第64話 みっそんこむぷれと

とりあえず調査だ。


リパーが巣に入り、色々調査していく。

何かレポートを取り、


「うん、これで調査できたと思います。みっそんこむぷれとです」


9歳には英語は難しいのでしょうね。

無理に使わなくて良いんですよ。


「リパー、あれはミッションコンプレトって読むんだよ」


ジリアンが訂正する。


「多分、ミッションコンプリートって言いたいんだよな?」


俺が更に訂正する。

ジリアン、お前が分からないのはおかしいからな?


「・・・流石大人!」


ジリアンが目を輝かしてこちらを見る。


「うう・・・いつも使ってた小説投稿サイトって、漢字は結構読み仮名振ってあるので色々覚えたのですが・・・英語は・・・」


「へえ、ああいうサイトって漢字に読み仮名振るんだな」


「はい!凄く勉強になります!漢字って凄いですよね、物凄く多様な読み方するんですよ!」


・・・そこまでたくさん読み方あったっけ?

少ないとは言わないけど。

|五月雨≪さみだれ≫とかかなぁ。


ガサッ


リザードマンが数体、茂みから飛び出す。

気配は察知していた。

俺の腕に抱きつき頬を擦り寄せていたジリアンが、飛び出し、盾でリザードマンを押す。


ジャッ


別のリザードマンを、俺の槍が貫く。


「雷よ!」


エイプリルが放った雷が、リザードマンを焼く。


「せいっ」


ジリアンの一撃が、リザードマンを絶命させた。


危なげ無く、リザードマンの撃退に成功する。


その後、雑談を楽しみつつ、敵を退けながら帰還、報告。

楽しい、やっぱり苦労してシステム拡張した甲斐があった。


--


夜、俺の自室。

エイプリルに紅茶を出しつつ、礼を言う。


「有難う、今日は助かったよ。申し訳ないけど、この調子で恋人のふりを頼む」


エイプリルは溜め息をつくと、


「もし私が本当の恋人なら、貴方の頬を引っ張っていたわ?」


どういうこと?!


「それは・・・不甲斐なさとか、優柔不断さとか、そういう・・・」


返す言葉がない。


「いえ、その後の、リパーやジリアンとのイチャイチャね。恋人の前で何やってるの?」


どういうこと?!

思い返してみるが、心当たりは・・・うん、ない。


「まあ、天智らしいと言えばらしいわ。貴方昔から凄くモテたものね」


・・・?

おや、俺はモテた事がないぞ?


「・・・あれ、ひょっとして、俺の知ってるお嬢じゃない?俺はモテた事なんて無いぞ」


「流石に本人だと思うわ?いつも人に囲まれていたじゃない。お食事の誘いも多かったでしょう?」


「一応仕事はそれなりにできたからな。利用しようとする人が多かっただけだ」


食事の誘いは、奢らせようとしてただけだと思う。

毎月、必ず給料日から1ヶ月以内しかお誘い無かったからな。


「幾ら私が偽の彼女を演じても、貴方がそういう態度をとると、不自然だわ?もう少し気をつけて貰わないと困る」


エイプリルが困った表情で言う。


「済まない、気をつけるよ」


エイプリルはふと考える表情を見せた後、こちらに顔を近づけ、


「あまりやきもきさせないで?他の女の子ばかり構って、私を見てくれないと、嫉妬しちゃうわ?」


訴えるような目で言う。

演技だと分かっているのに、可愛い・・・


すっと離れ、落ち着いた表情に戻ると、


「どう、恋人っぽかったかしら?」


「ああ、凄くドキッとしたよ。気を付ける決心が強まったよ」


くすっ


エイプリルは微笑むと、


「ふふ、有難う。じゃあ、今日もゲームをしましょうか」


「ああ、今日こそはランクを上げたいな」


結局、ゲーム機をこのアジトから出すことは認められなかったので、俺の部屋に置いてちょくちょくプレイしている。

ゲームじゃなく、現実でクエストやれよ、と言うツッコミが有りそうだが、ゲームは別腹なのだ。

無論、現実のクエストも面白いのだが。


尚、最高神の神々の間でも、ゲームが流行っているらしい。

ゲーム機等の調達は全てストラスが引き受けているようだ。

その度にクロノスが騒いでいるらしい。


そう言えば、ストラス以外に過去移動している奴っているのだろうか?


「ほーほー。過去移動は、最高神クラスか、特殊スキルがないと難しいので、限られていますね。出来てもやらない神が殆どです。私か、序列0位の悪魔、創世神くらいですね」


ストラスが勝手に心を読んで答える。


「何故そのお偉方がやるのか、に突っ込めば良いのか、そこにお前が入っていることを突っ込めば良いのか・・・とりあえず、意味のない過去移動はやめてやれ」


「またクロノス様に御迷惑を?」


エイプリルが呆れて言う。


「ポイント20倍でしたからね」


「・・・それは大きいわね」


呻くエイプリル。

おい。


ともあれ・・・今日こそはランクを上げようと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る