第58話 褒美

「ニンゲン様・・・大神アテナ様の眷属であらせられましたか」


「やめて下さい。私はただの人間で良いですよ」


本気でやめて欲しい。


一緒に作業をした仲間に御礼と別れを述べ、自室に帰る。

一件落着、か。


「結局、さっきいっぱい来た黒子?っぽいのは誰だったの?」


エイプリルが尋ねる。


「・・・うーむ、分からん。ストラス分かるか?」


「ほーほー、私の部下という事以外は分からないですね」


ああ、ストラスの部下か・・・悪魔?


「悪魔・・・それは探知機的に大丈夫なのか?」


「ほーほー、上層部にデコイ大量にまいておいたので大丈夫ですよ、ほーほー」


ウラノス、今頃大忙しだろうなあ。


「終わったようですね、帰りましょうか」


仕事をたっぷりやったのだろう。

つやつやした肌のアテナが戻ってきた。


「はい、戻りましょう。剣と魔法の世界、へ」


俺はそう言うと、ゲートに向かって歩き出す。

ゲートの前に、老人が立っていた。


「お父様」


アテナが語りかける。


老人、というかゼウスはこちらを見て、


「オーディン、そしてエイプリルよ。大義であった。其方等に望みの褒美を取らせよう」


・・・あまり要らないんだけど・・・そうだなあ・・・


「何でも良いのでしょうか?」


俺が尋ねる。


「うむ、構わぬ」


ゼウスが重々しく頷く。


「でしたら・・・名前を変えても宜しいでしょうか・・・周囲に違和感の無い形で・・・」


超ややこしい。


「分かった・・・常時名前や容姿、スキルの取得をやり直せるスキルの付与、で良いな」


「1回で良いんですけど?!」


「むう・・・大は小を兼ねるぞ?」


「まあ、スキル無しのスローライフも気に入ってますので・・・再びスキルを取る機会があれば、意思が挫けそうです」


「分かった。名前の変更、1度だけ許可しよう」



目の前に、プロンプトが現れる。

名前は・・・


「これで、俺の名は、ディーンになりました。有り難うございます」


気になってたんだよね、名前。


「そちらのエイプリルは、どうするかね?」


「はい。私も、仲間と共に成長するのを気に入っておりますので」


そう、意外と地道に成長するの、楽しいんだよね。

圧倒的なチート能力を持ってしまうと、孤独を味わう気がする。


「ですので、倉庫用の固有空間、職業スロットを2個追加、ノーキャストとチャージの効果を最大に上昇、魔法攻撃力と魔力容量にボーナス、再分配だけで良いです」


流石エイプリル。


「うむ分かった」


エイプリルが光に包まれる。

一杯増えたなあ。


「・・・え」


エイプリルがステータスを確認して呻く。


名前:エイプリル

種族:人間

職業:ウィッチ

職業:

職業:

レベル:231/500

ランク:2

クラン:ビルスキルニル

スキル:

 魔導王の時間ノーキャスト

 魔導王の財宝チャージ

 魔導王の宝物庫ストレージ

 魔導王の証ブースト


神威:

 ミョルニル


備考:

 トールの眷属

  ・鑑定や読心の対象になりにくい。

   一部例外有り。

  ・鑑定や読心を無効化する。

   無効化した際に不審に思われない。

   一部例外有り。


ちら、と俺に見せてくるエイプリル。

・・・最後に何か書いてあるな。


「・・・ディーン、貴方のステータスは?」


名前:ディーン

種族:人間

職業:ファイター

レベル:194/500

ランク:2

クラン:ふぁんしい

スキル:

 なし

(手で隠れている)

備考:

 アテナの眷属

  ・鑑定や読心の対象になりにくい。

   一部例外有り。

  ・鑑定や読心を無効化する。

   無効化した際に不審に思われない。

   一部例外有り。


「こんな所かな」


「一部見えないわ?」


「エイプリル・・・シュレーディンガーの猫、という物を知っているか?観測するまでは・・・実在しないのだよ」


見たくない。

多分何も書いて無さそうな気もするけど。


「ではゼウス様、有り難うございました」


ゼウスに向かって頭を下げる。


「・・・?!何故私の名前が分かったのかね?!」


・・・いや、アテナがお父様と言ってたし。


「・・・分かったでしょう、お父様。これがディーン達の恐ろしい所です。全くのノーヒントから、神の名前を当ててしまいます」


超ヒント有ったからね。


こうして、天界を辞し、地上へと戻った。

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