第78話 お菓子だけにね

盗賊・・・お菓子・・・あ。


「おい、まさかあの時のストラス、今のストラスか?!あれ凄く困ったんだぞ?!」


「そう、過去改変はすべきでは有りません。おかしなことになったらぞっとします、お菓子だけにね。今回のように現在が影響を受ける・・・収束する、と言うのですが、分岐が発生する可能性も有ります。軽はずみな行動は控えて下さい」


みょーん、みょーん

ストラスの羽を伸ばす。


「お前、俺をからかいたかっただけだろ」


「や、旦那、誓約誓ってるのにそんな事出来る訳無いじゃないですか。そんな事が出来たら、悪魔界で序列0位はれますって」


「おま・・・誓約しても特に制限無かったのか?!」


お前不動の序列0位じゃねーか。


リパーとジリアンがきょとん、としている。


「と、とりあえず過去改変が駄目、というのは良く分かったよ」


ジリアンが気圧されながら頷く。


「そう、過去改変は許されないわ。その使者とやらは止めるべきじゃないかしら?」


エイプリルが尋ねる。


「創世神の神意となると、立場上受け容れざるを得ません。みだりな改変を禁じているだけです」


アルテミスが答える。

アテナなら反対派らしいし教えてくれるのだろうか。


「その、ウラノス様も時間遡行者の取り締まりを?」


リパーが尋ねる。


「いや・・・ウラノスは天界の防衛責任者でな。天界ができて以来、悪魔の侵入は一度も許した事が無かったのだが・・・最近立て続けに侵入されてな。結局犯人も見つからず、かなりバツの悪い思いをしておるのだ」


「何と・・・神聖不可侵の天界に侵入するとは!!許せません、許せませんよ!!」


ストラスが叫ぶ。

やると思った。


ストラスがちら、とこちらを見る。

はいはい。


「必ず見つけ出して、その罪を償わせます!!」


ストラスが再度叫ぶ。

ちら、とこっちを見る。

ちら、とエイプリルを見る。


「あれ、ストラスは悪魔なのに、何故怒ってるの?」


ジリアンがきょとんとして聞く。


ストラスが嬉しそうに、


「いやあ、悪魔にもやって良い事と悪い事が有るんです!まったく・・・アスモデウスは・・・」


「あ、アスモデウスが犯人なのかあ・・・事件の影にアスモデウス有りって感じだね・・・」


ジリアンが呻く。

アスモデウス、被害者の立場が固定化して来たな。

と言うか、騒動起こしたのもストラスが焚き付けたんじゃないだろうな。


「それで、その使者とやらに会いたいけど、アテナ様、情報を頂けますか?」


エイプリルが尋ねる。

アテナは頭を振り、


「申し訳有りません。当事者と直接会うと、どんな影響が有るか分からないので・・・」


「私は当事者じゃ無いわ?」


「貴方とディーンは番になる未来が確定しているので、関係者になってしまうのです」


ハーレムとか言ってたしなあ。

確定メンバーと言う事か。


「えと・・・うう・・・ヘヘ」


赤くなって、にへっと笑うエイプリル。


「私とディーンが確定だって」


エイプリルが俺の横に来ると、


「えいっ」


腕に抱きつく。


「へへー」


目を細めごろごろするエイプリル。

頭をすりすりしてくる。

抱き寄せ、頭を撫でる。

可愛い。


「そういう訳で、私とジリアンはディーンさんの作るハーレムに入る必要が有るんです!」


リパーが怒り気味に言う。

・・・世界が大変と言っているときに、私事に時間を使った為だろう。

リパーの怒りはもっともだ。


「エイプリル・・・今は大事な話だから・・・そういうのは、後でベッドの上ででも」


「・・・うん」


エイプリルが名残り惜しそうに離れる。

部屋にソファーを置いてないので、どうしてもベッドに座る機会が多い。

いい加減、ソファーも買わないとなあ。


「ぎいいいいいい!」


リパーが涙目で猛獣のように唸る。

だから本題に戻るって?!


「使者に会えないのは分かりました。では、創世神とは会えますか?」


俺がアテナに尋ねる。


「すみません、創世神について語る事は、禁忌タブーなのです」


アテナが頭を振る。

うーむ。


「それでは、私からささやかなヒントを」


ストラスが囁く。

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