第10話 クエスト失敗

コボルドがやってくる。


「討伐対象ではないですが、戦ってみますか」


コボルドの傍に踏み込み、心臓を槍で貫く。


コトリ


コボルドが消え、コボルドの魔石が落ちる。


「こんな形です」


「はい!」


もう一体コボルドが来る。


「ほら、やってみて下さい」


「はい!」


リパーが短剣を構え、コボルドに向かい・・・コボルドがステップを踏み、リパーがバランスを崩し、その隙にコボルドが距離を詰め、リパーの首にナイフを・・・

突き刺す前に、俺がナイフをはじき、そのままコボルドの首を槍で突き刺す。

コボルドが絶命する。


「・・・ええ・・・」


涙目でこっちを見るリパー。

ちょっと地面が濡れているがそれは見ないようにしつつ。


「相手だってフェイントを掛けてくるから、乗らないように気をつけないと。出来れば隙をみて一気に詰めるとか、後は背後を取れば安全だと思う。後、ナイフの構え方がなってないかな。それだと刺すときに力入らないでしょ?狙う部位も急所じゃなかったよ」


「・・・無理なんですけど・・・怖すぎるんですけど・・・」


立てないのか、座り込んだまま、涙を流す。

・・・言われてもなあ。


「一応、死体を教会に持って行けば復活は出来るけど・・・凄く高いから俺達じゃ払えないかな。その場合は火葬になるから気をつけて」


「なんか対面した瞬間に頭真っ白になるんですけど・・・」


下半身から微妙に距離は取りつつも、リパーを助け起こす。


「とりあえず近くの川で洗ってから話を聞こうか」


「・・・はい・・・」


結局その日は、薬草採取だけ納品した。


フリズスキャルヴのアジトにて。

オーディンに報告する。


「リパーは、技術以前の問題のようですね。魔物と対面した時の心構えが出来ていないようで、まともに戦えないようです」


「そうか、私としては、まさかいきなり実戦に連れて行くとは思っていなかったから、キミの感覚がどうなっているかの方が疑問だがね・・・そう言えばキミは初日から普通に狩りをしていたそうだね。日本で純粋培養された平和ぼけが、いきなり殺し合いの場にほり出されて戦える訳なかろう」


オーディンが困ったように言う。


「・・・いや、そう言いますが、生きる為には殺し合いがですね」


「・・・そうだね・・・済まないが、しばらくは後方で見物させてあげてくれるかな?この娘は収納空間のスキルがあるから、ポーターとして役立つ筈だ。無論、報酬は等分しろとは言わぬ。1割程でも良い。後は平行して、私達の訓練に参加してもらって、ナイフの実技を身につけさせよう」


オーディンは少し思案した後、そう提案する。

まあ報酬は等分でも良いけど。

稽古もつけてもらっているし。


「分かりました」


「うう・・・ご迷惑おかけします・・・」


「いや、日本から来た人は初戦で逃げ出したり、色々問題起こす事もある。動けなくなったくらいなら、頑張った方であるよ」


オーディンがリパーを慰める。


リパーは明日から訓練に参加する事になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る