【80万PV】冒険者になろう - 転生特典をスキップされてチートなしで転生させられたので色々諦めました -

第61話 あいろべよう

実は大分やばかった。

いやー、早いわ。

事務仕事ばかりしてたせいで、かなり反応が鈍っている。

リハビリが大変だ。

「違いますよ？！」

リパーが泣きそうな声を上げる。

違うのか？

「ディーン・・・貴方・・・違うわ？」

エイプリルが非難するような声で言う。

あれ・・・？

「ディーン、貴方余裕ぶってるけど、一瞬反応遅れたでしょ？体がかなりなまっている・・・そしてリパーも相当成長している。そこは素直に認めるべきよ」

・・・流石エイプリル、見抜かれていたか。

「済まないな、リパー。エイプリルの言うとおりだ。俺はかなり反応が遅れたし、リパーも相当早かった。かなり成長したな。そして俺もかなり精進が必要だ」

「だから違いますって？！」

リパーがさっきよりも更に大きく否定する。

・・・何故？

「私、リパーは、ディーンさんが好きなんです。あいろべよう、なのです！」

・・・あいろべよう？

「リパー、あれはあいろべよう、じゃなく、あいらぶよう、と読むのだよ」

ジリアンが訂正する。

・・・まさか、アイラブユー(I love you)？

「何故英語が出てきたのか分からんが・・・とりあえず好感情を持たれていることは分かった。俺も、リパーも、ジリアンも、エイプリルも好きだよ」

みんな大切な友人だ。

「絶対伝わってません！・・・うー・・・なら日本語なら・・・ディーンさん、月が綺麗ですね！」

「いや、今は昼間なんだが・・・」

何かの比喩だろうか。

時間稼ぎの間にジリアンが死角に回り込んで、って訳でもないようだし。

「うー、どうやればディーンさんに、恋愛感情がある、と伝わるのでしょうか・・・」

リパーが頭を抱える。

可愛いなあ。

誰が誰に恋愛感情があるのだろう。

リパーがジリアンに？

「なら・・・僕が・・・」

ジリアンが前に進み出て、俺に近づいてくる。

「ディーン・・・僕は君のことが好きだ！」

三角関係？！

待って、ジリアンの態度は薄々気付いてたけど、俺は女の子が好きだ。

「それは・・・友情的な・・・？」

「違う、異性として好きなんだ！」

同性だよ？！

「・・・済まない、ジリアン。君の趣味に俺は口を出さない。でも、俺は女の子が好きなんだ」

「僕は、心は女の子だよ！」

うん、薄々気付いてはいた。

「そうは言ってもだね・・・やはり体の性別というものが・・・」

ジリアンは困ったような顔をすると、深刻な声音で言う。

「・・・勘違いされてる気がする・・・違う・・・僕は、転生前は女の子なんだよ」

・・・何・・・だと・・・

「ディーンさん・・・！私も、ディーンさんの事が異性として好きです！」

リパーがキッと、凜々しい顔で宣言する。

・・・まさかの恋愛感情？！

「いや・・・待って欲しい。まず、俺はキャラメイクの段階である程度見える顔にしたが・・・元の顔はかなり問題があり、かつ、かなりの年齢だ。君達に好いて貰えるような資格は無い」

リパーは引き下がらない。

「そんなの・・・！前は前、今は今です。それに、私がディーンさんを好きなのは顔じゃ有りません。その人格に惚れたんです！」

「しかし年齢が・・・」

「今は同じ年齢じゃないですか。だいたい、年齢なら私だって変更しましたよ。前の私は、18歳ではありません！」

「あ、俺と同じで、元の年齢は結構・・・？」

「はい！前の私は9歳なので、9歳もサバを読みました！」

9歳にしては随分しっかりしておられますね！

差が広がったじゃないか。

完全に事案だよ。

「ディーン・・・前の貴方は顔とかがかなり問題がある、と言ったね」

ジリアンが割り込む。

「・・・む？うむ」

「じゃあ言おう！僕は貴方と転生前に会ったことがある！貴方が転生前、ちょくちょく電車で会っていた女学生・・・それが僕だ！」

・・・何・・・だと・・・

・・・言われてみれば、話が似てるし、俺の外見やら何やら当ててたな。

「だから、僕は転生前の貴方を知っている。その上で言おう、僕は貴方が好きだ！付き合って欲しい！」

・・・いや・・・でも今は男だしなあ・・・

「その・・・何とか性別を女性に戻すよう、努力はする・・・付き合うのはそれからで良い・・・とりあえず、気持ちだけ伝えさせて欲しかったんだ」

むぅ・・・

「その・・・どっちと付き合うかとか・・・今は考えられなくて・・ちょっと時間を欲しい」

俺がそう答えると、

「どっちと、とか選ぶ必要は無いです！私達二人と付き合ってくれれば良いんです！」

ちょ。

「いや、そんな事許されないだろう」

「何でですか？」

リパーがきょとん、として尋ねる。

「私が良く巡回していた小説サイトだと、異世界に転生したらハーレム築いてましたよ？これはもう一般常識です。チートとハーレム」

何その教育に悪いサイト。

「でも実際、この世界では別に一夫多妻も、一妻多夫も禁止されていないよ。実際に居るしね」

ジリアンが言う。

・・・そうなのか？

「・・・とりあえず、それも含めて時間を欲しい」

想定外の内容の連続に混乱する。

俺は頭を下げる。

「・・・迷惑かなとは思いましたが、気持ちだけ伝えたかったんです・・・負けたくなかったから・・・」

「僕達話し合って、伝えると決めたんです」

とりあえずは逃れたが・・・転生前から非モテ人生、こういうのは慣れていない。

とは言え、二人とも大切な友人・・・好感情もある。

それを受け入れたい気持ちもある・・・一人は性別の壁があるけど。