第60話 神様からのプレゼント

ガサッ


幼竜のティラノサウルスがもう一体。


ザッ


俺が投擲した槍が、ティラノサウルスの首を貫く。


「踊れ風よ!」


エイプリルが魔法を発動。

風の刃が無数に現れ、ティラノサウルスを切り裂く。


俺はティラノサウルスを駆け上り、頭頂から・・・


ヒュン


槍を一回転回し、


ザシュッ


頭を槍で貫いた。


サササッ


エイプリルがティラノサウルスから採取を行う。

肉塊を2個手に入れる。

すっと異空間にしまう。


「いけるものね」


エイプリルが頷く。


「・・・初見でどうしてそこまで上手く連携できるの・・・」


ジリアンが呻く。


「私はエイプリルさんが採取や収納を使えているのが分からないのですが・・・」


リパーがうろんな目で呟く。


「リパーとジリアンの連携には敵わないさ」


「私は、ただ任務の褒美として、スキル増やして貰っただけだわ?」


「待って、何そのスキル増やして貰うって、そんな事有り得るの?!」


ジリアンが驚いて食いつく。


「ええ。スキル増やしたり、名前変えたり・・・性別を変えたり。指名クエストの場合、そんな報酬がある事もあるようね」


「詳しく!」


エイプリルがジリアンに何か吹き込んでいる。

まあ、悪くはしないだろう。


ガアッ


不味い、ティラノサウルスの成竜だ。


「沼よ!」


エイプリルの魔法が発動、ティラノサウルスの足場がぬかるむ。

バランスを崩すティラノサウルス。


「はっ!」


ジリアンが盾でティラノサウルスを叩きつける。


「やっ!」


リパーの矢が、ティラノサウルスの両目を射貫く。


ギアアアアア


大口を開けて悲鳴を上げるティラノサウルス。


「喰らえ!」


俺の槍がティラノサウルスの口に吸い込まれ、口内に突き刺さる。


「やあ!」


ジリアンの鎚が、ティラノサウルスの足に撃ち付けられ、


「炎よ!」


エイプリルが無数の火球を創り出し、ティラノサウルスの口に叩き込む。


俺は背後に回り、槍をくるりと回す。

その間に槍に全力で魔力を纏わせ・・・


「チャージ!」


全力のチャージをティラノサウルスに撃ち込む。

背中を貫き、魔力を流し込み・・・


「やっ!」


ジリアンがティラノサウルスの頭を鎚で打ち、


「えいっ!」


魔力をたっぷり纏った矢が、ティラノサウルスを貫き、


ゴウッ


エイプリルが放った極大火炎球が、ティラノサウルスを焼く。


ドス


倒れるティラノサウルス。


さささ


リパーとエイプリルが採取を行い、牙が2つ、爪が1つ、上級肉塊が2つ、肉塊が7つとれた。

大量だ。


「これでクエスト達成だな。お疲れ様」


俺がみんなに言う。


「お疲れ様・・・にしても、何でこんな不思議な場所が出来たんだろうね。魔物もすぐに消えなくなったし・・・少ししたら魔石に変わるけど。凄く楽しくはなったんだけどね」


ジリアンが不思議そうに言う。


「まあ、神様からのプレゼントと思っておけば良いんじゃないかしら?」


エイプリルが言う。


「ひょっとして、ディーンさんとエイプリルさんが1ヶ月程居なかったのって

、この現象に関連しているのですか?」


リパーが尋ねる。

くっ。


「ごめんなさい、任務の内容は口外できなくて・・・まあ、調査の内容は、無関係ではないわ」


エイプリルが申し訳無さそうに言う。

そもそも調査じゃないけど。


「あ、そうですよね・・・すみません」


リパーがぺこり、と謝る。


エイプリルがちゃっちゃと料理を始める。

木切れに灯を付け、肉塊を焼く・・・

凄く美味しそうな匂いが漂う。

別に肉は納品対象ではないので、その場で食べてしまって良い。


「・・・美味い」


天界でも至上の料理や、エイプリルの手料理を食べていたが。

その場で調理している補正もあるかも知れないけど、これは美味しい。


「今みんなが食べているのが上級肉塊。本当に美味しいわね」


エイプリルが嬉しそうに言う。


「普通の肉塊は良く食べてたけど、上級肉塊は本当に美味しいね!」


ジリアンが骨をしゃぶりながら言う。


「エイプリルさんの料理の腕も関係してそうです・・・」


リパーが何故か悔しそうに言う。

さて、そろそろ戻るか・・・

入った所に戻ったら、インスタンスダンジョン脱出、だったな。


「じゃあ、街に戻ろうか」


「待って下さい」


リパーがすくっと立ち上がる。


「どうしたんだ、リパー?」


リパーの顔が赤い。

何か、興奮している?

少し下を向き・・・そしてこちらをまっすぐに見て・・・告げる。


「私・・・ディーンさんと離れ・・・焦って・・・私、決めました。このままだと、また置いていかれたり、どんどん差を付けられる・・・から・・・」


リパーがこちらの目を真っ直ぐに見つめながら、言う。

・・・まさか、神の正体を教えろとでも言うのだろうか。


「ディーンさん・・・好きです、付き合って下さい!」


リパーがこちらに向かって駆ける。

俺は軽く体をひねり、紙一重で躱すと、リパーの手を持ち、地面に押し倒す。


「訓練に付き合うのは良いが・・・今のは隙ではない。反応は良くなっているけど、もう少し観察眼が必要だな」

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