第66話 夜の散策

夜。


ジャッ


飛び上がり、ティラノサウルスの頭を貫く。


ゴウッ


尻尾が飛んでくるので、槍を離し、飛び降りる。


ドッ


一角の恐竜が突進してくる。

躱し、貫く。


ゴウッ


ティラノサウルスが炎を吐き、俺が炎に包まれる。


ボウッ


エイプリルの放った回復魔法が俺を包む。


ガンッ


俺が投擲した槍がティラノサウルスの頭を縫い付けた。


ビキッ


エイプリルの放った氷の槍が、ティラノサウルスを滅多刺しにした。


エイプリルが、倒れた恐竜から素材を採取する。


「・・・ティラノサウルスが炎を吐いたぞ・・・?」


「吐いたわね」


「またおかしな追加を・・・」


「まあ、吠えて噛みつくだけだとつまらないし、良いんじゃない?」


今夜から、夜の時間を利用してレベル上げ。

結構格上の敵と戦わないと、俺やエイプリルはレベルが上がらないようだ。


ジリアンとリパーがいた方が安定するのだけど・・・PT総合戦力と、敵の総合戦力も経験値算出の評価対象の為、経験値が入りにくいのだ。

強いPTに混ぜて貰っても、楽には稼げない、それを考慮した仕組みだろうか。


尚、オーディンとアルテミスは、やはりクランの経験値を引き上げていた。

5倍だから、まだ大人しい方だ。

アテナは公正なのが好き、トールは努力が好きなので、経験値増加はしていない。


「ほら、焼けたわ」


エイプリルが、焼けた恐竜の肉を差し出す。


「有難う・・・美味しい。やっぱりエイプリルは料理が上手いな」


「喜んで貰えて嬉しいわ。美味しそうに食べてくれるから、作っていて楽しいわよ」


最近、エイプリルはアテナのクランのアジトに住んでいる。

3食お世話になりっぱなしだ。

訪問する神々のお世話も任せてしまっている。

・・・大半の家事はストラスがやってくれるのだが、神々の給餌や案内は、俺やストラスよりエイプリルの方が喜ばれる。

男神、女神、区別無く。

俺達が外出している間は、アテナ自身が案内しているようだ。

アジトにエイプリルの部屋やトールの部屋までできてしまった。


それにしても、最高神達が色々やった結果、おかしな事になっている。

地上120階、地下40階。

箱庭が丸々入る多目的ホールや、八百万席のシアター、各種環境の風光明媚な土地完備。

宣伝文句がおかしい。

位相がずれているので、知らない人が見たらただの中規模な館。

普段俺とエイプリルが暮らしているのは、偽装側の自室だ。

ゲーム機は、本物側に置いてある。


「やっぱり、ペアの方が経験値の入りが良いな」


俺の言葉に、


「ええ。リパー達のレベルが高いのも、上がりにくい原因かも知れないわね」


エイプリルが溜め息混じりに言う。


「後5レベル上げたら戻ろうか」


「そうね、そろそろ眠いし」


俺の提案に、エイプリルが頷く。


ガサッ


茂みから現れたのは・・・スカルレックス!

ランク3の後半でもきつい。


「何故このクエストに?!」


「・・・夜?」


エイプリルがぽそっと呟く。


「・・・そうか、夜だから昼より強力な敵が出るのか!」


「流石に毎回出る訳では無いと思うけど・・・そう言えばランダム要素として、夜にレアモンスターの出現があったと思う」


「不味いな・・・」


「私が時間を稼ぐわ?その隙に逃げて」


エイプリルが錫杖を構え、俺を庇う様に立つ。


「そんな事出来るか!時間を稼ぐ役割は俺が!」


「大丈夫、私を信じて?」


エイプリルの落ち着いた目。

ここは・・・信じよう。

それに、ミョルニルもあるしな。


「合図したら逃げて?」


「分かった」


エイプリルが高らかに錫杖を掲げ、


「今よ!」


その言葉に、その場を離れ出入り口に急ぐ。


ドウン


後ろから、巨体が倒れる音。

そして、


「ぐおおおおおお?!痛い、痛いぞおお?!これは・・・筋肉痛?!我には骨しか無いのに!」


スカルレックスの声?が聞こえる。

エイプリルがしたしたと歩いてくる。


「・・・エイプリル・・・まさか・・・」


「彼は昨日激しい運動をしたようね」


まあ、気にしないでおこう。

今日はこれで切り上げよう。

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