第19話 鉄で作られた片手槍

ゴボ・・・


さっきと同じ甲虫が湧く。


ジリアンがタイミングを計って、斬り付ける。

剣が折れはしなかったものの、殻を傷つけただけで終わる。

2撃・・・3撃・・・傷口を広げ・・・

痺れを切らし、蹴飛ばして転がし、腹に剣を突き立てる。


コトリ


甲虫が消え、魔石が落ちる。


「やっぱり、オーディンの攻撃力高いよ?!」


ジリアンが言う。


「まあ、俺は戦闘職、ジリアンは重武装出来る僧侶だからね」


流石に同じ火力だと困る。


「私の魔法でも、あの装甲は貫通出来ませんでしたわ?」


エイプリルが言う。


「そもそも、その槍やたらと丈夫じゃない?」


ジリアンがじっと槍を見る。


「いや、ただの鉄の槍かな。壊れないだけの」


俺が答えると、


「壊れないって何?!」


驚きの声を上げるジリアン。


「すみません、鑑定させて下さいね」


リパーが言い、鑑定結果を映し出す。


名称:

 鉄の槍

説明:

 鉄で作られた片手槍。

その他:

 不壊属性付与

  説明

   壊れる事を禁じられている。

   損傷出来無い。

  付与者

   大神オーディン

 所有者認定付与

  説明

   所有者を定められている。

   意思を示せば手元に戻る。

  付与者

   大神オーディン


思いっ切り鑑定で名前バレてるじゃねえか。

何やってるんだ神様。


「え・・・大神オーディン・・・神様御本人ですか?!」


リパーが驚きの声を上げる。


「違う違う、俺は単に強そうな名前付けただけ。この槍は貰い物」


「え・・・でも・・・」


「すまん」


言いかけたリパーの顔の横を、俺が投げた槍が飛ぶ。

リパーの後ろに湧いたワームを槍が貫き、そのまま飛んで行く。


シュ


俺の手に槍が戻る。


「有難う、リパー。こんな特性有るって教えてくれて」


「え・・・あ、はい。有難う・・・御座います」


混乱するリパー。


「大神オーディンの名前には驚いたけど、確かに鉄の槍で・・・でも、すごく強そうだね」


ジリアンが羨ましそうに言う。


「この剣でも戦える?」


ジリアンが自分の剣を渡してくる。


「剣の練習はしてないからなあ」


湧いた甲虫に攻撃を仕掛ける。

殻を光らせて対抗する甲虫。


ガシュ


剣が折れはしないが、切断には至らず、途中まで食い込んだ所で止まる。


ヒュンッ ヒュンッ


数回斬り付け、


コトリ


甲虫が消え、魔石が落ちる。


「やはり一撃なのは槍のおかげだな」


ジリアンに剣を返す。


「いや、折れてないし倒してるし、凄いよ。やっぱり大人しく、職業スロット増やせば良かったよ」


ジリアンが残念そうに言う。


「装備制限解除は60ポイント、職業スロット追加は40ポイントで、そっちの方が安かったのに」


ジリアンが言う。

ん?

40?60?


「人によっては200ポイント超えるらしいわ。凄いわよね」


エイプリルが言う。

あれ。

初期ポイントって20,000ポイント固定じゃなかったのか?

そう言えば、色々見てたスキルに比べて、みんな取ってるスキル大人しいな。

ひょっとして、俺の転生ボーナスってかなり多かったのでは。


「私は、260有りました・・・」


リパーが言う。


「凄いわねリパー。でもリパーのスキル強力そうですものね」


頷くエイプリル。

・・・あの女神め・・・

まあ、むしろチートがない分楽しめてる気がするので、実はあまり怒ってはいない。


「そう言えば、結局みんながとったスキルってどんな感じなんだ?無論、言いたくないなら言わなくていい」


ふと気になって、尋ねる。


「私は、虚空に消える財宝シークレットスペース真贋見抜く神眼アイデンティファイですね。前者がランクに応じて異空間に収納できるスキル・・・今は小さい家くらいの量です。後者は鑑定・・・ランクに応じて、偽装を見抜いたり、難しい鑑定も出来るようになります」


リパーが言う。


「便利そうだね」


いいなあ。


「私は、魔導王の時間ノーキャスト魔導王の財宝チャージね。前者がランクに応じた魔法の詠唱省略。後者がランクに応じた数の魔法事前準備と任意のタイミングでの発動。消費魔力はチャージした瞬間に消費されるので、別枠にストックしておける感じね。今は2つまでチャージできるわ」


エイプリルが言う。


「魔術師として普通に強そうだね」


ゲーム慣れしてるなあ。


「僕は、騎士王の証フルアーマーと、慈愛の光ヒールエンハンス。前者が装備制限解除、後者が回復力アップ。・・・職業スロット追加すれば良かったとかなり後悔してる」


ジリアンが言う。

確かに騎士王の証フルアーマーよりは職業スロット追加が良かったとは思う。


「俺は知ってると思うが、スキルは得られなかった・・・まあ、この槍はある意味チート武器、かな」


俺が言うと、


「確かにそうだね」


ジリアンが頷く。

よし、誤魔化せた。


ドロ・・・


エイプリルの横にスライムが湧く。


「きゃっ」


酸の霧を吹きかけるスライム。


ボウッ


ジリアンが行使した護りの魔法が、エイプリルを護る。


ザシュッ


俺がスライムを槍で貫き、


コロン


スライムが消え、魔石が落ちる。


「アシッドスライム、適正ランク2、適正レベル200らしいです」


リパーが鑑定結果を読み上げる。


「・・・強いな」


「武器を溶かしてしまうので、物理攻撃不可だそうです」


「・・・オーディンの槍は便利だねえ」


ジリアンが羨ましそうに言う。


正規ルートより湧きも良く、敵も強いようだ。


「喰らいなさい!」


エイプリルがチャージしたスキルを解放。

激しい炎が芋虫を包む。


「そこだ!」


ジリアンが芋虫に連撃を加え、芋虫が消える。


「えいっ!」


リパーが芋虫に斬りかかる。

芋虫の尻尾が伸び、リパーを背後から襲う。


ザシュッ


俺が放った槍に貫かれ、芋虫が消失する。


「あう・・・オーディンさん、有り難うございます!」


リパーが抱きついてくる。


「せ・・・戦闘中は抱きつくと危ないから」


「はい・・・後で抱きつきますね」


リパーが離れる。


倒すペースは遅いが、経験値は結構入っているようだ。

・・・経験値アップ解除してもらった筈なのに、みんなの方が成長早いなあ。

まあ、明らかにみんなの方が苦戦しているから、そのせいだろうな。


ある程度倒し、ダンジョンから出る。

魔石を分け、各々ギルドに売る。


「・・・最初のダンジョン侵入で、えらく強い魔物と戦ったんですね」


受付に驚かれた。

ダンジョン内は討伐クエストはない。

あれはあくまで、人里に居る魔物を処理するのが目的だ。


ダンジョンから魔物が溢れそうになったら、また別の討伐クエストは出るらしいけど。


各自清算が終わると、解散した。

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