ると、最初の部屋は、的に翼が生えて飛んでいて、床がベルトコンベアで動いている。

弓の訓練に似てるけど、錫杖で?


ひゅっ


エイプリルが錫杖を降ると、錫杖から光が飛び、的を射抜く。


「遠当て的な物か?」


「ええ、そんな感じね」


ヒュン ヒュン


次々に的を射抜き、扉が開いた。


次の部屋は・・・7×7マスの黒白パネル。

・・・これは面倒だ。


パコパコ


流れる様にタッチしていき、全て黒くした。


「すご・・・早いな」


「全部白だともう少し手順少なかったのだけど。黒が好きなので黒にしたわ」


「3×3くらいならいけたけど、このサイズは俺では難しいよ」


「私は引き篭もりゲーマーだったしね。ゲームくらいしか取り柄無かったから」


「俺は半引き篭もりかなあ・・・会社行って、夜はゲーム三昧」


「最初は驚いたし、元の世界も気になったけど・・・なんだかんだで楽しめてるわよね」


エイプリルがくすっと笑う。


3つ目の部屋。

飛んでくる玉を弾き、扉の上の穴に入れていく。


4つ目の部屋。

1マスだけ空いた12×12のパネルがある部屋。

杖で空いた場所に隣接したパネルを叩くと、そこにパネルが移動。

流れるような手順でパネルを動かし、絵を完成させた。


5つ目の部屋。

棒を持ったスケルトン。


「・・・多分、魔法で倒すとかは駄目なのよね?」


「恐らく」


パシッ パコッ


打ち合い、杖を飛ばしてから、頭を飛ばすと、動かなくなる。

都合10体。

扉が開く。


「まだ有るのかしら?結構長いわね」


「今までで最長かな」


次の部屋。

暗い部屋だ。


錫杖の先に魔力を集め光を放つが、せいぜい20センチ程までしか照らせない。

光を吸収しているようだ。


「ダークゾーン、ね」


「また面倒な・・・手探りで行くしかないな」


「行くわよ」


エイプリルが俺の右手を、左手で掴む。

錫杖で先を確かめながら歩いていく。


「・・・吊り橋が有るわ。気を付けて」


もうどういう構造なのか・・・


「オブジェクト探知の魔法が無効化されるので、詳しくは分からないけど・・・多分、今の所一本道だと思うわ」


「もう錫杖関係ないような・・・」


しばらく歩き、ようやく扉に到着。


『汝の証を示せ』


とプレートに記載され、ハート型のマークのプレートが付いている。


「これって・・・暗闇、吊り橋・・・アテナ様の狙いは分かった気がするわ?」


「多分そうだろうなあ」


俺とエイプリルを番いとか言ってたから、俺とエイプリルをくっつけようとしているんだろうなあ。


エイプリルはプレートをつんつん、と錫杖で突くが、反応はない。


「ここまで来て帰るのも消化不良ね」


「そうだなあ。具体的に何をするか、ヒントが有れば・・・」


他に何かあったっけ?

途中の壁とか見ながら引き返すか?


エイプリルがつっとこっちに寄ってきて、自然な動作で俺の頬に軽くキスをする。

・・・?!


ガガガ


扉が開いていく。


「開いたわ?」


「お、おう。行こうか」


エイプリル的には、挨拶程度のノリなのだろうか。

まあ、エイプリルが気にしていないのだ。

気にしなければいい。

無論嫌では無いし。


次の部屋には、大きな宝箱が置いてある。


「ようやく最後の部屋か」


「長かったわね・・・付き合ってくれて有難う」


「構わないよ・・・むしろ、自分の主神に付き合って貰った気がするよ」


「そんな事無いわ?これでレアアイテムをもらえるのでしょう?」


「・・・開ける前にハードル上げるのはやめてくれ・・・」


エイプリルが錫杖をかざし、


「ノックノック」


宝箱が光に包まれる。

ゆっくりと宝箱が開く。

罠の解除と解錠かな?


中には紙が入っており、


<おめでとう。ここまで辿り着いて得られた絆こそが真の宝物だ>


おい、アテナ。


エイプリルは無言で紙を拾い上げると、無言で火の魔法を行使、紙が燃え上がる。


トントン


錫杖で箱の底を叩き、


「フロート」


箱の底が浮かび上がる。

二重底か!


下から古びた錫杖が出てきた。


「アイデンティファイ」


名称:

 古びた錫杖

説明:

 古びた木製の錫杖。

 破損しない。

 先端の輪は神銀ミスリル製。


「・・・破損しないし、悪く無い気はするけど、いまいち強そうな説明では無いわね。デザインも悪く無いし、別に良いのだけど」


微妙な表情で錫杖を拾うエイプリル。


「有難う、オーディン。この錫杖は頂くけど、何か御礼をしたいわ?」


と言っても、その微妙な杖だし、そもそもうちの主神に付き合って貰っただけだし。


「御礼は要らないよ、さっき扉の前で貰ったからね」


冗談でお茶を濁す。


エイプリルはくすっと笑うと、


「あんな物が御礼で良いのなら、また何か付き合って貰うわ」


そう言い、脱出ゲートに向かって歩き出す。


「貴方もそのうち何かダンジョン用意されるのかしら?」


「俺は槍があってるし、この槍便利だしね。無いと思うよ」


「確かにそうね」


用意するならオーディンなのかな。

そんな事を考えながら、俺も脱出ゲートに向かって歩き出した。

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