第77話 未来より来たる使者

「凄い・・・落ちたら大変そうだね」


ジリアンが、端から見える雲海を見て言う。

この世界、下を作るのが面倒だったので、空間を歪曲させ、落ちたら中央の魔法陣に落ちてくるようにしてある。

が、面白がって遊ばれても話が進まないので黙っておく。


アテナ、トール、オーディン、アルテミス。

神々が優雅に紅茶を楽しんでいる。


「こちらへ」


ルシファーに促され、神々の向かいに座る。


「ディーン、エイプリルさん。そして、リパーさん、ジリアンさん。御足労願い、有難う御座います」


アテナが声を掛ける。


「アテナ様、この度はお招き頂き有難う御座います」


リパーが深々と頭を下げる。

一同、一緒に頭を下げる。


「ディーン殿、そしてエイプリル殿。早速本題に入らせて貰おう」


オーディンが、一同を見渡す。


「昨日の夜、リパーとジリアン殿がヤケぶどうジュースを飲んでいたのだが」


ヤケ?

何か辛い事があったのだろうか?

それにしても、ぶどうジュースとは可愛いな。


「未来から来た、という騎士が訪ねて来てな」


俺はそっとストラスに手を伸ばすと、


「白状するなら今だぞ?」


「や、あれですって、創世神の奴ですよ」


そっちかあ。


「・・・うむ、その騎士も、創世神によりこの時代へと送られた、と述べた」


創世神・・・どんな奴だろう。


「ともかく、その騎士が言うには・・・未来はその騎士しか存在せず、非常に寂しい状況になってしまった、と」


「・・・人類滅亡、もしくは神を含め全滅・・・?創世神はいるみたいだが」


俺が呻く。

話が急展開過ぎる。


「それだけでは状況が分からないわ?人間だけなのか、神々も含めいないのか、天使が減ったのか・・・異世界はどうなのか、それともごく狭い・・・例えば村とか、家の単位なのか」


「そこまでの情報は貰えてないよ。とりあえず凄い力を行使するのを見せ、解決策だけ教えて立ち去ったんだ」


ジリアンが言う。

いや、突っ込んで聞けよ。


「解決策?」


エイプリルが尋ねる。


「はい。それは・・・ディーンさんがハーレムを作ることです」


「「何で?!」」


俺とエイプリルの言葉がハモる。


「ともあれ、創世神の使者という事は、即ち創世神の神意。それで、今天界の最高神ももめておるのだ」


オーディンが苦々しく言う。

ややこしいなあ・・・


「とりあえず、その使者に会いたいわ?」


「それが・・・何処に居るか分からなくて・・・」


リパーが申し訳無さそうに言う。


「オーディン様に分からない訳は無いと思うのですが?」


エイプリルがオーディンに尋ねると、


「神々がもめている、と言ったな。アテナとトールは反対派、私とアルテミスは消極的賛成派・・・リパーとジリアン殿も、ディーンと番になって欲しいでな」


「つまり、ディーンがハーレムを作らなくても良い方法があるけど、その方法を取るのは援助頂けない、といったところでしょうか」


「うむ・・・すまないな。ちなみにクロノスとウラノスは急進派だから気を付け給え。どうやら、最近失点があったらしく、挽回しようと張り切っているようだ」


「失点、ですか?」


リパーが尋ねる。


「うむ・・・天界の混乱とも関係するのだが・・・クロノスはみだりに時間遡行する者を取り締まる役目でな。最近、違反者が後を絶たないため、かなり立場が悪いのだ」


「時間遡行ですって?!許せません・・・許せませんよ!!」


ストラスが憤怒を露わにする。

おまいう。


「え・・・駄目なの?」


少し怯えながらも、ジリアンが尋ねる。


「勿論ですよ!過去に行くという事は、それだけで過去を改変してしまうリスクが有ります。絶対に許されません!」


激昂しながらストラスが吐き捨てる。

えっと、羽伸ばせば良いのかな。


「旦那、考えてみて下さい!」


何故か俺の方を向いて話し出すストラス。


「・・・何だ?」


「例えば、私と旦那が会ったのは、魔石碑探しの時が最初、次に会ったのは誓約を誓った時じゃないですか?!」


「お・・・おう」


「今私が過去に行って、盗賊から隠れている時に戻り、お菓子を渡したら、過去が変わってしまう訳ですよ!」


「いや、意味分からんし・・・」

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