第27話 なるなる

「オーディン。リパーとジリアンから聞いたわ?オーディンとの秘密特訓で凄く強くなったそうね?」


エイプリルが正しいような正しくないような事を言う。


「使っていた武器種が合ってなかったから、一緒に考えただけだ」


「私には何かないの?」


・・・他のメンバーはそれぞれ別の神に教えて貰ってるし・・・

エイプリルは一応、アルテミスに魔法は習っているのだけど。


「錫杖・・・とか?」


アテナが使えるかも知れない。

聞いてみよう。


「・・・普通ね。スタッフと変わらない気がするわ。でも、面白そうだから御願い」


「うん、聞いてみるよ」


--


「貴方の主神、ネイムレス様かあ・・・身近な所に依頼するのね」


エイプリルが微妙な顔で言う。


「ネイムレス様は、錫杖の使い方が上手いから・・・きっと上達出来るよ」


またダンジョンとか作るのだろうか。

そしてチート武器を手に入れるのだろうか。


「まあ、貴方の事を信じるわ」


アジトにエイプリルを連れ帰る。


「ようこそいらっしゃいました、エイプリルさん。オーディン、キミはエイプリルさんを番いに選んだのですね?」


「いや、エイプリルは仲間であって、そういう関係じゃないから」


「あらあら・・・」


もうなんかお節介なおばちゃんになってる気がする。


「ネイムレス様、本日はお時間を取って頂き、有り難うございました」


「いえ、どうせ暇なので大丈夫ですよ」


真面目に暇を満喫している。


「竹で出来た錫杖があるので、これを使って下さい」


箱一杯の錫杖を持ってくるアテナ。

恐らくチート性能は付いてない、ただの錫杖だろう。


「はい、有り難うございます」


錫杖を受け取るエイプリル。


その後は、他の神と一緒だ。

錫杖への魔力の込め方、扱い、藁人形で試し・・・


時々ジリアンに付き合わされて走らされているらしく、エイプリルの動きは少しずつ良くなっている。

だが、錫杖の動かし方は、洗練されているというには程遠かった。

少しずつ練習するしか無い。


一方で、魔力の込め方は流石だ。

一撃一撃が、光を放っている。

無駄に垂れ流れている訳でもなく、純粋に衝撃となった後、魔力の形で四散している感じだ。


「うん、素晴らしい動きね、後は実戦で学びましょうか」


アテナが言う。

訓練ダンジョンかな?


「有り難うございます。オーディンから聞いていましたが、本当に錫杖の扱いが上手いのですね。また次の機会にも教えて下さい」


「あら、有り難う。私と言えば普通盾なんですけどね。錫杖も結構なものなのですよ」


「私と言えば盾・・・?アテナ様・・・?」


おい、アテナ。

エイプリルがきょとん、としてその名前を口にした。


「・・・な・・・何を・・・言って・・・る・・・のかし・・・ら・・・?」


アテナの目が超泳いでいる。


「お、おい、エイプリル。不敬だぞ。神に別の名を出すなんて・・・ネイムレス様に失礼だろ」


「そ、そうですよ、私はアテナじゃないですよ」


「・・・え・・・でも、アテナ様じゃなければ、アテナ様を呼び捨てにしないですよね」


・・・やだ、この子怖い。


「そっか・・・錫杖・・・ニケですか・・・成る程」


「や・・・槍も使えます・・・よ・・・?」


アテナが誤魔化しになってない発言をする。


「えっと・・・何か事情があって隠されている感じで・・・すか・・・それで偽名を名乗られていましたか・・・?ネイムレス・・・名前無し、なんて、疑わしい名前ですが・・・」


やめてあげて。

もうアテナのHPはゼロですよ。


アテナは溜息をつくと、


「分かりました・・・全てをお話します・・・」


アテナがエイプリルに説明する。

この世界が低級神のレジャースポットである事、最高神である自分が居ることがばれたら色々良くない事、エイプリルの主神がトールであること(おい、ばらすなよ)・・・・


「・・・時々振ってる雷出す槌が気になっていたのですが・・・やはりトール様だったのですね・・・」


エイプリルが納得した、というように言う。

おい、トール。


「オーディンも、知ってたんだ?」


「まあな」


「成る程・・・」


やだ、この子怖い。

そこは空気読んで色々気付かないって場面じゃないのか。


アテナが告げる。


「そういう訳なのです・・・ですので、この事は秘密にして貰わなければなりません・・・そして・・・」


アテナがきっと、エイプリルと俺を見据え、


「秘密を広がる危険を最小限にする必要があります・・・オーディンはエイプリルと番いになりなさい」


「・・・いや、それは関係ないのに、勢いで言ってるだけですよね?」


俺が尋ねる。


「私は言いふらしたりしないですよ?」


エイプリルも困ったように言う。


「・・・と、とりあえず練習ダンジョンは作ったので、気が向いたら行くように」


アテナはそう言い、誤魔化すように中に入ってしまった。


「練習ダンジョン・・・付き合ってくれる?」


「いいよ、他の連中のにも付き合ったしね」


「・・・他の2神も怪しいなあ・・・」


エイプリルが他の2神の正体に気付くのも時間の問題な気がする。

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