第55話 言語習得

豪華な部屋、味わった事が無い美味な夕食・・・仕事は大変だったが、この部屋は

悪く無い。


「お先、お湯頂いたわ」


エイプリルが、バスローブを纏って風呂から出てくる。

色っぽい。

目の保養になるなあ。

エイプリルは、部屋が同室なのも、ラフな格好も、欠片も気にしないようだ。


「じゃあ次は俺かな」


お風呂も豪華だった。

温泉っぽい。

入ると気持ち良い。


お風呂から出ると、エイプリルが伸びをしている。


「気持ちよかったね」


エイプリルに言うと、


「ええ、本当に良いお湯だったわ。ゆっくり入りたいし、明日は一緒に入る?」


エイプリルがそんな冗談を言う。

断ると信頼してるからこその冗談か・・・もしくは友人と割り切っているからか。

ここで誘惑に負けて、是非、と言えば実現しそうだが、流石にそのくらいの自制は効く。


「お風呂は一人で楽しみたい派なのでね」


どんな派だよ。


「あら残念。背中流してあげるのに」


くすっ、と笑うエイプリル。

本当に魅力的な女の子だと思う。

大人の色香も、落ち着きもあるし。

と言うか、男として意識されて無い気もするんだよなあ。


明日も頑張らないと。

ベッドに潜り込むと、すぐに睡魔が襲ってきた。

ちなみに、エイプリルの枕はYESだった。

またYESYES枕なのだろう。


--


朝。


エイプリルはまだ寝ぼけているようだ。

可愛いなあ。


「ん・・・おはよう」


「おはよう、エイプリル。可愛い寝顔だったけど、よく眠れた?」


「ええ。オーディンと一緒に居ると安心出来るから、よく眠れるわ」


「こっちも頼りにしてるよ。心のパートナーって気がするよ」


「ふふっ、有難う」


豪華な朝食を堪能してから現場に向かう。


未着手トレーの山が・・・増えている。

一割程。


手近にいた者に聞く。


「すみません、この山増えているんですが」


「ああ、これは、毎朝要望書や意見書が届くから」


ちらっと目を通す。

内容、出処、発行日、納期・・・印鑑。

押印は、複数ある場合と、1つだけの場合がある。


「この印鑑は何ですか?数が違うようですが」


「ああ・・・これは・・・意見書と要望書があってね。要望書は会議で決めて、製作委員会の判子が押される。意見書は、序列が3位より低い神やその眷属の場合、序列4位の神以上の神印が3つ必要。序列3位の神の眷属以上の権限が有れば、自分の神印だけでいけるんだ」


それで量産されるのか。


「発行された指示の優先度は単純で、発行が早い方が先に対応、矛盾する場合は後から発行された方が優先」


揉め事を避ける為かな。

それにしても面倒な。


「納期、って欄もあるみたいですが」


「どうせ全部緊急で来るから、発行日順で良いよ」


あるある。


シュバババ


エイプリルが未着手トレーの整理を始めた。

終わった。


とりあえず、システム構築、これ以上はアドバイスも手伝いも難しい。

ルーン文字?か何かの文字に、魔法構成もどき。

それの組み合わせで作るので、読めないし書けない。


〈うずうず、ほーほー、良ければ教えますよ〉


ストラスの提案。

嘘を教えられても困るが・・・まあ仕方無い。

午前中は自室に戻らせて貰い、ストラスの講義を受けた。


お昼は、エイプリルが軽く軽食を作ってくれた。

サンドイッチだ。


「美味しいよ、エイプリル。エイプリルは良いお嫁さんになるね。エイプリルと結婚する人は幸せだね。美人で優しく、賢く、料理も上手い」


「ふふっ、有難う。何なら立候補してくれても良いのよ?」


「それは魅力的な提案だね」


エイプリルに微笑みかける。

エイプリルはちょくちょく、こういう冗談を言う。

すごく魅力的で、ついつい本気にして頷きたくなる。

無論、友人の信頼を裏切る訳にはいかない。

俺はちゃんと自制出来る。


午後からも、ストラスの講義。

予め魔法が組み合わされた、概念大系。

これを利用してシステム構築を行うらしい。

こうして基礎知識を身に着け、夕方頃現場に戻る。


「ニンゲンさんにメガミ様、もうよろしいのですか?」


出迎えた神が尋ねる。

エイプリルは女神じゃないぞ。


「はい、基礎知識は身に付けたので、少しはできると思います」


エイプリルはおかしな変更要望がないか、書類整理。

俺はシステム構築のヘルプに入る。


夜まで作業し、ようやく終業。

自室に戻った。

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