第62話 運命の再会

「エイプリル、付き合って欲しい」


ここは、アテナのクラン、ふぁんしぃのアジト。

その自室。

エイプリルを招き、頭を下げている。


「・・・時間稼ぎの為恋人のふりをして欲しい、といったところかしら?」


エイプリルが意図を正確にくみ取ってくれる。

流石頼りになる。


「でも、どうして私なのかしら?他には頼める女性いないの?」


「・・・自慢じゃないが、そもそも知り合い自体が少ないからな。こんな事頼める女性なんて、エイプリルだけだ」


「分かったわ」


エイプリルが微笑んで了承してくれる。

有り難い。


「有難う。それに、エイプリルは凄く魅力的な女性だからな。美人だし、センス良いし、頭も良く性格も良い。話も合うし、一緒に居て心地が良い。やって欲しい事をやってくれている・・・人生のパートナー、お嫁さんにするなら是非エイプリルの様な女性が理想だと思うよ。まあ、男の願望ってやつだ」


「あら、口説いているのかしら?」


「エイプリルが俺に対して、恋愛感情が無いのは分かっているよ。だからこそ、こういった事も頼める」


「少なくとも、友情以上の物は感じているわ」


親友、って奴だ。


「そういう訳で、しばらく恋人になって欲しい」


「はいはい、よろしくね」


差し出した手を、エイプリルが握る。

柔らかいなあ。

ちょっと汗をかいている。

この部屋、エイプリルにとっては暑いのだろう。


--


水竜の生態調査。

今俺達が受けたクエストだ。

熱帯雨林のぬかるんだ道を歩く。


俺の横にはエイプリル。

腕を絡めている。


後ろからは頬を膨らませた女性が二人。

リパーとジリアンだ。


「ディーンさん・・・やっぱり納得いきません。エイプリルさんと既に付き合っていたなんて」


リパーが膨れながら言う。


「隠していたのは悪かった。でも、事実なんだ」


俺は頭を下げる。


「でも、別に複数の女性と付き合っても良いだろう?日本じゃないんだから」


ジリアンが言う。


「その事は何度も話したわ?今まで恋人は一人だけ、浮気は駄目・・・そういう価値観でいたのに、急に複数と付き合うって言われても戸惑うわ?少し時間が欲しいの」


エイプリルが言う。


「エイプリルさんからも言って下さい。ディーンさんを独り占めするってずるくないですか?」


リパーがエイプリルに言う。


「嫌よ。私は、ディーンが他の女性を好きになるのは嫌だし、ディーンとの時間が減るのは嫌だわ?それは普通の感情でしょう?」


エイプリルの発言、演技だと分かっていてもドキッとするな。

そして発言の正しさで、凄く説得力がある。

リパー、すまん。


「それは転生前の常識ですよね!」


リパーが唸る。


「あら?では、リパーは複数の人を好きになって、複数の人と付き合うの?」


エイプリルが尋ねると、


「そんな訳無いじゃないですか!私が好きなのはディーンさんだけです!」


リパーが叫ぶ。


「同じよね?」


「う・・・」


エイプリルの言葉に、リパーが呻いて後ずさる。


「僕は、エイプリルより先にディーンが好きだったんだ。これは運命の再会。どうかな、ディーン!」


・・・確かに運命的な・・・いや、待てよ?

確かジリアンはフィッシングメール(詐欺メール)的な物に引っ掛かったんだよな。

まさか神が意図的に狙い撃ち・・・


〈考えすぎです。アテナに失礼ですよ〉

〈もう少しアルテミスを信じてあげて下さい〉


アルテミスとアテナの声。

どっちか、もしくは共謀かな。


「しかしだな・・・」


微妙に負い目もあるし、ジリアンは嫌いではないし・・・と言うか、


「・・・と言うか、話を変えて申し訳ないが、何故ジリアンは性別が変わっているんだ?」


「え?テミス様に相談したら再選択させて貰えたけど?」


あっさり解決し過ぎじゃないですかね。


「ジリアン・・・貴方がリパーより前にディーンと出会っていて、ディーンの事を想っていた・・・それは考慮すべき事かも知れない・・・でも、落ち着いて?貴方は高校生なら、15~18歳あたりよね?ディーンは32歳、急いで結論を出さなくても良いんじゃないかしら?」


ん?

何で俺の転生前の年齢知っているのだろう。

言ったっけ?


「リパーだけじゃない。エイプリル、貴方より前から知っているんだ」


「でも、私とディーンが会ったの、5年以上前よ?」


「「「え」」」

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