第76話 エーテルルーナ

「こっちよ」


エイプリルの案内で移動し・・・


「行き止まり?」


ジリアンがきょとんとして言う。

俺は進み出ると、壁に手を突き、


「2つの星交わる所山河在りて、永久の約束この地を縛す。エーテルルーナ、エルルーナ」


ゴゴゴゴ・・・・


壁のまやかしが消え、巨大な空間がひらける。

そこには、巨大な塔があった。

因みに、さっきの呪文はかっこつけで適当に作って唱えていたのだが、気付いたら正式採用されていて、今では唱えないと入れない。


「す・・・凄い・・・」


ぽかん、と口を開けて、驚きの声を上げるリパー。

初めて見ると凄いよね。


「格好いい!早く行こう!」


ジリアンが凄く嬉しそうだ。


「それにさっきの呪文・・・原典が分かりません。何の流れを汲むのでしょうか・・・」


ぶつぶつ考え出したリパー。

いや、適当に並べただけですよ?


「リパー、早く行こうよ〜」


ジリアンがリパーを引きずる。

途中から、黒と白のチェックのタイルになる。


「白い所以外は踏まないでくれ」


靴の底に付いた砂で、白くなるんだよね。

材質の選択間違えたかなあ。

でも、マット感が結構来客には好評。

後で掃除すれば良いんだけどね。


リパーとジリアンは真剣な表情で顔を見合わせると、ごくり、と唾を飲む。

いや、そこまで真剣に気を使って貰わなくて良いんだけど。


慎重に白いタイルを伝って歩く。

2人があまりにも気を使ってくれるから、仕方なく、俺とエイプリルも普段以上に気をつける。


「うわあああああ」


少し離れた所で、黒いタイルの上に足を乗せた男が、雷に撃たれ・・・そのまま灰となって散る。

時々ストラスがやるイリュージョンだ。


「ひいいい」


リパーが混乱して、涙を流す。

ジリアンが慌てて抱き上げる。


「リパー、落ち着いて、大丈夫、白いタイルだけ踏めば」


「はううう・・・」


みょーん


エイプリルがストラスの羽を伸ばす。


「大丈夫よ、ストラスのジョークだから」


エイプリルが言うが、


「嘘です!男と目が合いました!もう帰りたい!」


リパーが泣き叫ぶ。

ストラス・・・お前という奴は・・・


「・・・とりあえず、白いタイルだけ踏むよ」


ジリアンがリパーを抱えながら進む。


そう長い距離ではない。

あっさりと塔に入る。


中は外から見たよりも大きい。

中心は吹き抜けになっており、天まで伸びて天井は見えない。

底も同様だ。


「ひう・・・」


下を見たリパーが悲鳴をあげる。


「凄い」


ジリアンが上を見上げ言う。


種を明かせば、大した事はしていない。

端点を四次元方向に指定する事で、広さや長さの概念を無意味化しただけだ。

つまり、ただ単に無限に伸びているだけである。


種明かしするのもつまらないので、黙っていよう。


ちなみに、此処から見える2階と、本来の2階は別物だ。

各階部屋も付いているので一応無限の客間にもなるが、別に客間は大量に有るのでそこまでする必要はない。


「わわ・・・何か居ます」


「掃除妖精だね」


リパーの驚きの声に、答える。

無限に有る物は有限では掃除出来ない。

空間比率に対し、存在数を相関させて、各階に3体配されるようにしてある。

苦肉の策だ。


「ちょっと探検してきて良いかな?」


ジリアンが嬉しそうに言う。

無限だよ?!

駄目に決まってるだろう。


「駄目よ」


エイプリルがピシャリと言う。


「うー・・・地下だけでいいから、駄目?」


ジリアンが俺を上目遣いで見ながら言う。

無限だって?!


「駄目」


「此処って何階くらい有るんですか?」


リパーが上を見上げながら言う。


「無限に有るけど?」


見て分からないだろうか。

もっと見た目に工夫が必要か。


「「・・・え?」」


リパーとジリアンの声がハモる。


「そんな事より、行くぞ?」


神々待たせてるんだから。


呆然とする2人を、エイプリルと協力してゲートに乗せる。



コンソールが現れる。

操作し、最上階、雲海の間を指定。


フッ


視界が変わり、塔の屋上。

下には雲の海。

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